生成AIとの対話が変える弁護士のリーガルサービス
即応性と最新情報の統合
現代の弁護士にとっても昔の弁護士にとっても、最新の法律改正や判例に迅速に対応することは必須です。インターネット以前の弁護士業界においては紙媒体の判例集を買い込んだ上でひたすらインプットするとの方法を採用していたかもしれません。
インターネット以後の弁護士業界においては電子の判例検索システムに依存してきたかもしれません。
生成AI以後の弁護士業界がどのような方法を採用していくのか。各弁護士の仕事観次第でいくつもの選択肢が生まれそうですが、私が顧客の利益を第一に考える際に選ぶのは「生成AIとの対話を四六時中繰り返す」ことです。
生成AIは、タイムラグの生じうる「専門書で得られる知識」の速報性を余裕を持って超越する可能性を秘めています。即座の更新情報が提供されることを期待して生成AIと対峙すべきです。
人間としての弁護士側において尽力すべきなのは「生成AIが提供してきた即時の更新情報の内容が正しいかを精査すること」になります。成果物のチェックという「ボス弁的な役割」が求められます。勤務弁護士が生成AIを自身の雇う下請けのように扱うといったイメージです。
多角的視点からの法的問題解決
例えば国際商取引のような複雑な案件では、異なる国の法律や商習慣に精通していることが求められますが、実際に精通している弁護士は極めて少ないです。世界中の国の商慣習を把握することは不可能に近く、やはり生成AIとの対話を通じて、多様なヒントを得ることを期待すべきです。
生成AIにより提供される多角的な観点を踏まえて、あたるべき文献を絞り込むことも可能となります。明確な視点なき調査は時間と体力とお金の無駄遣いに直結します。不老不死も鋼の錬金術も存在しない現状においてこそ生成AIによる視点の提供を期待すべきです。なお、生成AIに対して不老不死や鋼の錬金術の実現可能性について尋ねてみることも忘れないようにしておきたいです。常に最終的な目標との兼ね合いにおいて生成AIに対する質問内容をカスタマイズすべきだからです。
時間効率と業務最適化
結局のところ、多くの弁護士にとって問題なのは「キリがないとすら思える膨大な作業量といかに付き合うか」です。時間と体力は貴重な資源です。生成AIを活用することで、リサーチの時間を大幅に短縮し、他の案件に集中する時間を作り出すことができるかもしれません。例えば、契約書のドラフト作成時に生成AIを使用すると、関連する法規や条項のサンプルを迅速に提供し、ドキュメント作成プロセスを加速してくれます。
もちろん、生成AIが誤った情報を提供している可能性を常に考慮し、性悪説にも似た立場で監視する必要があります。人間としての弁護士が現場のプレイヤーとして主体的に何かを生み出すよりも管理職的な立場でプレイヤーである生成AIを見張るといった振る舞いにシフトしていくべきです。
対話力としての質問力
人間としての弁護士が生成AIとの対話を繰り返すことによって弁護士業務の質が上がり、その結果として顧客に対してより質の高いリーガルサービスを提供することが可能となります。生成AIを監視するためには生成AIの癖を見極めることも必要で、そのためには時間を割いて対話の機会を設けるほかありません。
その意味において、生成AIとの付き合い方は生身の人間との付き合い方と何ら変わるところがないとすら言えそうです。対話の相手がシフトしただけであり、結局のところ弁護士に求められる能力としての「質問力」は引き続き高いレベルで要求され続けます。質問力を担保するのは論理的思考を担保する母語としての国語力そのものであり、語彙力が思考の限界を定義するとの考え方を踏まえると「沢山読んで沢山書こうね」といった小学生レベルでの行動指針が大切なものとなります。
童心に帰り、沢山読み書きしていきましょう。