時価総額が小さい企業はどのように投資家を開拓したらいいのでしょうか

A:時価総額が小さい会社はどのようにIR活動を進めたらいいですか。

T:時価総額が2,000億円を下回ってくると、アクティブ運用の投資家がほとんどいないことが少なくない。もっとも数千億円から数兆円の規模を誇る会社でもアクティブ運用の投資家がほとんどいないこともある。

A:買い手が多ければ、需給の関係もあって株価は上がりやすくなりますよね。買い手がいないと株価が上がらず、時価総額も増えず、その結果、大手の資産運用会社の投資対象にならない。この鶏と卵みたいな問題にどう対処したらいいのでしょうか。

T:奇策はない。業績が良ければ、株価も中長期的にはついてくる。ただ業績が良くてもIR活動を全く行っていないような会社は同じ業界内でもアクティブ投資家の比率が低くなる傾向にある。だから、IR部門としては、可能性がある投資家にとにかくアプローチして面談を増やすしかない。成果はすぐに出ないけれどあきらめずに取り組んでいくと、業績がよほど悪くなければ、買い手は出てくるものだよ。

A:具体的にどんな投資家が良いと思いますか。

T:国内を例にとると、中小型に特化している運用会社やヘッジ・ファンド。あるいは、独立系や直販系と言われるよう存在。例えば、レオス・キャピタルワークス、セゾン投信、コモンズ投信、鎌倉投信。あるいはセゾン投信を立ち上げた中野さんが立ち上げた「なかのアセットマネジメント」。国内の大手資産運用会社と異なり、アクティブ運用に特化していて、しかも日本企業を応援しようとするマインドが強い。

A:いろいろな運用会社もあるのですね。最近あまり名前を聞かない、さわかみ投信はどうですか。

T:創業者の澤上篤人氏は、国内における独立系・直販系の草分けとして日本の資産運用業界に大きな影響を与えてこられた方。ただ、長男に社長を世襲したことや、数年前に週刊文春で取り上げられたお家騒動などなかなか異色な存在。資産運用残高は大きい。一度保有したら長期保有ではある。

A:こうした直販系・独立系の特徴は他にありますか。

T:こうした会社は、投資先と自社のお客様との接点づくりにも注力。運用会社とお客様、そして投資先。三位一体で企業を強くして、一般生活者の財産を増やしていこうという想いが強い。

A:具体的にはどんなことをしているのですか。

T:例えば、コモンズ投信。ここは投資先企業と自社のお客様である個人投資家による定例会議を開催。投資先の味の素は、定例会議での声を経営に活かしているとのことでメディアも取り上げる。コモンズ投信は自社のHPなどで内容を紹介する。このように投資先企業の露出が増える。さらに、運用会社のお客様である個人投資家が株主になってくれることもある。

A:機関投資家による保有だけでなく、個人投資家による直接投資も見込めるのですね。時価総額が小さい企業はIR部門が脆弱なことが多いため、機関投資家と個人投資家の両方を開拓するのが非常に厳しいです。そんな中、コモンズ投信のような存在がいると一石二鳥、三鳥になりますね。

T:さわかみ投信も。ここは毎年、運用報告会という大規模なイベントを毎年開催。投資先企業とさわかみ投信のお客様が集まる。これは元さわかみの人から聞いた話。運用報告会に参加してくれる投資先企業はお客様扱い。そうなるとお客様企業の株式は簡単に売れないから、より長期保有になる。また、参加する個人投資家はリテラシーが高い方が多いとのことで、よい個人株主にもなるみたい。

A:それはいい話ですね。独立系・直販系にも積極的にアプローチしてみたいと思います。

T:さわかみ投信が第一世代。いまは第三世代も活躍。そろそろ第四世代。アプローチ先は常に無数にあるよ。

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