
梅雨が明けたら(1)
セルフライナーノーツ
不機嫌な6月の雨が屋根に当たる音が部屋に響く。
どんなかたちなのだろうか。考えながらうとうとしてた。雨が降るこんな季節はなんだか自分が詩人にでもなったようで。嫌でも叙情的になってしまう。わけもわからずでたらめな言葉を並べて暇を潰していた。
「今年は雨量が過去最高です。」
ニュースキャスターが毎年最高なのか最低なのかを更新している。
そんな陽気が1度途切れたある日のこと。午前中に怪しい雲が空に連なり始めた。
「やべっ。今日傘持ってきてねーや。」
心の声が漏れていたらしい。小テストの合間少し早く終わった自分は思わず口からこぼしていた。
「テストも近いのだから、集中したらどうだ。」
と先生に少し叱られた。
かったるい授業が終わってやっと帰れる。
玄関に向かった。
下駄箱で自分の靴を取り、溜息をつきながら上履きを入れた。
外に出ると君がいた。空を見ながら
「傘忘れちゃった、、。」
と呟いてた。君と目が合ってすぐ。
「ごめん傘持ってないや。じゃね。」
目を逸らし走り出した。
自分もバッグも濡れて、なんて情けないやつだと思った。
ただいまとため息を漏らす。
心臓がいつもより早く動いているのがわかる。それは雨で傘を持っていなくて走ったからでは無い。雨を眺める君がとても綺麗だったから。
いっそのこと勝手に口が滑って「綺麗」と言葉に出来たらどれだけ楽だろうか。このままじゃきっと君とふたりなんてありえないんだろう。
もし何かの間違いで君とふたりで帰れたら。
あの人気のない商店街で雨宿りでもできたら。
すんなり言葉が出てくるのかもしれない。