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知らないと危険!シンガポールで被害拡大中のサイバー詐欺手口7選

最新の報道や実例に基づき、シンガポールで発生している7種類のサイバー詐欺手口を分類して解説します。なお、各事例は地元英字メディアや中国語メディア(例:Channel NewsAsia、The Straits Times など)の実際の事件を参考にしています。

背景

日本でも最近はサイバー詐欺が増えています。しかしシンガポールとの最大の違いは、インターネットバンキングとQRコード含むオンラインペイメントの普及率でしょう。日本は幸いにも?ネットバンキングが 遅れているため、詐欺師がお金を集金する方法として対面やATMでの振込などが主流です。これはシンガポールでは難しい方法で、途上で詐欺と気付かれるリスクが高いです。日本は家族関係が希薄かつ高齢者が多い為、詐欺師が手間をかけても集金できてしまいます。シンガポールや、香港台湾などもそうですが、家族関係が濃厚な国は詐欺師は気づかれる前のスピードが命で、そこに手軽なネットバンキングやオンライン支払いの普及が利用されている現状です。

マルウェアによる被害

マルウェアは厄介で、何らかの理由でアプリをインストールしてしまうと、詐欺師がスマートフォンを秘密裏に監視できるようになり、ネットバンキングなど遠隔操作も可能になります。2023年に流行った為、銀行側はアプリにマルウェア監視プログラムを入れて対策するようになり今は減っています。なおAppleは「App Store以外からのアプリインストール」を基本的に許可していないため、マルウェアはAndroid端末に被害が集中する傾向があります。

タイプ別分類

この手の詐欺が成功してしまうポイントは、被害者がアクションを起こそうと前のめりになってしまう心理状況にあります。それは時に日本のオレオレ詐欺のような子供への心配であったり、ロマンス詐欺のような大金獲得プラスアルファへの欲であったり、そういった衝動を起こさせる仕掛けに、詐欺師のテクニックが潜んでいます。動機のタイプ別に少額獲得期待型、大金獲得期待型、不安煽り型の3つに分けて解説します。

【詐欺のタイプ別分類】

  • 少額獲得期待型

    • QRコード詐欺

    • フリマ詐欺

    • 求人詐欺

  • 大金獲得期待型

    • ロマンス詐欺・投資詐欺

  • 不安煽り型

    • 誘拐・マネーロンダリング詐欺

    • フィッシング詐欺

    • 技術サポート詐欺

以下、各手口の詳細を解説します。


1. QRコード詐欺(少額獲得期待型)

店頭のQRコードの上に詐欺師が不正なQRコードを貼っていた事例

手口の詳細
店頭でお得情報として貼られているものや、SNSやメッセージアプリで送られてくるQRコードに、他者への支払いを誘導するものやマルウェアが仕込まれている場合があります。
支払い詐欺は送金額を失うだけですが、マルウェアがある場合は被害者がQRコードをスキャンすると、端末に不正なソフトウェアがインストールされ、個人情報やログイン情報ごと盗まれます。被害者のスマートフォンに感染し、数千から数万シンガポールドル相当の不正送金が行われたケースが報じられています。
これはひと手間かけてもお金を節約したいというキアスな(リンク先参考動画)、お国柄が利用されており、少額のお得情報に釣られて大金を失ってしまうのです。お買い得品を売り込むプロモーションが世にたくさん存在することが詐欺を容易にしています。


2. フリマ詐欺(少額獲得期待型)

オンラインフリマサイト、Carousellでは注意を喚起

手口の詳細:
オンラインフリマ上で「お買い得」と見せかけた商品が出品される。或いは出品者に魅力的な購入者として詐欺師が連絡する。他にも偽の支払い処理メールを送るなどいくつかパターンがあります。
その後の流れは偽の支払いリンク送付、または支払いを完了後に「返金処理」を口実にするなどしてフィッシングサイトへ誘導します。結果、商品やお金をだまし取られたり、ネットバンキングのログイン情報を入力させられ口座の金銭を奪われる事例が発生しています。
この詐欺は2位の件数でかなり頻繁に起きています。お金が動くプラス慣れない素人が多く参加する為、詐欺の温床と言って良いでしょう。
※先日Xで話題にして大きな反響がありました。


3. 求人詐欺(少額獲得・一部大金獲得期待型)

偽の仕事依頼でタイに渡り拉致・解放された中国人俳優Wangさん

手口の詳細
シンガポールで最も件数と被害金額が多い詐欺です。この手口では、魅力的な求人情報を提示し、応募者に対して高待遇を約束します。しかし実際にはお金を騙し取ったり、被害者を他国へ誘導し(主にカンボジア、ミャンマー、タイ等)、身柄を拘束(拉致)する目的で利用されるケースもあります。
一般的な手口の例は下記のようなものです。
・WhatsAppやTelegramなどで、一方的に送られてくるメッセージを受け取ります。そのメッセージでは、アンケートや市場調査に参加し、いくつかの質問に答えるように指示されます。質問内容は、例えばDeliverooやFood Pandaといった食品配達サービス、観光、イベントやフェスティバルなどに関するものです。アンケートに答えると、少額の報酬(手数料)がもらえます。簡単な仕事で報酬がもらえる点がミソです。
・報酬をもらえると確信すると、詐欺師は別のWhatsAppやTelegramの連絡先を教え、もっと高い報酬が得られる仕事があるとほのめかします。次に詐欺師は、暗号通貨の価値を上げる、モバイルアプリの評価をしてアプリストアでの順位を上げるといった作業を依頼します。そのために、被害者はまず詐欺サイトでアカウントを作成し、詐欺師が指定する銀行口座にお金を振り込む必要があります。場合によっては、さらに自分のお金を振り込むように指示されることもあります。
・最終的に、報酬が引き出せなくなったり、詐欺師と連絡が取れなくなったりして、被害者は自分が詐欺に遭っていたと気づくことになります。
報酬を目当てに警戒がゆるくなるという点では、日本のお金配り→銀行口座提供の詐欺と同じような構造です。
またもっと深刻なケースでは、虚偽の求人情報に応募した人々が、渡航手続きや偽装面接後、連絡が途絶え、拉致の疑いが警察から通知される事態に発展しているとのことです。これはシンガポールだけでなく中国人、マレーシア人なども被害に遭っています。また日本人が被害に遭うケースも報告されています。拉致された被害者は男性であれば詐欺の協力や肉体労働、女性であれば売春や人身売買などに利用されます。


4. ロマンス詐欺・投資詐欺(大金獲得期待型)

ロマンス詐欺はシンガポールではInternet Love Scamと呼ぶ

手口の詳細
これは日本でもお馴染みですが、マッチングアプリやSNSで偽のプロフィールを用い、被害者との信頼関係を築いた後、「急な出費」や「緊急の資金援助」を口実に大金の送金を要求します。或いは異性に限らず何らかの形で被害者を信用させて魅力的な投資案件に勧誘します。巧妙な心理操作により、最終的には数万から数十万シンガポールドルが騙し取られる事例が多く、シンガポールにおける被害額は断トツのトップです。欲に基づく感情面での依存が通報を遅らせ被害を拡大させる要因となっています。
※この2つは混在するケースも多く、またロマンス詐欺の相手が大金に値する価値と信じて投資する事例が多いため、大金獲得期待型としてまとめました。

4. 誘拐・マネーロンダリング詐欺(不安煽り型)


実際にあった事例。偽の警察証などを画面に提示

手口の詳細
日本のオレオレ詐欺に似たこの詐欺では、突然警察や政府機関を名乗る連絡が被害者に届き、「あなたは事件やマネーロンダリングに巻き込まれている」と主張されます。いわゆる劇場型の詐欺です。被害者は、口座情報や個人情報を確認するためと称し、金銭の振込や情報提供を強要されることにより、大金を不正に奪われるケースがあります。
中国やシンガポールでは警察や国家権力の力が強いためにひっかかりやすい土壌があります。
手の込んだ事例では息子を一時連絡不能な方法に追い込んでから、親のもとに「息子が今誘拐されている」といった連絡をする場合もあります。
警察関係者を装った詐欺師からの連絡により、被害者が動揺し、資金移動を行ってしまった事件が伝えられています。若者より判断能力の低い高齢者が狙われやすい詐欺です。


6. フィッシング詐欺(不安煽り型)

SMSの例。シンガポール警察提供

手口の詳細
銀行や大手企業を装い、SMSやメールで「不正アクセス」「支払い実行」や「口座ロック」の警告が届きます。被害者は正規のサイトと区別がつかない偽サイトへ誘導され、ログイン情報やパスワードを入力するよう求められ、不正送金などの被害につながります。焦燥感をあおる手口で、特にオンラインバンキング利用者が標的となっています。いわゆる迷惑メールの類で送るのが簡単なため、そこら中に氾濫しています。


7. 技術サポート詐欺(不安煽り型)

スパムメッセージの例。シンガポール警察提供

手口の詳細
「あなたのパソコンにウイルス感染があります」といった電話やチャットがかかり、リモート操作ソフトのインストールを促します。実際にソフトが導入されると、詐欺師は被害者のPCにアクセスし、銀行口座や個人情報を盗み出します。昔からある手口ですが、2024年でも年間60人程度が引っかかっています。高齢者などデジタルリテラシーに自信のない層が狙われるケースが多いとされています。


まとめと対策

シンガポールにおけるサイバー詐欺は、手口の巧妙さと共に被害額も増大しています。各詐欺手口の共通点として、疑わしい連絡・リンクへの即時対応を避け、常に公式の窓口で情報確認を行うことが重要です。また、もし被害に遭った場合は、速やかに銀行や警察に連絡し、被害拡大を防ぐことが求められます。

自衛策のススメ
ここまで詐欺の手口を紹介してきましたが、とは言ってもオンラインペイメントやネットバンキングと無縁でいることは難しいため、個人的には
・Wiseなど開設が簡単な銀行口座を用意して少額取引はそちらを使う。
・ネットバンキングのログインは電話番号に紐づけず公式アプリで認証するよう癖づける。
・未確認アプリのインストールはしない、知らない番号のコンタクトは出ない、知らない相手と電話する必要がある時は、下手な英語等使って意味がすぐわからないことをアピールする(詐欺師は言葉が通じないと切るため)。
といった自衛策を取っておくことをオススメします。

最新の報道と事例をもとに、常に情報収集し自己防衛意識を高めておきましょう。


※本記事の各事例は、報道内容および現地メディアの情報に基づいています。

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