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21歳でも、お年玉が欲しいのだ。

 お年玉が欲しい。

 お年玉が欲しいというよりかは、楽にお金が欲しい。

 もらうのは別にいつでもいいんだけどさ。

 年始の金銭感覚がバグっているころにもらうお金はまるで魔法だ。それで何でもできる気がする。だから特にいらないものを買おうとして失敗することが多い。しかし、その魔法はまだ効力があって、僕の頭をバグらせているので、そんなの別に気にならないし、そのゴm…いや、がらくたに無意識的に価値を見出ているのだ。


 年始といえば、福袋だ。僕は人生で1度しか買ったことがない。とある通販サイトで販売されていた福袋、通称UKロック福袋を買った。この福袋、その名の通り、イギリスのミュージシャンに関するグッズが1万円分入っていて、それが5000円で売られているというわけだ。

 イギリスのミュージシャンといえば、ビートルズ、ストーンズなどなどいて、「これは買いだ!!」と思い、軽々しい気持ちで買ったのだ。

 その時はなぜか希望に満ちていた。普段からひねくれている僕からすれば、「福袋なんて売れ残りをぶち込んでいるだけだ」とか思うだろう。昔、クレヨンしんちゃんの福袋の回で、ウキウキで開けたらゴミばっかりだったというものがあって、そういう固定概念が僕の中にビッチリと張り付いてしまったのだった。


 しかし、近年の福袋は一味違うらしい。アパレルブランドの福袋なんかは、決して売れ残りなどではなく、その年に流行するような色・形状を踏襲しつつ、顧客がお得感を感じられるような選出がされているらしいのだ。

 そんなことを思いつつ、その福袋が届くのを楽しみに待った。後日、母親から福袋が届いたという連絡が入り、ウキウキで家に帰ると、僕の部屋に薄っぺらい箱が置いてあった。

 薄っぺらい箱、、、???


 と、見たまんまのことを呟いてしまったほどだ。僕の脳内イメージでは、赤白ストライプ柄の袋に、でっかく「福袋」と書いたものが届くと思っていたので、うっす~~い段ボールが届くなんて思ってもいなかったのだ。

 外見にはやや失望したものの、中身がよければいいかということになり、カッターを右手に開封作業に転じることに。


 まず目に入ったのは、黒いTシャツだった。しかしどう見ても無地だった。え、、UKロック福袋じゃないの??と不安になった。

 そんなことでくじけているわけにはいかないので、次に。次に目に入ったのはデヴィッド・ボウイのTシャツ。

http://www.the-rudy.com/product_info.php?products_id=4764

 おーこれはかっこいい。いいじゃないかなかなか。

 それを捲ると、もう一枚Tシャツが。それもボウイだった。

 (今、そのTシャツは手元にないし、ネットでも見つけられなかったので写真はないぜ!!勘弁な!!)

 箱の形と一枚目のTシャツに落ち込んでいたが、この2連続でうれしくなり、そんなことはもう忘れてしまった。


 次に目についたのが、2枚のポスター。1枚目はさっきのTシャツと同じ柄のポスター。そしてもう一枚は、ボウイの遺作アルバムである『★(ブラックスター)』のポスター。

https://www.amazon.co.jp/%E2%98%85-%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%EF%BC%89-%E3%83%87%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%82%A6%E3%82%A4/dp/B0189JGNSQ

 別にいいのだが、例の靴ブランドを彷彿とさせるよね。

 さて、次は何だろうと思い、見てみるとマグカップがプチプチにまかれて、そのままゴロっと入っていた。それはただのオレンジのマグカップで変な宇宙っぽい柄がついていて、それはまぁ、ダサかった。

 しかも愛くるしいダサさではなく、なんか腹立つダサさ

 「おかーさーん、これあげるよ」


 という一声で、そいつとの関係に完全に終止符を打った。


 よし、次だ。と思い、最後の一つを手に取ると、それはなにかのパンフレットだった。包装をとってみると、エリック・クラプトンのだった。

 しかも、知らないツアーの行ったこともないツアーの

 行ってもないツアーのパンフレットなど、なによりもいらないし、こんなもののために5000円も払ったことに後悔していることを否定できなくなってきた。年始の魔法は冷めつつあり、僕は少しずつ冷静になってきた。


 うわ、、、と思い、ふと横に目をやると、最初に取り出したほとんど無地の黒Tシャツが部屋の電灯の光を反射していた。

 僕はなぜそのシャツが無地なのかが気になり、少し持ち上げてみた。すると、よく見るとTシャツに顔が浮かんできたではないか

https://www.pgs.ne.jp/view/item/000000065493

 これは、ストーン・ローゼズというバンドのボーカル、イアン・ブラウンだ。しかし、黒地に黒という製作者の奇抜すぎるセンスによって、暗闇のおばけみたいになっている点は否めない。

 これは、、いらねぇ、、(苦笑)


 そう思いながらも、口に出した瞬間負けなので(なぜ)、そんな思いを飲み込んでちゃんとそれから大事に着ている。



 そう、僕は典型的な人間なので、こんなものだろうとはわかっていても、ふいに生じた期待と欲のために5000円も使ってしまう人間だ。

 その後、Tシャツはちゃんと僕によって着用され、ポスターは家の倉庫に、マグカップはリビングのペン入れに、そしてパンフレットは部屋の本棚に雑に放置されている。

 こんなもんさ、正月。

 ところで、何歳までお年玉ってもらえるんだろうか?

小金持ちの皆さん!恵んで恵んで!