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2025年1月における日本株市場(後編)
(通常のT氏とA氏に加え、ゲストのG氏も参加)
A:今回は前回の続きです。1月下旬からTOBやMBOが急増中です。
T:前回は1月28日に実質的なMBOを発表したシーアールイー(3458)までを取り上げた。同社は東証プライム市場に上場する物流不動産会社。MBO公表前の同社の時価総額は約380億円。また同日、シンガポールの3D Investment PartnersがNTT都市開発リート投資法人に対するTOBも公表。これについては、別途取り上げたい。
A:1月30日にジーエフシー(7559)がMBOを公表しました。同社は業務用和食材・珍味の一次卸売商社。東証スタンダード市場に上場でMBO公表前の時価総額は約80億円です。2024年3月31日付の筆頭株主は有限会社ニシムラ。今回のMBOは同社代表取締役社長の西村公一氏の100%所有会社が実施します。時価総額が小さい、典型的なオーナー企業によるMBOです。
G:上場企業とは本来、公の存在。それなのに実際はオーナー企業が多すぎますね。こうした企業は2025年中に一層されてほしいですし、そうなると思っています。
A:1月31日に大東建託(1878)がアスコット(3264)に対するTOB(完全子会社化を目的)を表明。大東建託は賃貸住宅建設の大手で東証プライム市場に上場。時価総額は約1兆円。2025年に入りやや株価が大きく下落。一方、アスコットは不動産開発会社。東証スタンダード市場に上場でTOB公表前の時価総額は約260億円。2025年1月31日付の筆頭株主は森燁有限公司(Sun Ye Company Limited)で44.96%を保有。第2位がSBIホールディングス(8473)で32.17%を保有。中国平安保険グループ系列であるとともにSBIホールディングスの持分法適用関連会社です。
T:同社の有価証券報告書をみると2024年9月30日付の大株主3社が86.2%も保有している。同社が公表した2024年12月20日付の「上場維持基準の適合に向けた計画の進捗状況について」をみると、案の定、流通株式比率を充たせていない。
G:上位3社の大株主が実質的に支配している企業が上場企業とは呆れますね。はじめから上場しているとは言えなかったわけです。また、いわゆる親子上場でこそなかったものの、SBIホールディングスの持分法適用関連会社です。日本では親子上場は減少しつつある一方で、持分法適用関連会社になっている上場企業は増え続けその数は膨大です。こうした状況の会社が1社減ることはいいことですね。
T:1月31日には日本製鉄(5401)が山陽特殊製鋼(5481)に対するTOB(完全子会社化を目標)を公表。山陽特殊製鋼はEVなどに使われるベアリング向けの特殊鋼に強みを持つ。東証プライム市場に上場でTOB公表前の時価総額は約1,090億円。2019年に日本製鉄の子会社となり、TOB公表時点で日本製鉄が52.98%を保有。TOB価格は同日終値比で37%のプレミアム付き。
G:日本製鉄は米United States Steel Corporationの買収に注力していますが、外資の買収にあれだけの時間と資金を費やす前に、上場子会社の整理を行うべきだと思いますね。
T:日本製鉄は同日、保有する大阪製鐵(5449)の株式を、同社に売却することも発表。これは大阪製鐵が実施する自社株のTOBに応じるもの。売却後、日本製鉄による大阪製鐵の保有割合は65.85%から56.1%まで低下する見込み。
G:昨年11月26日に、ストラテジックキャピタルは日本製鉄に対して、大阪製鐵の完全子会社化や吸収合併を求める書簡を提出しています。私も日本製鉄は同社も完全子会社化すべきと思います。