話題の統合報告書
A:旭化成の統合報告書が話題ですね。
T:「旭化成レポート2024」のことでしょ。
A:統合報告書は年々充実してきていますが、情報を網羅的に載せただけのものが多いとの指摘もあります。そんな中、旭化成は「投資家からよくもらう質問6つに対して答える」という構成にしました。
T:読みたくなるね。
A:はい。旭化成はここ暫く業績が低迷していて、2021年度からPBR1倍割れが続いています。旭化成が考える価値と、投資家が見ている旭化成の価値の間に、ギャップがあるとのことで、「ギャップを埋めるための、6つの問い」を立て、それにこたえる形になっています。
T:「ステークホルダーの疑問に真正面から向き合い、全力で答えることを目標」にしたとある。
A:統合報告書とはいったい何なのか。統合報告書の在り方に大きな影響を与えるように思います。
T:今までになかった統合報告書だと思う。では、問1からお願い。
A:問1は、「なぜ、旭化成は3領域経営をしているのか?」
T:旭化成は東証33業種の分類では化学。けれど、「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3領域で経営を行っている。「住宅」の売上高は1兆円を超えていて、「マテリアル」よりも営業利益を稼いでいる。
A:「ヘルスケア」は2つに比べると売上高は半分強ですが、営業利益率は最も高いです。
T:2024年度の全社目標として、売上高は2.9兆円。営業利益は1,800億円を掲げている。
A:問2は「低水準が続くPBRをどのように回復させるのか?」
T:「マテリアル領域の石油化学チェーン関連事業を中心とする構造改革と成長事業への積極的な投資による事業ポートフォリオ変革の加速」などを明記。綺麗なストーリーばかりの統合報告書が目立つ中、対処すべき課題とその解決策を具体的に記載。中期経営計画も引き合いに出し具体的な数値も記載。
A:苦しい化学セクターにありながら、投資を積極的に行うという姿勢も評価したいです。
T:事業ポートフォリオをたえず変革することで成長してきた旭化成の底力が感じられる。
A:問3は「成長事業にどのようにリソースを集中させていくのか?」
T:「成長けん引事業に現中計の3か年で7,000億円の投資を決定する計画」とあり、「北米市場を中心としたM&A」にも言及している。
A:旭化成はこれまでもM&Aに積極的に行ってきた実績があります。
T:しかも、経営説明会を通じて、M&A案件を積極的に開示してきた。
A:問4は「カーボンニュートラル実現に向けてどのように行動するのか?」
T:「自社だけで事業化まで完遂させようという意識を払拭し、オープンイノベーションやアライアンス、ライセンスアウトなど様々な選択肢を視野に入れ」という記載がみられる。カーボンニュートラルは人類共通の課題。旭化成だけの課題ではないよね。
A:問5は「無形資産をどのように企業価値向上につなげていくのか?」
T:これまた興味深い。同社の精神が無形資産の中心とのこと。
A:問6は「ガバナンスはどのように機能しているのか?」
T:社外取締役の役割、重要性に関する記述がみられる。
A:1922年に創業し100年超の歴史を有する旭化成。ぜひ復活してほしいと思います。