IR活動はそもそも必要なのでしょうか
A:そもそもIR活動ってなんで必要なのでしょうかね。
T:というのは。
A:株価を上げる必要ってどこにあるのでしょうか。
T:いまさらどうしたの。
A:実は、社内でこうした声があったのですよ。
T:ほう。それでなんと答えたの。
A:株価というものは、これまでの利益の蓄積と将来稼ぐ期待利益から構成されている。成長を目指している限り、株価も本来は上がっていくものである。株価を上げようと努力しないということは、成長を目指さないことになる。こんな内容の説明をしました。
T:それで。どうだったの。
A:「それほど成長を目指す必要はあるのか」「東証の市場区分はどこでもいいから上場しておけばいいのではないか」こんな発言があったのです。
T:それはなかなかの発言だね。
A:創業社長は、このような考え方のようなのですよ。
T:そうした考えを持っている経営者は創業経営者だけでなく、実はほかにもいるよ。
A:そうなんですね。
T:株式市場に上場するということは「うちの株式はこれから価値が増大
するから買ってください、魅力的ですよ」ということを前提にしている。それなのに、株価を上げる必要はない、努力をしないとなると、上場している意義が問われる。
A:そうですね。
T:2023年3月に東証がいわゆるPBR1倍割れ対策を要請し、その後、MBOによる非公開化が急増した。つまり、上場している意義がない会社が実はたくさんあったということ。この流れは2024年も続いているし、しばらくずっと続くと思う。
A:株式市場は資金調達の場ではなく、資金還元の場とも言われますよね。
T:今、日本の株式市場は大きな変革期。上場の意義がない、理解していない企業が撤退または淘汰される時期。この期間はいつまでも続かないけど、あと数年は続くと思う。
A:すぐには解消しきれないですよね。
T:いまは、アクティビストの動きに加え、イベント・ドリブン戦略に基づくファンドが、スペシャル・シチュエーションを狙って、親子上場解消が見込める企業やMBOあるいはTOBで非上場化しそうな企業を血眼になって探して投資している。これもあって、日本市場は活況を呈しているけれど、こうした特殊な時期はいずれ終わる。その時、市場に残っていたい企業は、いよいよIR活動の巧拙でふるい落とされることになると思っている。
A:より限定的な母数の中からの選別が始まるのですね。
T:そう。いまは、とりあえず日本企業に投資しておけば勝手に儲かる時期。いわば素人でも勝てる相場。優れた経営と優れたIRが今よりもさらに問われる時代はすぐにやってくる。上場企業の使命は究極的には株価を上げること。本来、経営とIRは不可分であり、IRの重要性が再発見されることになる。
A:今度、アクティブ・ファンドとの付き合い方について教えてください。