TOPIX改革の結果、TOPIXの対象から外れるかもしれない企業の対策に関連して
A:東証株価指数(TOPIX)の対象企業から外れるかもしれない企業に注目が集まっていますね。
T:TOPIXの対象企業数は現在、約2,100社。まず、流通時価総額が100億円未満の企業を除外することで、2025年1月末に約1,700社まで減らす。これが「第1弾」の見直しと言われるもの。
A:いま注目が集まっているのは「第2弾」ですよね。
T:第2段では、浮動株ベースでの時価総額が重要な判断基準になる。上位97%以内などの基準を満たさない企業に関しては、TOPIXへの組入比率を段階的に引き下げていく。最終的には2028年7月の時点で、約1,200社まで絞る方針。
A:野村証券の試算によると、浮動株ベースでの時価総額として、基準をクリアするための最低ラインは、現在の株価水準で計算すると230~240億円との記事を読みました。
T:浮動株比率は各社で大きく異なるから時価総額が大きくても、最低ラインを下回る企業は出てくる。
A:はい。話題になっている企業の一つが伊藤忠食品(2692)。伊藤忠商事(8001)の子会社です。2024年3月末時点で伊藤忠商事が52.18%を保有。ほかに、味の素が2.67%、アサヒビールが2.34%、はごろもフーズが0.69%。そのため、本年10月中旬時点での試算では、伊藤忠食品の浮動株ベースでの時価総額は約220億円。まさに、当落線上のようです。伊藤忠商事は、上場子会社、上場関連会社へのTOBを積極的に行っているため、同社も完全子会社にすればいいようにも思いますが。
T:米Berkshire Hathawayによる投資後、5大商社は絶好調だけど、個別にみると、ROAが低いセグメントも少なくない。そうした中の典型が食料品関連。三菱商事は連結子会社に三菱食品(7451)を持つけど、三菱食品のROAも高くない。
A:伊藤忠商事は本年8月5日(日経平均株価が4,451円大暴落した歴史的な日)に、持分法適用関連会社(グループで約44%出資)のデサント(8114)と連結子会社(グループで約55%出資)のタキロンシーアイ(4215)へのTOBを発表(その後両TOBは成立)。2023年8月にも連結子会社の伊藤忠テクノソリューションズ、持分法適用関連会社の大建工業へのTOBを実施しました。
T:これらのTOBに関しては面白いデータがある。TOBに費やした投資額で、新たに取り込める純利益を割ると、つまり投資収益率(ROI)を計算すると、伊藤忠テクノソリューションズは約4%、大建工業は7.7%、デサントは3.8%、タキロンシーアイは6.5%。
A:TOBの場合、一般的には10%以上というか、二桁ないと投資効率が悪いと言えると思いますが。
T:伊藤忠商事は、企業のターンアラウンドでも実績があるし、完全子会社化することで、さらに改善していけると判断したのだと思う。あと、日本を代表する企業として、親子上場問題に対しても模範を示してくれているのかもしれない。個人的には、伊藤忠商事のこれまでのTOBを高く評価したい。
A:伊藤忠商事は大手の植物性食品素材メーカーである、不二製油グループ本社(2607)にもグループで約43%以上出資していますよね。持分法適用関連会社とは言え、実質的には連結子会社と同じように思われます。他に、連結子会社(約54%出資)の伊藤忠エネクス(8133)、持分法適用関連会社(約30%出資)の東京センチュリー(8439)も保有しています。
T:伊藤忠エネクスは時価総額的にも、ROAの点でも完全子会社化はあるかもしれない。でも、東京センチュリーは、BSがあまりにも巨大。伊藤忠商事が東京センチュリーを完全子会社にするとROAが大幅に悪化する。ちなみに、東京センチュリーは浮動株比率が非常に低いという問題があるよ。