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IRの分野でプロになりたい方が転職しないほうがよい会社。

A:本年10月29日、日本電気(NEC、6701)は上場子会社のNECネッツエスアイ(1973)の完全子会社化を発表しました。

T: NECが保有するNECネッツエスアイの株式は2024年3月末時点で38.48%。でも、議決権ベースでは51%のようだね。

A:持分法適用関連会社かと思っていました。

T:持分法適用関連会社といっても、20%程度の保有割合から、50%に近い保有割合までばらつきが大きい。持分法適用関連会社といいながら、実質的には連結子会社と同じと言える会社も多く存在する。今回のNECによるTOBは、非常に良い取り組みだと思う。

A:20%程度ならまだしも、40%~50%近くも保有されている場合、いくら持分法適用関連会社だと言っても、実質的には連結子会社ですよね。こうした企業のIRはとにかく大変です。浮動株比率が低く、東証の上場維持基準に引っかかりそうになることもあります。また多くの場合、時価総額が中途半端で流動性も乏しいことから、IR活動を行っても、まともなアクティブ投資家の投資対象になり得ません。

T:NECによるTOB発表前の時点で、NECネッツエスアイの時価総額は4,000億円以上あったと思う。けれど、おそらく4,000億円規模の他の企業に比べて、アクティブ投資家の比率は乏しかったと思うよ。

A:IRの分野でプロを目指したい方は、特定の親会社に支配されている上場企業のIR部門には転職しないほうがいいですね。

T:同感。やれることはほとんどないし、やっても意味がない。せいぜい、TOBなど特殊な事例が発生した際に、貴重な経験が得られる程度だと思う。東証や金融庁に理解してほしいことは、従属関係にある上場企業のIRは機能しないということ。IRが機能しない上場企業は果たして上場企業なのかと問いたい。

A:支配側はよく、自分たちの子会社・関連会社に関して「上場企業としての独立性に配慮して」みたいなことをいいますが、それならばなぜ、株式を保有しているのでしょうか。被支配側の独立性が維持されているケースなど実態としてはほとんどない印象です。

T:日本には小粒な上場企業がプライム市場にも多すぎるということだけでなく、従属関係にある上場企業がとにかく多すぎるという問題がある。ゼロ金利、低金利によって、多くのゾンビ企業が存続できたと言われるけれど、IRが機能しない上場企業こそゾンビ企業だと思うよ。

A:そんな中、NECは最近、グループ企業の整理を進めていますね。

T:日立製作所のように素晴らしい取り組みだと思う。NECのような日本を代表する企業は、もっとこうした取り組みを加速してほしい。

A:NECは本年2月末に日本航空電子工業(6807)を連結子会社から外し、持分法適用関連会社にしました。また、本年7月には持分法適用関連会社であるNECキャピタルソリューション(8793)の株式の約20%をSBI新生銀行へ譲渡し、持分法適用関連会社から除外することを発表しました。

T:両社ともに東証プライム上場で業績は悪くない。これを機にIRが機能するようになって、海外投資家の資金も取り込んでほしいよね。

A:はい。日本航空電子工業は引き続きNECの持分法適用関連会社ですし、NECキャピタルソリューションはSBI新生銀行の持分法適用関連会社になるでしょうが、IRがまともに機能する会社になってほしいですね。

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