アクティビストやPEファンドの背後にいる真の買い手とその買い手を支える存在。

A:アクティビストだけでなく、PEファンドの活動も非常に活発ですよね。

T:そうだね。本年9月30日には米ベインキャピタル(Bain Capital)がティーガイア(携帯電話の販売代理店の最大手)のTOBを公表したね。

A:ティーガイアの筆頭株主は住友商事(41.8%保有)。光通信(28.9%)も大株主ですね。

T:光通信が投資している企業も多いね。それにしても、ベインキャピタルが毎週、毎月のように日本企業をTOBしているのには本当に驚くよ。

A:年内の上場を予定しているキオクシアホールディングス(旧東芝メモリ)の大株主もベインキャピタル。米KKRが進めている富士ソフトのTOB、これに対抗する方針を表明しているのもベインキャピタル。物流大手トランコムのMBOにもベインキャピタルが関与していますね。

T:こうした中、アクティビストの活動はMBOやTOBの仲介役のようにもなってきていると思う。

A:はい。アクティビストがPEファンド化してきているとも言われていますし、アクティビストだけを気にしていてもしょうがないですね。

T:カナダのアリマンタション・クシュタール(ACT:Alimentation Couche-Tard Inc.)はセブン&アイ・ホールディングスへ買収提案。買収金額は390億ドル。海外企業に日本企業の買収では最大規模。

A:セブン&アイに対しては、アクティビストである米バリューアクト(ValueAct Capital)が経営改善を求めていました。その際に、バリューアクトは、ACTの事例を引き合いに出していたとも言われていますね。ACTとバリューアクトが連携していたのかは不明ですが、有力なM&A助言会社の方は「意識していないはずはない」と述べられていました。

T:本件に関して、米アーティザン(Artisan Partners)はセブン&アイに書簡を送っていたね。

A:はい。アーティザンはかつて東芝にも関与していましたよね。

T:だからアクティビストと言われることもある。アーティザンは書簡で「ACTとの交渉が最良だ」と述べていた。早期の交渉開始を求めているだけでなく、交渉状況の報告も求めている。

A:香港のオアシス(Oasis Management)はセブン&アイが買収提案を拒否したことに失望した旨の発言を行っていますね。

T:うん。他に、カナダCDPQ(カナダ・ケベック州貯蓄投資公庫)の動向も気になるよ。

A:CDPQはどんなところなのですか。

T:カナダの主要年金の一つ。運用資産残高は約4,500億カナダドル。日本には80億カナダドルを投資。日本の巨大企業の中にも、CDPQが大株主のところもあるよ。また同じカナダACTの株式の3.5%を保有する主要株主。ACTの経営を長年支えてきた存在で、今回の買収提案を評価しているように見える。

A:CDPQのCEOは、ACTが買収に伴い資金調達を行う場合、「出資できる」という立場を示していましたね。この発言は重いと思います。

T:そう思うよ。バリューアクトにしろ、オアシスにしろ、アクティビストはどこかで売却する。けれど、事業会社は基本的に永続保有。アクティビストがやってきたら、その背後にいるかもしれない、最終的な買い手の存在を考える時代になってきた。そして、真の買い手の背後にいる株主の存在にも注意が必要と思う。

A:日本の大手企業にも、このようなダイナミックな取り組みを期待したいですし、PEファンド等に対抗してほしいと思います。

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