原作を超えてくるか【 岸辺露伴 ルーヴルへ行く 】(2023)
ついに映画化
岸辺露伴は動かない。ジョジョの奇妙な冒険のキャラクター岸辺露伴のスピンオフ漫画が愛ある人々の手によって実写ドラマ化されて、なんだかんだ毎年の年末NHKドラマの名物と化している。正直世間では承太郎やDIOより岸辺露伴の方が有名なんじゃあないか?
そんなシリーズもついにフランスのルーヴル美術館を舞台にした本作までを取り上げ、さらに劇場映画にしてしまった。ここまできたのはマジで凄い。そして見た目ではなく雰囲気で岸辺露伴を再現してしまった高橋一生は素晴らしい。
当時僕も原作漫画を購入して読んでいたが、改めて今回読み直し今回の映画に挑んだ。ちなみにこの漫画の岸辺露伴は動かないシリーズ。とても好きなのだけど、個人的にはかなりお話の面白さにムラがあるシリーズだったりする。
非常にワクワクする話もあれば、「え?それで終わり?」みたいな話も結構ある。更に原作漫画より実写ドラマの方がよく出来ている話があったりするのだ。
ちなみに今回のルーヴルへ行くの原作漫画は個人的には「え?それで終わり?」系だったりする。そんな最後捲し立てるように説明で終わらせなくても...。
そんな訳で今回の映画はどうだったかというと、原作漫画では描かなかった部分のドラマを描き掘り下げ、更に黒い絵にまつわる話を深くさせる事で長編映画として成り立たせている。
黒い絵を描いたフランスの謎の画家を巡る話からの導入などはかなり自然な作りで漫画よりも自然だし、ドラマでレギュラーキャラクターとして形成された編集の泉京香も今回もいい感じに露伴を振り回していて良い。「なんか…なんかですよね…。」ってセリフが最高。やっぱり小林靖子脚本は凄いなぁ…。
謎の女性である奈々瀬と、若かりし頃の露伴との関係も良い。あの旅館といい、湿っぽい雰囲気も最高だ。ただもっとバッサリ原稿を切っても良かったんだぜ!
ちょっとアレな見所シーン
だけど問題はフランスに行ってから。
ロケや映像はいいけれど、ポッと出で滲み出る 安藤政信の見るからに怪しい感じといい、突然の名探偵ばりの岸辺露伴の推理といい、何故か突然出てくる絵画がフェルメールというチョイスも、ちょっと安っぽく見えてしまって残念。でもこの窃盗集団云々の事件がないと更にフワッとしたお話になるんだよなぁ…難しい。
そして黒い絵と対面するシーン。
原作では屈指のホラーシーンで盛り上げポイント。とにかく残酷に描かれており、本映画でも怖くも面白くもいくらでも出来たはずだが、突然絵がチープになってしまった。消防士の男が次のカットでは蜂の巣になっているのは地味すぎるし、安藤政信の首を絞められてる演技もやたら長いし。あの狭い場面で起こるパニックにしては緊迫感と恐ろしさが無かったのが残念。
泉京香もあのシーンではずっと後ろを向かされているのもかなり不自然だったし、さすがに彼女だってあの常軌を逸した状況に、以降は戸惑うはずなのにケロッとしすぎなのは、さすがに今までの何も知らない普通の人ではなく、コイツはコイツでマトモじゃあない奴みたいに見えてしまった。…お前ひょっとして『スタンド使い』なんじゃあないか…?ゴゴゴ
冗長?補完?
そんな黒い絵の事件を経て、真相が語られる。かなり原作ではかなり駆け足で岸辺露伴が解説をしてルーヴルを去って話が終わるけれど、こちらではかなり山村 仁左右衛門の過去を気合を入れて映像化されており。なかなか凄い。ここまですると若干長いなと思いつつも、きっちりこの不思議な話を完成させようという気概を感じる。
そんなわけで本作は原作の足りない部分を補いつつも、冗長な作りと甘さが見えてしまうところが少し気になる作品でした。
…が、岸辺露伴のドラマシリーズは好きなのでこの先も続いてほしいです。そしてもっとたくさん描いてくださいよ荒木先生!
DATA
岸辺露伴 ルーヴルへ行く
公開年:2023年
製作国:日本
制作:アスミック・エース、NHKエンタープライズ、P.I.C.S.
上映時間:118分
監督:渡辺一貴