vol.1 B面: 生後30年時点での自分にとってのワーナー映画ベスト10を考える
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A面: 映画の誕生とHollywood、野心的な4人の兄弟集団「ワーナー・ブラザース」
このB面では今まで観たワーナー映画を箇条書きにし、それについての思い出などを書いていこうと思ったのだが、いざ箇条書きにまとめてみると相当な数になってしまったのでこの中からベスト10(順不同)を厳選し、それらの作品について書いていくことにする。
アーティスト
アイズ ワイド シャット
アウトサイダー
イエスマン
インターステラー
インヒアレントヴァイス
ウィッカーマン(ニコラス・ケイジの方)
エンパイア・レコード
俺たちに明日はない
お!バカんす家族
カサブランカ
華麗なるギャツビー
キー・ラーゴ
グーニーズ
グラン・トリノ
グリーンマイル
グレムリン
恋のドッグファイト
コードネームU.N.C.L.E.
さらば、ベルリン
ジャージー・ボーイズ
シャイニング
ジャズシンガー
15時17分パリ行き
スペースカウボーイ
ゼロ・グラビティ
センター・オブ・ジ・アース
脱出
ダーティーハリー
タワーリング・インフェルノ
ダンケルク
チャーリーとチョコレート工場
TENET
DUNE/デューン 砂の惑星
時計じかけのオレンジ
トムとジェリー
ナイスガイズ
ネバーエンディングストーリー(日本では東宝)
Her/世界でひとつの彼女
運び屋
羊たちの沈黙
ブリット
フルメタル・ジャケット
プロジェクトX
ブレードランナー
ポリスアカデミーシリーズ
マイフェアレディ
マッドマックス
マルタの鷹
ミーン・ストリート
三つ数えろ
ラブ・アゲイン
リオ・ブラボー
理由なき反抗
ご存知の方も多くいるかと思うが、キューブリック作品はワーナー率が非常に高い。そのためキューブリック作品が複数ランクインしないよう努力はしたが、結局2作品ランクインしてしまった。このことを素晴らしいことと捉えるか私の怠惰と捉えるかはお任せします。
アイズ ワイド シャット
インヒアレントヴァイス
俺たちに明日はない
三つ数えろ
カサブランカ
シャイニング
脱出
15時17分パリ行き
ブレードランナー
マルタの鷹
⒈ アイズ ワイド シャット Eyes Wide Shut
製作年:1999年 監督:スタンリー・キューブリック
キューブリックがこの試写会から一週間も経たぬうちに急逝したため惜しくも遺作となった作品。アルトゥル・シュニッツラーの中編小説『夢小説』(1926年)が原作になっていて、元々70年代から映画化の構想を練っていたと言われている。原作がベースにあるとはいえ、不可解な死を遂げた娼婦とキューブリックの突然の死をどうしても重ねて観てしまう。さらには某秘密結社の闇ないしこの世界の裏事情を垣間見てしまうことになり、個人的にはトラウマ作品のひとつでもある。当時、こういったエロ耐性は十分に兼ね備えていたつもりだが、仮面乱交パーティーの衝撃的な映像はその後もずっと脳内の片隅に残像として居座り続けていた。あれから10年以上経った今は、さすがにもう忘れてしまったが。
初めて観たのは確か高校2年生の頃で、当時の私には「キューブリックはおしゃれでヤバイからひと通り観ておかなければ」というミーハーな使命感があった。なのでキューブリック作品の多くは高校生の頃、近所のTSUTAYAの旧作1本100円レンタルの日に借りて観ていたのだが、正確な表現としては「母親のTカードを使って借りて観ていた」というのが正しい。
キューブリック作品の多くにはR18のレイティングが設けられていた。どう足掻いても自分一人ではレンタル不可能であることを過去に身を持って体験していた私はTカードを家に忘れてきたことにして母親に同行してもらい、母親のTカードでレンタルすることでキューブリック作品に触れることができていた。(近所のTSUTAYAは1階がスーパーになっている店舗で、母の買い物を手伝いがてら2階のTSUTAYAに寄り道してレンタルするのがルーティーンだったのだ)
ちなみに身を持って学んだ体験というのは、映画版『薬指の標本』をレンタルした時のことだった。
当時の私は勉強の合間に小川洋子の小説を読むことを生き甲斐としており、中でも一番好きだったのが『薬指の標本』だった。好きだったと言いながらも実際に所有しているのはこの『薬指の標本』のみで、他は全て学校の図書館で借りて読んだものだった。
その『薬指の標本』がなんとフランスで映画化されているという事実を知り、幸運なことにあの小さな近所のTSUTAYAでも取扱があることを知った。興奮冷めやらぬうちにTSUTAYAへ向かい、意気揚々とケースをレジに持って行ったところ、「あなたはR18のレイティング対象に引っかかるため貸し出しすることができない」と跳ね返されてしまう。
当時頭は金に近いベージュ色で、メイクも下手くそながらそれなりに施してはいた。さらに学校では「授業参観」というあだ名がつくほどの老け顔だったため、年齢不詳な人間を演じることには多少なりとも自信があったのだが、あっさりと断られてしまったのだった。
その対応について特に反抗することはしなかったが、店員から詳しく話を聞いたところ、「Tカード登録時に本人確認のために生年月日を登録するため、店側のシステムで年齢を把握しているためレイティング対象外の場合はお断りさせていただいている」のだという。このようにしてデータイズム(データ至上主義)がヒューマニズム(人間至上主義)の世界を凌駕していったわけか。
ちなみにその時私が借りようとしていたのはその一本のみだったため、「何か買わないと手ぶらで帰るハメになってクソ恥ずかしいなこれ」と思った私は咄嗟の判断でレジ前に並んでいた「録画用DVD-R 30枚パック」みたいなやつを即鷲掴みにし「これお願いします」と言って恥ずかしさを余裕な素振りに昇華してみせた。レンタルビデオ屋での惨事(珍事)といえば、みうらじゅんのコラムにあったビデオ全没収プレーのことを思い出す。
みうらじゅんエッセイ「ひとり車内で。」
⒉ インヒアレントヴァイス Inherent Vice
製作年:2014年 監督:ポール・トーマス・アンダーソン
私のPTA体験はかなり遅く、初めて『Boogie nights』を観たのは確か大学2年か3年の頃だった。そして映画好きの方々からしたらドン引きな話だと思うが、それまでポール・トーマス・アンダーソンのことをずっとファッションデザイナーだと思っていた。多分J.W.Andersonのデザイナー、ジョナサン・アンダーソンとかと混同してしまっていたのだと思う。恥ずかしくてたまらないや。
その後の『Magnolia』(ファッションの話を挟んだせいでMargielaに見えてきた)や『Punch-Drunk Love』あたりまでは基礎的に備わった能力で楽しく観ることができていたのだが、『There will be blood』以降は全くと言って良いほど理解が追いつかなくなってしまった。「応用事例とイラストでわかるPTA」とか「入試直前短期集中ゼミ PTAが10日でわかる本」とか、そんな参考書があるならぜひとも買いたいところである。
そんな中迎えた社会人一年目の春、毎春お馴染みのスプリング・ハイ(original)も相まって、予告動画を観た私は「今回はなんかイケそうな気がする」という根拠のない自信を胸に公開初日にヒュートラ渋谷へと駆け込んだ。自分は本当に成人した大人なのだろうか?と疑いをかけてしまう程ほぼすべての出来事を理解できなかったのだが、スプリング・ハイ効果(original)により「わからなくたっていいよね、だってPTAだもん」という、デヴィッド・リンチを観た時のそれと完全に同じ理屈でその鑑賞体験は自動的に正当化された。とはいえスプリング・ハイ効果自体は一時的なまやかしに過ぎないので、その後はしっかりPTA恐怖症をぶり返し、未だに『ファントム・スレッド』は未見のままでいる。
そんなこんなでPTA作品から離れていた(置いてかれていた)2年ほど前、突如Netflixのホーム画面に現れたANIMAの予告映像に衝撃を受けた。そもそもトム・ヨークとPTAのタッグには良い予感しかないのが前提なのだが、没頭していたら15分なんて一瞬で通り過ぎてしまうほど良く、FIlmarksの記録によるとその日だけで合計4回は観たらしい。
そして去年の夏に公開された待望の新作『リコリス・ピザ』は『Boogie nights』を初めて観たモラトリアム期の感覚に引き戻されたような懐かしさと瑞々しさでとにかく最高の映画だった。個人的には撮影地がPTAの地元サンフェルナンド・バレーの地に回帰したってのがかなり大きいと思っていて、サンフェルナンド・バレー・トリロジー(『Boogie nights』、Magnolia』、『Punch-Drunk Love』)の復活は私のPTA青春時代の復活でもあったのである。
…っていうのはちょっと大袈裟か。でもあの映画は大袈裟すぎるくらいの愛がちょうどいい気がする。
↑大好きなのに多方面の映画やテレビの挿入歌で使われすぎていて軽くノイローゼ気味な『 Life on Mars』
思いの外長くなりすぎて10作品も書けませんのでここで終わります。