香港、シンガポール、日本のアクティビスト
A:香港のアクティビストと言えば、Oasis Managementが有名ですか、他にいますか。
T:LIM Advisors Limited。平和不動産に対して、東証出身の取締役の選任を禁じる提案。また、JTとその上場子会社である鳥居薬品の双方に対して、親子上場解消を求めたり、それなりに存在感を示している。
A:平和不動産は、取引所の管理会社として設立されたのですよね。だから東証は最大顧客ですし。
T:最近では旧・村上ファンド系のシティインデックスイレブンスが平和不動産の株式取得を進めている。
A:はい。次にシンガポールのアクティビストにはどんなところがいますか。
T:旧・村上ファンドの出身者が設立したエフィッシモ(Effissimo Capital Management)、長谷川寛家氏が設立した3D(3D Investment Partners)ほかにはひびき・パース・アドバイザーズ(Hibiki Path Advisors)。
A:ひびきとはどんなところなのですか。
T:創業者は元ダルトン(米国Dalton Investments)の日本法人のトップを務めていた清水雄也氏。同社は自社のHPにて多数の投資先企業に関する提案ペーパーを公表している。きんでんに対する増配要求に対しては、英国のSilchester Internationalが賛同を示した。また、2022年の富士ソフト(3Dが大株主)の臨時株主総会では、会社と3Dが推奨する社外取締役候補の1名が清水氏だった。しかも、米議決権行使助言会社のグラスルイス(Glass, Lewis & Co)も清水氏に賛同を表明。
A:アクティビストの3Dが、同じくアクティビストであるひびきの清水氏を社外取締役候補として推奨。会社だけでなく、グラスルイスも賛同ですか。なかなか、凄い話ですね。
T:見方を変えれば、清水氏はまっとうな方であるのだと思うよ。最近の事例では、ひびきの投資先であるライフネット生命保険に関して、その取り組みを「ここまでやるとは驚いた」と評価していた。ちなみに、ライフネット生命保険の株主にはシンガポールのエフィッシモもいる。
A:アクティビストの対象になる会社には複数のアクティビストが関与していることもあり、複雑ですね。
T:そうだね。清水氏に関しては、他のアクティビストとの関連で名前を目にすることが多い印象がある。
A:香港、シンガポールときましたが、日本はどうですか。
T:旧・村上ファンド。シティインデックスイレブンス、エスグラントコーポレーション、南青山不動産、村上世彰氏の長女の野村絢氏。こうしたプレイヤーが一体となって動く。プレミアム付きの自己株式取得という方法を取ることが多い。このスキームではどうやら無税になるようで、巨万の富を稼ぎながら、納税額は非常に僅少。虎の子の資産を売却させたり、臨時決算まで行って配当原資を確保したりと、短期間で巨利を得るために手段を選ばない。海外からも果たして投資家なのかとの声もある。こうしたプレイヤー間で、株式の移転を行うため、誰が株主なのかがわからない。常に変わる。でも交渉には村上世彰氏が出てくる。
A:相当な存在ですね。他のアクティビストとは一線を画すというか、異次元ですね。
T:日本勢では、旧・村上ファンドの幹部だった丸木強氏が設立したストラテジックキャピタル。ここは、時代の要請があってもなかなか応じないような企業を対象とする。直近では、ダイドーリミテッドの件が注目を集めた。最終的に、旧・村上ファンドとストラテジックキャピタルが高値で売り抜けただけで、批判も出ている。
A:マネックスグループのカタリスト投資顧問というか、「マネックス・アクティビスト・ファンド」はどうですか。
T:最近ではここの動向も無視できない。次回は、ここについて話したいと思う。