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飲み屋でポテト頼む奴をちょっと下に見ている話

全国のポテトファンの皆さん、まずはじめに申し訳ない。賠償はしないが謝罪はさせて頂く。まず、俺もポテトは嫌いじゃないんだ。むしろ好きな方だ。だが、言いたいことだけ言わせてもらって書き逃げしたい。

俺ももういい歳だから、チェーンの居酒屋にはあまり行かなくなった。元来あまり酒を飲まないタチなので、普段からそういう店には足が向かない。遠方に遊びに行った時や気のおけない友達と食事をする時は、やはり美味いものや珍しいもの、自宅ではあまり調理しない海産物が食いたいから、地のものを置いている店を選ぶ。

席についたらまずメニューを見る。テーブルの上に置かれているやつじゃなく、店の壁に貼ってあるメニューだ。右隅にあるものが、その店の自慢のメニューと思っていい。まずはそこをチェックしておく。初めての店なら、それを頼んでみる事にする。次に手書きで書かれた本日のオススメだ。これはその日仕入れたいい素材で調理したスペシャリテということになる(稀に材料の処分の口実としてオススメメニューにする悪辣な店もあるようだが)。そういうものを何時でも探してしまう。どこかに店の主張を。向かいのホーム、路地裏の窓、こんなとこにいるはずもないのに。

――とりあえずのドリンクを頼み、それらのメニューを眺めながら陣を組み立てる。この時間が至福の時だ。揚げ物・焼き物ばかりでもいけないし、最初はまず前菜か小鉢みたいなものから…。実はただのトマトのスライスがいいブリッジになるんだな、これが…とか。俺は普段使わない頭をフル回転させる。この時ばかりはMENSAの連中にも負けない。

だがしかし、駄菓子菓子。そんな陣を組み立てる一人作戦会議の途中で「とりあえずポテト」と号令をかける不届き者がごく稀にいる。俺は戦慄する。

「ポテトだと…!!」

ああ、ポテトは美味い。美味いともさ。しかしな、それは何処の店でも食えるやつだろう?マクドナルドだってくら寿司だってポテトはある。いや、言いたいことはわかる。もしかしたら、この店のポテトは「インカの目覚め」とか使ってるかもしれないしな?特別なスパイスがかかっているのかもしれない。だがな、ポテトはポテトだ。それをお主は、敢えてここで食べると申すのか!

こちらが「まずは地モノの新鮮な野菜を使った前菜からせめて、次はサヨリの刺身あたりでいってみるか…。馬刺し?そういうのもあるのか!」などと一人で作戦会議をしているのに、とりあえずポテト!

なあ、俺達は今もそれほど裕福じゃないが、流石にジャガイモで腹を満たすほど貧しくはないだろう?最初にポテトを頼んで小腹を満たしてどうするっていうんだ。考え直せ。せめてポテトサラダにしよう。

そうなんだ。「とりあえずポテト」は思考停止の証なんだ。だから俺はちょっと下に見ている。もう少し考えよう。本当にそのポテトはお前が食べたかったポテトなのか。ポテトはお前に食べられたいと望んでそこで待ち構えていたのか。だとしたらマクドナルドでよかったんじゃないか。そしてポテトの次になぜホッケが食えるんだ。その布陣はどうなっているんだ。

だから落ち着いて、まずは俺が頼んだモツ煮を一緒につつこう。落ち着くのは俺だな。こういう奴が「めんどくせえ奴」って下に見られるんだよな。好きなものを頼んで食べればいいよ。

ご静聴ありがとうございました。

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