自粛期間中だから、全裸で街を歩きたい
自粛期間で、誰もいない街を全裸で歩きたい。
露出による公然猥褻が罪なのは、観賞する人間がいるからだ。
観賞して、不快に思ったり恐怖したりする人間が多すぎるからだ。
しかし、自粛期間中の今なら誰も彼もが家にこもっており、私の男根を畏怖する人間も、嘲笑する人間も、街にはいない。
だから私は、堂々と全裸で街に繰り出すのだ。
夏を待ちわびるように、段々と強くなってきた陽射しと、
冬を名残惜しむように、まだ冷たさを残した風と、
そのアンバランスさを肌という肌、男根という男根で感じながら、私は街を闊歩する。
しかし、自粛を守らず街を歩く不届き者も、稀にはいるだろう。
そういう者達は一糸纏わぬ私に怯え、そして軽蔑するだろう。
まるで、自分の方が被害者であるかのように。
そんな痴れ者達に、私は胸を張って、
「自粛期間中だぞ!! 自粛期間中だぞ!! 家におらんか!! 何をやっとんのじゃ!!!」
と正面から正論をぶつけてやるのだ。
そうやって静かな街を見守りながら歩いていると、どこからか警察官がやってきた。
きっと、自粛をせず街を歩く迷惑な人達を取り締まるために出動したのだろう。
そう推測した私が「お勤めご苦労様です」と頭を下げると、
なんと警察官は、私を捕まえようとするではないか。
聞けば、自粛期間中にも関わらず外出して私の裸体を不用意に目撃した愚か者達が、私を拘束するよう警察官に訴えたというのだ。
「なんでワシが捕まらんといかんねや!! ほっつき歩いとる連中を捕まえるのが筋やろうが!! 自粛期間中やぞ!!
おかしかろうが!! おかしかろうが!!」
真っ直ぐに正論と道徳を訴える私の声に、警察官は耳を貸そうともしない。
果たして、この国の権力は正義を失ってしまったのだろうか……。
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