ノルウェー政府(下) ~日本の新興運用会社を発掘する巨大SWF~

T:今日は前回の続。NBIMの影響力と、日本で新興の運用会社を発掘してきて歴史を話したい。

A:NBIMは議決権行使などを通じて、日本企業にも影響力を行使していますよね。

T:2023年に独立した取締役が全体の1/3以上なければ反対票を投じることを決めた。また2023年の株主総会では、女性取締役がゼロの100社超の取締役選任に対して反対票を投じた。当時、2024年は2名以上の女性取締役を選任するように求める可能性もあるとの報道があった。

A:2名以上の女性取締役というのは、ESGや人権意識の高さが背景にあるのでしょうか。

T:NBIMのCEOは、「あくまでビジネスであり、長期の運用リターンを向上させるためには、企業がESGを考えることが不可欠」という趣旨の発言をしていた。

A:「あくまでビジネス」ですか。では次に、NBIMが日本において新興運用会社を発掘してきた点をお願いします。

T:NBIMは1,500社近くの日本企業に投資していて、20年以上にわたり、日本の新興の運用会社を発掘し運用を委託してきた。そのキーマンが外部運用者を統括するエリック・ヒルデ(Erik Hilde)氏(Global Head of External Strategies)。NBIMには2つの主要な株式戦略(市場全体の動きを捉える投資と企業調査で個別企業を選別しリターンを強化する戦略)がある。同社は「後者では世界50都市で約100人の外部運用者に資金を委託している」と述べている。

A:いつ頃から日本でそうした活動をしてきたのですか。

T:同氏は「日本では1999年から日本国内の運用者を通じて小型株に投資してきた」「現在、何人の運用者にどの程度の資金を預けているかは明かせない。ただ、全体として運用成績は我々の期待を十分に上回ってきた」と述べている。8名のチームで活動し、同氏は四半期毎に来日しているらしい。

A:どのような視点で、外部委託する運用会社を探しているのですか。

T:同氏は「超過リターンは個々人の力量による。その個人が成功できる組織も必要だ。銀行や証券、保険などの傘下ではなく、プライベートに所有されている小さな運用会社を探すことを強調したい」と発言。また「創造的で独特な視点が必要だ」「好奇心が強く、常識を疑い、探求心があり、謙虚で自分の考えを変えることをいとわない資質が必須だ。そのようなポートフォリオ・マネジャーは小さくプライベートな組織に多く見られる」とも。

A:NBIMが委託してきた中で、特に有名なのは、スパークスとレオス・キャピタルワークスですよね。

T:NBIMは、レオスがリーマン・ショックに伴う資金流出で経営危機に陥った際に資金を支援した。今では両社ともに上場企業。スパークス・グループ株式会社(8739)は東証プライム上場で、傘下にスパークス・アセット・マネジメント。SBIレオスひふみ株式会社(165A)は東証グロース上場で傘下にレオス・キャピタルワークス。時価総額はスパークスが約560億円、SBIレオスひふみが約190億円。

A:両社ともに、今では運用資産残高が1兆円を超えていますよね。

T:スパークスの運用資産残高は2024年9月末時点で約1.9兆円。うち株式が1.3兆円。レオスは本年7月3日に、運用資産残高が1.4兆円を突破したとプレスリリースを行っている。

A:厳密には独立系ではなくなったとは言え、独立系の中で、スパークスもレオスも第一世代ですよね。

T:シンプレクス・アセット・マネジメントも第一世代。運用資産残高は本年9月末時点で約1.2兆円。

A:第2世代には、セゾン投信、コモンズ投信、鎌倉投信、みさき投資がありますよね。

T:NBIMは2022年に第3世代にも運用を委託。この点については、第3世代のテーマの中で話そう。

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