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アクターズ・ショート・フィルム4 福士蒼汰 初監督・脚本作品 「イツキトミワ」の話。

WOWOWの企画で年に1度実施されている「アクターズ・ショート・フィルム」。普段は俳優として役を演じる側にいる役者たちが全員同じ条件の元で監督を務め、撮影期間2日で25分以内のショートフィルムを制作するというチャレンジングで素敵な企画。

完成した作品は、米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」に出品され、グランプリを目指します。

今回の第4弾では千葉雄大さん、仲里依紗さん、福士蒼汰さん、森崎ウィンさんの4人が監督を務めています。

本日、それぞれの作品を監督として手がけた4人の役者さんが監督として登壇する上映イベントがあり、福士蒼汰さんの登壇回にお邪魔させていただきました。

劇場はユナイテッドシネマ豊洲。
映画の本編とメイキング映像の上映後の登壇だったので、本編のネタバレも含みながら、作品に込めた率直な想いを語ってくれました。

ここから作品の内容に触れるので、まだご覧になっていない方はぜひWOWOWオンデマンドで配信をご覧になってから読んでくださいね。

主人公のイツキとミワはイツキがギャラリーのグループ展に自分の絵を展示したことがきっかけで出会います。

撮影秘話の中で、本番前のロケハン後に、使うギャラリーが平面の1階から2階建の建物に変更になったという話がありました。 この中で印象的だったのが、変更をポジティブに捉え、それなら階段を活かした構図にしよう、最初は顔を映さず、階段を上がってくるシーンにしよう、と構成にも変更を加えていったという話。

初監督・初脚本という中でも瞬時に発想を変えられる柔軟性とポジティブさが素敵だなと思い、今回聞いた話の中でいちばん印象に残っています。

最初は出会いの場所を図書館にしようと思っていたのだけど、自分が主人公の目線になってみた時、ミワと図書館で出会う絵が浮かばなくて。と、普段こうやって考えるんですーって身振り手振りを交えて教えてくれたのがかわいかった🤭

図書館じゃなくて美術館ならアリかもと発想を変え、ギャラリーの設定が決まったそうです。

夏のある日、実家に帰る機会があり、家族に今度監督と脚本を担当するんだって話をしていた中で、ふと姉が言った「私、バッドエンドの話も好きなんだよね〜」という言葉や母が言った「今ヤングケアラーとかも問題になってるよね」って言葉がヒントになって、脚本のアイデアが湧いたそう。

その日は一睡もせずにiPhoneのメモ帳にぶわーっと思いついたことを書いていって一晩でプロットを仕上げたとのことでした。身近な家族の言葉をきっかけに普段から自分の中で考えているものがいろいろと繋がっていったんだろうなぁ。本当にすごい!

最初は自分の父をモデルにした内容を盛り込もうかとも考えていたけれど、25分という制限の中では盛り込むことが難しくそこはカットしたという話もありました。カットしなかったバージョンも見てみたい気がしますね!

質疑応答の中で「なぜイツキとミワという名前にしたのか」という質問があり、その答えとして「実は名前にそれほど深い意味はないんです笑」でも、「それぞれ数字が入っていて、主人公には初めということで、一の字を使いたいと思っていた中で考えていって1番いいなと思ったのがイツキという名前。」そして「木村了くん演じる健五に五が入ってるから、健五よりは前の数字がいいかなーっていうのと女子の名前は二文字がいいなと思っていたこともあって、数字の三をミワに使った。」という話がありました。

個人的には「イツキトミワ」というタイトルが全てカタカナ表記なところにどんな意図があるのか気になっています。月が象徴的に映る場面があるのだけど、タイトルの文字から「ツキ」を抜くと「イトミワ」が残り、入れ替えたら「イミトワ」になるから、生きる意味とは?みたいな隠れた暗号があったり?なんて勝手に想像していました。(あくまで私の勝手な想像です)いつか何かの機会に明かされるといいなぁ。

ちなみに「英語版の作品のタイトルは「Yours」にしたのだけど、そちらの方がより深い意味があるのでなぜそうしたか考えてみてください」って話もありました。日本語版と英語版でかなりタイトルの印象が違うので、そちらも、いつかどこかのタイミングでその答えを教えてくれるといいな。

今回、プロデューサーさんも一緒に登壇してくださっていたのですが、プロデューサー目線のコメントとして「福士監督は仕事が早い!」というお褒めの言葉がありました。

最初の顔合わせの時点で、ほぼ脚本として使える状態にまで仕上がったプロットを用意してきていて、その後も修正を依頼すると次の日には仕上げてくる仕事の早さに驚いたとのこと。

そして、イツキが白いキャンバスに向き合い、絵を描くシーンの撮影エピソードとして、「緊張感のあるシーンの演出の仕方に役者ならではの新鮮味があり、監督と役者のセッションのようですごくいい現場だった。 というコメントもありました。

このシーンについて福士監督は「自分も俳優だからわかるけれど、普通なら監督は例えばもっと激しく、とか動きとか目線について演出をしてくれることが多い。でもこのシーンのイツキの感情は1つじゃなくて複雑な感情だから、事前に何かを伝えるよりも、その場で生まれるものを大事にしたいと思った。」という内容の話をしてくれました。

あえて何も指示をせずにカメラを回し続け、10分ほど経った頃にポツリ、ポツリと「希望」「責任」などキーワードとなるような言葉だけを福士監督が発し、その言葉に応えるようにイツキの表情や動きに変化が生まれる。

メイキング映像でもそのシーンのやり取りを観ることができますが、このシーンのメイキングがそれ単体でも1つの作品になりそうなくらい、素敵な現場の映像が切り取られています。

イツキを演じた清水尋也さんは出演オファーを二つ返事でOKしてくれたらしく、初日に現場にきた時、「緊張して昨日寝れなくて〜!」と、ああ見えて実は後輩感あってかわいいとモノマネしてました。(プロデューサーさんが似てる!って言ってた笑)

そして、ミワを演じた芋生悠さんも表情の繊細な変化がすばらしかった。「いかにミワをかわいく撮るかにもこだわった」と話していました。少し、ぼく明日を思い出すような時間軸を辿る場面もあったりして、このあたりは過去に監督が俳優として演じてきた作品のエッセンスも感じます。

あと、イツキが先輩たちと仕事終わりに話してる居酒屋さんが、アイのない恋人たちで先週男子3人が別れた後の反省会飲みしてたのと同じ居酒屋さんだったんですが!撮影は映画が先だったので、こんないい居酒屋あるよ〜って話をしたのか、たまたま偶然同じだったのか、気になるところです笑

最後の締めの挨拶の途中で、今回ポスターにも使われている絵について「これ、実は僕も描いてるんですよ!」って話になり、絵のこの辺りを描いたのは僕ですって上の方を指して言っていました。友人のアーティストの方との合作なのだそう。

俳優として表現できること、監督として表現できること、そして脚本家として表現できること、きっとどれも少しずつ違っていて、今回この作品を作る過程で表現の面白さや俳優さんと呼応することで生まれるその場の臨場感に新たなものづくりの楽しさを実感したのだろうなと、充実の表情を見ていて思いました。

プロデューサーさんによると、「次回作のアイデア浮かびました!」とすでに言っていたそうなので!今後もまた監督や脚本家として新たにチャレンジする日がくるかもしれませんね。海外の方とのコラボとかも見たいなー!

福士監督も劇場で映画を観たくて、今回、後方の席にこっそり座って私たちと同じタイミングで鑑賞してたそう。ユナイテッドシネマ豊洲の今回のシアターは床から天井まで、横も壁の端から端まで全部スクリーン!って感じなので、役者さんがアップになる場面の感情の伝わり方に臨場感と迫力がありました。

今回作品を通じて伝わってきたのは、人間の持つ複雑さや脆さ、矛盾、そして純粋さ。何気なく交わしたひとことから物事が大きく動くリアルさも。

全体を通して、「福士蒼汰」という良い意味での自分のパブリックイメージを分かりつつ、それだけではない自分の一面を表現したいというのが伝わってきます。

何年か前ならもっと王道路線のテイストの作品になったかもしれないし、役者として深みを増した今だからこその作品なのかも。

劇場公開は今日から3/7(木)まで。
WOWOWでの配信も良いですが、劇場の大きなスクリーン、すばらしいのでぜひ!足をお運びください。

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