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梅雨が明けたら(2)

セルフライナーノーツ

また自分に嘘ついてばっかで。すきじゃないわけないでしょ。まだ僕は君と友達のままでいる。昨日も今日も、多分明日もそう。ただあなたが友達と笑っている。そんな姿に惹かれたけど、最近では少し悔しさを覚えるくらい。

君を誘う勇気は僕にはない。

僕は告白なんかしたことが無いし、どうやって気持ちを伝えればいいかの正解がわからない。正解なんてないことを理由にさまよい続けてる。
不自然な告白をしたら君は笑うだろうか。たどたどしく好きと伝えたら笑ってくれるだろうか。それとも笑われるのだろうか。笑ってくれたっていいから頷いてくれればそれでいいんだ。結局はそれで。

いつも通り6時間目が終わり、帰宅部の僕は即帰宅。少しだけドアが開いているから、雨音がだんだん大きくなってくる玄関に向かって歩き出す。隣のクラスの君は僕より一足先に雨音のする方へ。心臓の鼓動が早まるにつれて、少し早足になっている僕は単純だ。告白をする気になった自分は強いぞと、言い聞かせる。立ち止まった君に、急に好きだと言ってしまった。勇気を出して君に気持ちを伝えてみたものの、雨はまだ怒っている。うるさい雨音が僕の言葉を全て隠して無かったことにした。やめてくれよと心で思ったってどうにもならないし、むしろ聞こえていなくてよかったと思ってしまった。なんて恥ずかしいのだろうか。

「またね」
と君は通り過ぎてしまった。
我慢してるだけじゃきっとぼくときみが主人公の物語なんて始まらない。始まるわけが無い。別々の物語の主人公。自分の物語のスピンオフが君だなんて有り得ない。

君の雨に濡れた背中を追いかけて、勇気をだして懲りずに話しかけてみる。

「雨が落ち着くまでそこで雨宿りしない?」

「いいよ!」

君のその言葉にどれだけ安心したか。
元気な返事にドキッとした。
一緒に商店街まで走る。
びしょ濡れになったふたりが少しの間を空け並ぶ。

「雨全然止まないね。」

僕は小さく頷いた。

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