本当は安定株主を増やしたい
A:先日のIR会議で、安定株主が議題になりました。
T:具体的には。
A:安定株主が減少していて、どうにか安定株主を増やしていきたいという話でした。
T:本当のところ、安定株主を維持、増やしたいと思っている企業は少なくないよね。
A:どうしたらいいですか。
T:政策保有株を売却すべきとの要請や圧力が強い中、いまから政策保有株を増やしていくことは難しい。けれど思い切って政策保有株を増やすというのは一案だし、実際そうした行動に出ている会社はある。ただ、これが難しいから各社悩んでいるわけだけど。
A:当社も表立って政策保有株を増やすのは難しいという考え方です。
T:自社を評価し投資してくれるアクティブ・ファンドを増やしていくことが正攻法。ただ、これは時間がかかる地道な仕事だし、努力したからといってすぐに成果がでるわけでもない。さらに、投資してくれてもすぐに売却されることもある。
A:ほかに何か方法はないですか。
T:自社株買いというのは、いわばM&Aと同じだから、株価が本源価値よりも低いと判断できる時期に積極的に行っていくのも手だよ。
A:自社株買いというと株価対策の視点ばかりが目立ちますが、確かに安定株主対策における強力な手法になり得ますね。
T:もう一つは役職員が自社の株式をもっとたくさん保有していくことだよ。日本企業の役職員のエンゲージメントの弱さは、自社株を保有していないことに起因するとも言われる。役職員による保有は、株価対策、安定株主対策、エンゲージメント強化に寄与する。一石三鳥だよ。
A:資本主義社会にいる限り、給料だけでは豊かになれないですよね。
T:自分の会社が好きなのであれば、株主としてもリターンを本来享受すべき。投資家と同じ船に乗るということで役員が一定の株式を保有する企業は出てきているけれど、まだ従業員には及んでいない。
A:政策保有株の解消に関してですが、日本は株主の権利が強すぎる問題もありますよね。
T:欧米は日本にいろいろ要請・圧力をかけているけれど、欧米のほうが、企業が守られている側面もある。日本でも安定株主解消、政策保有株の売却を行う際に、経済安全保障の点で無防備すぎるのではないかとの議論はあった。けれど、この議論が盛り上がることもなく、今では海外投資家が主要な株主になっている企業が少なくない。
A:はい。個人投資家を増やしていくことはどうですか。
T:NTTのように株式の大型分割を行い、弊害が出てきたと言われるケースもあるけれど、個人投資家もより重要な存在になっていくと思うよ。新NISAが始まってから、この傾向は強まっている。Aの会社は一般顧客向けのサービスを提供していて知名度もある。B to B企業に比べて個人投資家の開拓は容易。その効果効能は大きいと思う。
A:応援投資家を増やす努力が必要ということですね。
T:そう。先日上場したタイミーはより長期目線の投資家が多いということで初めから海外投資家の開拓を進めた。このような素晴らしい取り組みに学んでいきたいよね。
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