投資家との面談でわからないことがあります

A:投資家と面談をしていると、いろいろとわからないことばかりです。

T:例えば。

A:必ず行う質問や、必ず確認する指標などはあるのでしょうか。

T:どちらも、そうしたものはないよ。

A:投資家の理解度や質問内容などが、投資家によってだいぶ異なるため、対応に苦慮しています。

T:そうだろうね。しっかり調査してから面談する人もいるし、単に周辺取材を目的に面談のケースもある。あと、日本の運用会社の場合、単に担当企業になったから定期的な作業として面談してくるケースもある。

A:はい。必ず確認する指標などはどうですか。

T:そうした指標もない。というか、基本的な指標はすべて確認するのが普通。指標は無数にあるから、無数の指標をすべて確認することはない。少なくとも投資家が社内で重視している指標は必須。アナリストやポートフォリオ・マネジャーがそれぞれ重視している指標もあったりする。

A:そうなると、IR面談ってどのように進めたらいいのでしょうか。

T:事前に、業界に詳しいのか、面談目的は何かを確認したほうがいい。日本企業は投資家にいろいろ聞いてはいけないと思っているのか、遠慮しているというか奥ゆかしい。

A:投資家が上というか、受け身の感じがあります。

T:投資家は遠慮なく企業にアプローチしてくるけれど、企業も同じような姿勢をもっと高めたほうがいい。自らアプローチすることもそうだけど、面談においても目的は何か、何を説明すべきかを事前にある程度確認したほうがいい。

A:そうしたことを嫌がるところはありませんか。

T:まともな投資家であれば大丈夫。面談目的が定まっていないことのほうが問題でしょ。

A:はい。あと、非常に厳しい質問ばかりで、絶対に投資しないであろうと思っていた投資家が、実際には買っていたということがあります。これはどのように考えたらいいですか。

T:この点は大事なポイント。アナリストは良い会社を見つけるのが仕事。面談する場合、良い企業だと思っているから面談してくるわけ。もっと言えば、好きであったり応援したいと思っていることもある。けれど、社内で企業を推奨する場合、より問われるのはリスクや課題など、マイナス材料。

A:確かに。

T:推奨するくらいだから、良いことはいくらでも話ができる。けれど、ほかの仕事でも同じだけど、いいことだけを伝えても評価されることはない。アナリストの仕事であればなおさら。面談するのは、資料だけではわからないことを確認するためであったり、事業等のリスクについて、より突っ込んで調査する必要があるから。

A:だから、厳しい質問ばかりで感じが悪くても、実際には取得してくることがあるのですね。

T:面談の印象は悪かったけど買ってきた。印象は良かったけど買われなかった。どちらもよくあるよ。

A:ネガティブな質問の意図にはあまり思いが及んでいませんでした。

T:単に投資家の態度が悪いというケースもあるけどね。態度という点では、企業側の態度が悪いというケースもある。ある欧州の年金投資家が日本の大手エレクトロニクス企業のIRと会った時に、IR担当者の態度が悪すぎて、ポートフォリオ・マネジャーが売りとの判断を行ったという話を聞いたこともある。いずれによせ、ネガティブな質問=悪い評価 というわけではないからね。

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