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VPSにメールサーバーを構築する方法を分かりやすく解説します|独自ドメインのメール送信

本記事では、xserver VPSにメール送信サーバーをインストールし、独自ドメインでのメール送信を可能とするための設定手順について解説しています。


なお、独自ドメインでのメール送信は、エックスサーバーさくらのサーバーなどのレンタルサーバーを契約したほうが、設定が簡単で初心者でも気軽に利用できます。その際にかかるコストも、年間で数千円~1万円未満で済みます。

ですが、レンタルサーバーは複数のユーザーと共有されるため、利用するメールアドレスが迷惑メールとみなされてしまうリスクもあります。

一方、VPSでのメールサーバー設定は手間がかかるものの、より安全かつ確実にメール送信を行いたい場合に適しています。
企業用メールなど、確実性や信頼性を重視する場合には、VPSでのメールサーバー構築をお勧めします。



前提条件の確認およびシステムの更新

前提条件の確認

  • VPSを契約済み(ここではエックスサーバーのVPSを例にします)

  • ウェブサーバーにApacheを使用(Nginxの場合は、仮想ホストなどの設定ファイルが異なります)

  • 独自ドメインを契約済み

  • 独自ドメインのSSL証明書を取得済み

システム更新

はじめにTeraTermなどでシステムにリモート接続し、下記のコマンドで最新パッケージに更新して下さい。

sudo apt update
sudo apt upgrade -y

更新完了まで2~3分ほどかかります。
完了間際に、下記のような画面が何度か表示されますが、どれもENTERボタンを押すだけでOKです。

Postfix(SMTPサーバー)のインストールと設定

ターミナルで下記コマンドをペースト&ENETRし、「Postfix」をインストールしてください。

sudo apt install -y postfix

(PostfixはSMTPサーバーとして機能し、メールの送信や外部メールへの転送に使用されます)

インストールの途中で、下記の画面が表示されます。

ここでは「インターネットサイト(Internet Site)」を選択してENTERボタンを押してください。

続いて、下記の画面が表示されます。

表示されているIPアドレスを消して、メールアドレスに使用する独自ドメイン(例: sfp-sample5.com)を入力し、ENTERボタンを押します。

続いて下記の画面が表示されますが、これらはENTERボタンを押すだけでOKです。

インストールが完了したら、Postfixのメイン設定ファイルを編集します。
下記のコマンドを実行してください。

sudo nano /etc/postfix/main.cf

表示されているファイル内容をすべて消去して、下記の内容に書き換えます。


smtpd_banner = $myhostname ESMTP $mail_name (Ubuntu)
biff = no

append_dot_mydomain = no
readme_directory = no
compatibility_level = 3.6

# TLS設定(Let's Encryptで取得したSSL証明書を使用)
smtpd_tls_cert_file=/etc/letsencrypt/live/mail.あなたのドメイン名/fullchain.pem
smtpd_tls_key_file=/etc/letsencrypt/live/mail.あなたのドメイン名/privkey.pem
smtpd_use_tls=yes

# 必要に応じて encrypt に設定可能
smtpd_tls_security_level=may

# SMTPクライアント側のTLS設定
smtp_tls_CApath=/etc/ssl/certs
smtp_tls_security_level=may
smtp_tls_session_cache_database = btree:${data_directory}/smtp_scache

# リレー制限設定
smtpd_relay_restrictions = permit_mynetworks permit_sasl_authenticated defer_unauth_destination


# ドメインとホスト名の設定

# メールサーバーのホスト名を設定
myhostname = mail.あなたのドメイン名

# 独自ドメイン名
mydomain = あなたのドメイン名

# メール送信元のドメイン名
myorigin = $mydomain

# 受信対象のドメインとホスト名
mydestination = $myhostname, localhost.$mydomain, localhost, $mydomain

# 直接送信なので空のまま
relayhost =


# ネットワークの許可設定

# ローカルネットワークのみ許可
mynetworks = 127.0.0.0/8

# メールをMaildir形式で保存
home_mailbox = Maildir/

# メールボックスのサイズ制限なし
mailbox_size_limit = 0

# 受信者区切り文字
recipient_delimiter = +

# すべてのネットワークインターフェースでリッスン
inet_interfaces = all

# IPv4およびIPv6をサポート
inet_protocols = all

# 仮想エイリアスマップを有効にする
virtual_alias_maps = hash:/etc/postfix/virtual

(注)「あなたのドメイン名」は、あらかじめ置き換えてください(あなたのドメイン名 ⇒ 例:sfp-sample5.com)

DNSレコード設定

次に、エックスサーバーのVPS管理画面にログインし、「DNS設定」⇒「使用するドメイン名」をクリックします。

「DNSレコード設定の追加」ボタンを押して、下記を入力してください(下記画像を参照)。

  • ホスト名:mail

  • 種別:A

  • 内容:VPSのIPアドレス

  • TTL:3600

続いて「入力行を追加する」ボタンを押し、下記を入力します(下記画像を参照)。

  • ホスト名:空欄のまま

  • 種別:MX

  • 内容:mail.あなたのドメイン名

  • TTL:3600

  • 優先度:10

なお、DNSレコードの設定は、DNSがインターネット上で反映されるまでに時間がかかる場合があります(通常は1~2分で完了)。

続いて、「mail.あなたのドメイン名」の仮想ホスト(Virtual Host)を作成します。
ターミナルで下記のコマンドを実行してください。

sudo nano /etc/apache2/sites-available/mail.あなたのドメイン名.conf

※Nginxの場合、このコマンドと下記の設定内容が異なります


真っ黒の画面(エディタ)が表示されますので、下記のコードをコピーして貼り付け、「あなたのドメイン名」を実際のドメイン名(例:sfp-sample5.com)に置き換えてください。

<VirtualHost *:80>
    ServerName mail.あなたのドメイン名

    DocumentRoot /var/www/mail.あなたのドメイン名
    ErrorLog ${APACHE_LOG_DIR}/error.log
    CustomLog ${APACHE_LOG_DIR}/access.log combined
</VirtualHost>


上記の設定ファイルを保存したら、下記コマンドで仮想ホストを有効化し、Apacheウェブサーバーを再起動します。

sudo a2ensite mail.あなたのドメイン名.conf
sudo systemctl reload apache2


SSL証明書の取得と設定

Certbotを使って、Let’s EncryptのSSL証明書を取得します。
※Certbotのインストール手順はこちら → https://note.com/sfp_note/n/n19cd3bf8dfdc

sudo certbot --apache -d mail.あなたのドメイン名

(Nginxの場合は、–apachを–enginxに置き換えてください)

上記コマンドの実行後、20~30秒ほど待っていればSSL証明書の取得が完了します。
続いて下記のコマンドでPostfixを再起動してください。

sudo systemctl restart postfix

これでVPSからのメール送信の際に、Let’s Encrypt証明書を使用した暗号化が有効になります。

SPF、DKIM、DMARCの設定

SPF、DKIM、DMARCは、いずれもメールの信頼性と安全性を高めるための設定になります。

SPFレコードの設定

エックスサーバー社の管理画面を開き、DNS設定のところで下記のTXTレコードを追加します。

  • ホスト名:空欄のまま

  • 種別:TXT

  • 内容:v=spf1 a mx ip4:VPSのIPアドレス ~all

  • TTL:3600

DKIMの設定

DKIMを利用するために、OpenDKIMをインストールし、署名の設定を行います。
まずは下記のコマンドでOpenDKIMをインストールしてください。

sudo apt install -y opendkim opendkim-tools

インストール時には下記の画面が表示されますが、これらはENTERボタンを押すだけでOKです。

次は、下記コマンドで設定ファイルを開きます。

sudo nano /etc/opendkim.conf

下記のような画面が表示されます。

このファイルの内容をすべて消去し、下記の内容に書き換えてください。

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