2024年11月における2件のTOBに関して
A:2024年11月に入り企業再編が再び増加していますね。
T:11月1日(金)に世界最大手の工作機械メーカーであるDMG森精機(6141)が連結子会社(議決権ベースで50.8%保有)でスタンダード市場上場の太陽工機(6164)の完全子会社化を発表。研削盤の専業メーカーである太陽工機の時価総額はTOB発表前で約80億円台。DMG森精機は約5割を取得する予定で、買収総額は54億円程度になる見込み。
A:プライム市場上場のDMG森精機は好きな会社ですが、驚いたことに時価総額は4,000億円程度です。グローバル基準で言えば小型株。この小型企業が、ミクロンサイズの上場子会社を完全子会社化。こうした親子上場はどんどん廃止したほうがいいですね。
T:これだけ時価総額が小さな企業だと、誰も買わない、買えない。上場の各種コスト(会計監査、情報開示、IR活動)を費やすことに、何の意味もないからね。
A:11月6日(火)にSCSK(9719)がネットワンシステムズ(7518)へのTOBを公表しました。
T:SCSKはプライム市場上場。時価総額は約9,000億円。住友商事(8053)の連結子会社(50.60%保有)。ネットワンシステムズ(7518)は日本有数のネットワークインテグレーターで独立系。SCSKとも住友商事とも資本関係はない。TOB公表前の時価総額は約2,900億円。こちらもプライム市場に上場。SCSKは約3,570億円を投じて全株式を取得する方針。そして、2026年4月には両者の合併も検討とのこと。
A:グローバル基準では中型企業が小型企業を買収する形。合併すれば、システムインテグレーター業界における3番手規模の会社が誕生。前向きな案件という印象です。
T:同感。但しSCSKが住友商事の連結子会社でなく独立系であれば、さらに良い案件。
A:伊藤忠商事は連結子会社であった伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の完全子会社化を2023年8月に発表しました。その後TOBは成立。CTCは2023年12月1日に上場廃止です。
T:住友商事にとってSCSKに価値があるのでれば、伊藤忠商事のように完全子会社したほうがいいと思う。しないのであれば、SCSKグループのためにも、独り立ちさせた方が良いと思う。
A:SCSKとネットワンシステムズの時価総額を単純合算しても100億ドルには届きませんが1兆円を超えます。この規模であれば、IR活動を通じて海外投資家の資金を獲得しやすくなりますね。
T:グローバル基準でようやく存在を認知される規模になるのに「実は過半数を保有する上場親会社がいます」というのでは、SCSKは好機を逃すことになりかねない。IR部門が可哀そう。
A:5大商社の中で劣後する住友商事にとっても、選択を迫られる案件かもしれませんね。
T:本年9月30日にPEファンドの米Bain Capitalがティーガイア(3738)へのTOBを公表したけど、ティーガイアの筆頭株主は約41.8%を保有する住友商事。ちなみに、光通信(9435)も子会社を通じて28.9%を保有する。住友商事は、こうした売却資金も活用できるかもね。
A:住友商事はこれまで、知見のない「飛び地」への投資で損失を出すなどしてきましたが、SCSKへの追加投資であれば合理的ですね。
T:住友商事は資産の入替えも急いでいる。世界最怖と言われるアクティビストの米Elliotも投資中。
A:今年は、住友商事グループの活動に注目が集まるかもですね。
T:米Elliotはイベント・ドリブン型。まだまだいろいろ出てくるかも。