ここにもアクティビスト。
A:本日(9月17日)、物流大手のトランコムがMBOを公表しましたね。
T:2024年問題を受けて、物流業界の再編やMBOなどが続いている。
A:中堅物流会社のエスライングループ本社(エスライン)はMBOで、今日(9月17日)、上場廃止になりましたね。
T:エスラインのMBOに関しては、TOB価格が低すぎるとのことで、MBOは不成立になるのではないかとも言われていた。何しろ、プレミアムをつけてもPBRでみると0.5倍台だったから。
A:大正製薬ホールディングス(大正製薬)のMBOに関しても、PBR1倍割れに相当するTOB価格に、強烈な批判がありましたね。
T:マネックスグループ系のカタリスト投資顧問がまず問題視。その後、米Curi RMB Capital、米Kaname Capital、香港Oasis Managementも問題視。これらアクティビストが法的措置も検討中との報道もあった。
A:(少なくとも当時において)国内での過去最大のMBO。いろいろ驚いた案件でした。
T:大正製薬のMBOにおけるTOB価格を問題した米Curi RMB Capital。そのパートナーの細水政和氏は、エスラインのMBOにおけるTOB価格も問題視。TOB成立の下限が約54%のところ、エスラインは多数の法人・個人の株主とTOBへの応募契約を事前に締結。44%近くの応募を事前に固めていた。
A:それでは株式公開買付け(TOB)とは言えないのではないですか。
T:細水氏はまさに、「公開買い付け制度の抜け穴を利用した脱法行為ではないか」と批判していた。
A:まっとうな批判なように思われます。
T:実は、RMB Capitalは今年の1月にCuri Capitalと合併して、Curi RMB Capitalが誕生。RMB Capital時代に同社で日本株のチームを作ったのが細水氏。当初は時価総額が小さい企業を対象に典型的なアクティビスト活動をしていた。今では「基本的に中庸を目指すものの、必要に応じて意見を述べる」との方針に変わった。実際、不公正な案件を問題視している印象。
A:そうなるとCuri RMB Capitalみたいな存在は悪くないかもですね。
T:アクティビスト活動もするけれど、普通の純投資のことも多い。単純にアクティビストとレッテルを貼るのはどうなのかと感じている。もちろん、上場企業は警戒するだろうけれど。
A:はい。大正製薬のMBOの時は、アクティビストが問題視してくれてよかったですよ。
T:ちなみに米Kaname Capitalの幹部の一人は日本人の槙野尚氏。日本のエンゲージメント投資家の草分けである「みさき投資」にも在籍していた方。最近、槙野氏と細水氏を同じような文脈でみるよ。
A:日本企業に対してアクティビスト活動を行う運用会社の背後には、日本人が結構いますね。
T:そうだね。冒頭のトランコムだけど、米Dalton Investments(ダルトン)も大株主。共同保有者と合わせて少なくとも14.71パーセント。
A:ここにもダルトンがいたのですか。そうなるとトランコムのMBOは、2024年問題だけではなかったかもしれないですね。
T:トランコムの大株主にはもともと海外勢が多かったから、純投資先としても魅力はあったと思うよ。
A:トランコムのMBOは、米PE大手のBain Capitalと組んでですよね。
T:米Bain Capitalの活動も凄まじいね。米PE大手のKKRと富士ソフトの争奪戦も繰り広げているし。そのKKRは2023年に日立物流(現:ロジスティード)を7,000億円で買収。そのロジスティードは今年の5月に中堅のアルプス物流(アルプスアルパイン傘下)に対するTOBを発表。同月には、AZ-COM丸和ホールディングスが実施中のC&FロジホールディングスへのTOBに対して、SGホールディングスが対抗TOBを発表。その後も、複数の会社が他社の物流会社の買収を発表。いずれ他の業界にも波及するよ。
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