海外財務諸表から用語を調べる
分析方法として会計が優れているのは世界共通の様式であることだ。数字だけ見ていれば英語に自信がなくてもその企業、団体を調べることができる。とはいえ、一部用語で各国独自の表記があって調べるのが面白い。
例えばイギリスの行政機関の純資産科目にはアームズ・レングス・ボディ準備金(Arm’s Length Bodie’s Reserves)という科目が見られる。これは独立行政機関として受けた補助金を指し、普通に読んでいるだけではわからない。各国ごとの独自な会計用語を調べ、さらに知識を深めよう。
イギリス独立行政機関の表現
政策機能を果たすが、政府そのものまたは一部でない立ち位置の機関。政府と距離を取りながら事業する関係だから「アームズ・レングス(Arm’s Length)」というのがわかりやすいだろう。表現として、癒着を指摘する際に「アームズレングスの関係になってない!」と用いることもできる。
イギリス本国ではALBと略され以下の3グループに別けられる。
Executive Agency (EA) 運転免許庁・気象庁など
Non-Departmental Public Body (NDPB) 環境庁・安全衛生庁など
Non-Ministerial Department (NMD) 歳入関税庁・会計監査院など
アームズ・レングスの原則
日本ではフェアトレードを促す概念として金融業界で知られている。同グループのA銀行がA証券と取り引きする際、一般取引より有利になるような金融商品取引を禁じられている。
探偵にとって身近なケースは土地の相続だ。調査の際に不動産登記を取得することがあるが、親子間の不動産取引は「売買」か「贈与」と書かれている。親は子に土地を譲るなら2,000万円の土地を1円で売ってあげたいはずだ。しかし税務署はこれを贈与と見なし相続税が発生する。このような概念に対してもアームズ・レングス・ルールが適応されていると呼べる。こうして不動産鑑定士を使い「売買」にするか課税を見越し「贈与」にするかになる。
会計は数字を読みつつ不明なワードについて調べる点で理系・文系の混合種目なのが面白い。海外の財務諸表は特に調べる機会が多く、見分が広まることが楽しみの一つだ。