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【読了記録】今月読んだ本 ~23年2月編~
早速行きましょう。ネタバレが多少ありますのでご注意。
星新一『ようこそ地球さん』
星新一のショートショート集です。
星新一の著作は私の読書スタイル(複数の本をとっかえひっかえ読む)とマッチしているので、愛読しています。
『ボッコちゃん』『マイ国家』『悪魔のいる天国』『未来いそっぷ』に続いて5冊目。
ショートショートの特徴は何と言っても1編がとても短いことです。星新一は特にその世界観がSFチックでありながら決して古臭くなく、いつ読んでも近未来感があります。
よく人にこのことを紹介する時に例としているのが「大金」の表現方法です。例えば「1000万円」と書くと今でこそ個人で持っていればかなりの高額ですが、明治期では話が違ってきます。その頃は数円で贅沢できた時代ですし価値観が大きく異なります。
しかし、星新一の表現では「大金」は「腹いっぱいのご馳走を何ヶ月も食べ続けられるだけの金」という風に表されます。これならいつの時代で読んでも「腹いっぱいのご馳走」の価値は変化しないので古臭くないということです。
内容に戻りますが、収録作の中では「雨」と「信用ある製品」が面白かったです。オチが重要なものになっていますので、詳しい内容は紹介しません。相変わらず創意工夫に飛んでるなあ、と言った感じです。長い話でも10ページ程度しかないので読書が苦手な方でも大丈夫だと思います。
コーディー・キャシディー、ポール・ドハティー著、梶山あゆみ訳『とんでもない死に方の科学』
タイトル通り、現実にはまず考えられない「とんでもない死に方」のシナリオを考えよう!というもの。
内容はというと「もし乗っているエレベーターのケーブルが切れたら?」「粒子加速器に手を突っ込んだら?」「ブラックホールに落ちたら?」といった普通に生きていたらまず遭遇しなさそうなシナリオが45本紹介されています。
これだけ聞くと荒唐無稽に感じますが、本編では過去の事例(エレベーターのケーブルが切れて落下した事例、全身のあらゆる場所をハチに刺された事例等々)を紹介しつつ、思考実験だけに終わらせていません。
また、1つのシナリオでも様々な視点で考察されているため「予想外の死に方」をするというのも興味深かったです。例えば、「金星に降り立つ際に気温による死も考えられるが、気圧でも死ぬ。」など「そっち?」となる点が沢山ありました。
もちろん科学の教養本としても面白く、エレベーターの安全性(実はエスカレーターの方が危険)や人が折り重なれる限界など、人に話したくなるような雑学も多く、非常に楽しめました。空想科学読本が好きな人は絶対好きだと思います。
旦部幸博『珈琲の世界史』
コーヒーがどこから来て、どのように広がっていったのか、についての本です。コーヒー美味しいですよね。私は冷たいブラックが大好きです。
元々はアフリカのエチオピア原産のコーヒーですが、イエメンに持ち込まれた後にオスマン帝国経由で世界へ広がっていく過程が書かれています。
コーヒーは戦争や政治とかなり綿密に絡まっているため、単純に持ち込まれて広まったというものではないのも面白い点です。血なまぐさいと言いますか、割とこっそり苗や種を盗んで・・・みたいなことがよくあったそうです。さながらスパイ映画みたいですね。
内容のほんの一部を紹介すると
・イギリスは「紅茶の国」になる以前は「コーヒー先進国」だった
・フランスを変えたコーヒーハウスと政治の関係
・アメリカンコーヒーはなぜ薄い
などがあり、どれもうんちくとして語れるレベルで面白いです。
また、著者が無類のコーヒー好きなため丹念に調査された内容が精緻に書かれている点が素晴らしいです。実はコーヒーのヨーロッパへの普及ルートはいくつもありますが、それぞれのルートについて年代順に詳細な説明が述べられています。また更にスターバックスの戦略や「サードウェーブ」など近年のトレンドもきっちり押さえられている印象です(私はコーヒーについては門外漢なのでサードウェーブは知りませんでしたが・・・)
因みに著者は講談社ブルーバックスより『コーヒーの科学』も出版しており、本書はそこに載せられなかった内容を盛り込んだ本だそうです。そちらも合わせて読むと面白いとか。ぜひ私も読みたいところです。
以上、3冊でした。今月は色々立て込んでいたので少なめでした。
覚えていたら(やる気があったら)来月も書こうと思います。
それでは。