「タテ社会の力学」中根千枝
惜しくも先日95歳で他界した中根千枝氏の著書「タテ社会の力学」を手に取ってみた。
かつて日本社会の文化を書いた名著「菊と刀」という非常に有名な書籍があるが、本書では更に奥に進み、日本の小集団主義やタテ社会について論じている。
著者の主張と異なるが、海外渡航歴の多い私からみると日本人ばかりが小集団(Unit)を形成しがちかと言えばそうでもない。外国でも地方では、それぞれの地域でUnitが形され、そこでの独自文化や慣習は往々にして存在するのである。
しかし序列については日本社会と大きく異なると言えよう。
私たち日本人はどの集団に属していようと、ほぼ間違いなく序列があることを認識できる。それは会社内の序列であり、あるいは学校のクラス内の序列である。
社内会議、あるいは会社での飲みの席での席順は厳密に決められており、上司は上座、下っ端の人間ほど下座に座らなければならないとされる不文律が存在する。また、あらゆる決定事項に関しては、やはり上にお伺いをたててから決定する仕組みは当然のプロセスと言えるだろう。
欧米社会と日本社会の企業文化の顕著な相違はIndivisualかGroupかである。個人で仕事を貫徹しようとする欧米では、Co-workersとの協調はあまりみられず、一人一人がみずから意志決定を行い仕事を遂行していくのに対し、日本では仕事仲間での協調して仕事をするCo-workingは常識とも言える。
当然ながらGroupでは加入時期によって序列があり、また形式的には役職によっても序列がある。またGroup内では、みんなが同じような行動をしなければ仲間とみなされず、一人だけ別行動をする人に対して排他的な扱いをしてしまう。これは個人の人権を認めようとはしない日本特有の集団主義といえるが、欧米的な個人主義的な労働環境では序列は薄く、個人の人権も尊重されるのでストレスは弱まっていくと考えられる。
どちらが良くてどちらが悪いか答えを出すのは難しいかもしれないが、これが集団主義であるが故のタテ社会の原理であり、ある種の日本社会の病理でもある。
★★★☆☆