GoToキャンペーンの電子クーポンに乗り切れない理由
はじめに
GoToキャンペーンも後半に入り、10月からは東京除外(予定)と地域共通クーポンの開始の話も出てきました。
宿泊代の約15%が利用できるということで、目玉でもある地域共通クーポンですが、ようやく説明が追加されたばかりです。電子クーポンについては、期待はしていたのですが、まだまだ課題も多く、個人的にはちょっと危険なにおいもしています。
自分が課題に思っている点をまとめたいと思います。
9/16(水) 時点の情報ですので、この後、更新される可能性はあります。最新情報については、GoToトラベルの事務局サイトをご参照ください。
電子クーポンの使い方
電子クーポンがどのように使われるようになるのか簡単に説明します。
1) 電子クーポンの登録
電子クーポンの登録は、旅行業者が専用の管理画面から、特定のフォーマットをアップロードすることで実現されます。ファイルの登録は、画面以外からもアップロードする方法があるようです。
2) 専用画面からQRコードを読み取る
登録した電子クーポンは、専用のサイトから利用できるようです。予約情報からログインし、発行したい券種(1,000円、2,000円、5,000円)を選択し、発行すると、取扱店舗のQRコードの読み取り画面が出ます。画面に店舗に配置されたQRコードを読み取るだけで、利用できるようです。
課題1. 誰でもログインできる
まず、気になるのはこちらのログイン画面。入力内容は以下の3つです。
・旅行会社の事業者ID
・予約番号・受付番号
・宿泊施設の都道府県
また、明示されてはいないですが、滞在日以外はログインできないので、滞在日というのも条件にあるようです。
ここで問題なのが、この内容がどこまで強固なのかということです。旅行会社は、予約番号と一体となっていますので、実質的には予約番号、滞在日だけで制限をかけているという状態です。予約番号には、連番などは使わないとはいえ、攻撃を受けそうというのが率直に感じたことです。
そして、こちらの情報は個人情報と紐づいていないため、別端末からログインされたことを通知する仕組みもなければ、別の人がクーポンを使ったとしても、クーポンが不正に使われたのが分かるのは、かなり後になります。
もちろん、大量に不正アクセスされた場合などの考慮はあるのだとは思いますが、最近の攻撃は複雑化されているので、破られるリスクは存在すると思います。
また、複数人で宿泊する場合、同じ予約番号でクーポンを利用する必要があるので、SNSなどで予約番号が共有される可能性が高そうとみています。うっかり情報が漏れた場合、不正に利用されてしまうというのはかなり怖い状態です。
そして、宿やOTAは宿で予約番号の流出についても、かなり慎重に対応することが求められそうです。
課題2. クーポンの利用と実績が一致しない可能性がある
次に課題を感じているのが、クーポンの利用と、店舗側の実績が一致しない可能性があるという点です。
クーポンの利用部分について、整理すると以下です。
1) 顧客が発行したい券種を選択して、クーポンを発行する。
2) 画面から店舗に配置したQRコードを読み取り、完了画面を店舗に見せる。
操作としては、すごくシンプルに見えますが、手順に問題があります。
このような電子決済をする場合や、アプリのクーポンを使う場合には、大きく2種類あると思います。
① POSと直接連動している場合
➁店舗側で金額を指定し、そちらに顧客が承認する場合
①は、最近だとLINEクーポンがこちらの仕組みになっています。スタッフも顧客も金額に一切手を加えないので、事故もかなり起こりづらい状況です。
➁は、PaypayでのQR決済などが該当します。店舗側で金額を指定し、QRコードを読み取る方式です。こちらも店舗側のミスがないことが前提ですが、顧客も見える画面に金額も出ているため、事故を防ぎやすいと思います。
一方、地域共通クーポンの電子クーポンはどのようになっているのかというと、顧客側で金額を指定します。そして、QRコードを読み取ったときに証明となるのが、顧客側の画面になります。
つまり、店舗側には、決済完了時点では、クーポンが利用されたことがリアルタイムに何一つ残らないのです。決済が完了したことを表す音もなる保証はなく、画面を見て信じるしかないのです。
うっかり、異なるクーポンを利用しても、気づかない可能性は出てきます。また、偽物のキャプチャを見せられて騙されるような場合もリスクとしてあります。
今回の地域共通クーポンは、全国規模、数千億の予算がかけられている事業であるので、不正の目には厳しく持たないといけないのではないかと思います。
また、利用者目線でも、課題は多いです。
課題3. クーポンを利用するまでのしきいが高い
利用者目線でも課題は大きいです。
今回の電子クーポンは、スマフォ専用サイトになるそうです。つまり、前提として、電波が届く環境+スマフォを保持しているということになります。
都心部の人は心配していないかもしれませんが、離島の旅行なども考えられるのです。そして、スマフォを保持していない人は一定数いるので、折角クーポンをもらったのに使えないという人が必ず出てきます。
そして、電子クーポンか紙クーポンかは予約したサイト側で決まってしまうため、残念ながら利用者には決める権利がありません。
紙クーポンにしたくても、電子クーポンを渡されるというのが現状です。
さらに画面にも課題があります。その1つが、ログインです。
ログイン画面ですが、おさらいすると以下のような画面になります(あくまでサンプルなので変わる可能性があります)。
最初に戸惑うのが、旅行者IDです。こちらは、クーポン発行システムの管理都合で、旅行会社、OTA、直販している宿に振られるIDを入れるようです。今のところ数百社の登録があるので、4桁の数字辺りをいれるのでしょうか?それぞれ予約サイトから連絡がいくのだと思いますが、初めて見る時には戸惑います。
そして、次に予約番号。簡単に見えるかもしれませんが、どの旅行会社の予約も英数字(一部、ハイフンなどの記号がある)で10文字程度あります。これを間違いなく入れる必要があります。
スマフォでの入力に慣れている人なら、メールなどからコピーすることもできるとは思いますが、ご年配の方にはかなり厳しい仕様となっています。
どれくらいの人が使えるか気になるところです。
課題4. 誤操作して使ったクーポンが取り消せない
電子クーポンを間違って使ってしまった、電子クーポンを使って買い物したが、買ったものが間違っていた、というケースは少なからず存在すると思います。そして、これらの買い物は、普通であれば、返品できると思います。
紙クーポンの場合は使ったクーポンを改修するだけで可能です。
しかし、この電子クーポンはそのようにはいきません。そもそも管理画面にリアルタイムにデータが来ないので、取消なんて方法ないということもあるのですが、決済が実態とつながっていないため、取消のリスクがあるという点が大きいです。
期間が短い中完成したことはすごいことですが、電子クーポンなのに、利用単位が決まっているなど、世の中が期待するレベルにはないというのが現状ただとは思います。
最後に
電子クーポンについては他にも細かな課題はありますが、気になる点は以上にしたいと思います。誤解がないようにお伝えすると、電子クーポンをやりたくないというわけではなく、むしろ個人的には賛成です。ただ、あまりにも今の仕組みがひどく、問題になる前に何とならないのかというのが今の気持ちです。これらのフィードバックは、当然事務局にもしていますが、回答はいただけておりません。
また、そこまで問題があるなら、紙クーポンにすればよいのではないかという意見もあるとは思いますが、こちらはこちらで辛い状況があるので、別途投稿したいと思います。