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雨の息

こんな川柳を習ったことはありませんか?
「本降りに なって出ていく 雨宿り」
教科書には必ずと言ってよいほど掲載されていた作品です。

まさに言いえて妙ですよね。雨が降ってきて、こりゃぁってんで、雨宿りしたはいいけれど、一向に止む気配はない、仕方ねぇ と決断して、降りだしの頃よりはるかに強い雨脚の中を、走っていくという人間の心理を見事に活写した素晴らしい作品です。

でも、ここで気象に多少詳しい人に登場してもらうと、多少雰囲気が変わってきます。
「ず~っと強い雨脚のままの雨降りって、そうそうはありません。強い雨が降る所は、上昇気流もまた強いところなのですから、満遍なく上昇気流が平均的に強いなんてことはまず有り得ません。

上昇気流の強いところでは、強く降っていますが、弱い部分では、周りよりも降りが弱くなっています。
そう、これが雨の息ですね。強く降ったり弱く降ったり。
それならば、いつ止むのかなぁなんて焦るよりも、多少気持ちを落ち着けて、雨脚が衰える気配を感じ取ることに気を集中してみましょう。

雨が当たっているところからは、必ず音が出ています。その音が力強さを失ってきたらチャンス到来です。ここで、もう少し辛抱して雨脚を観察してみます。さらに弱まってきたら、ここで決断して、雨の中を走りだしましょう。5~8分ほどは状態はつづいているはずです。

そして、あなたは首尾よく家に辿り着きます。そして、数分後、勢いを取り戻した雨が、地面に挑んでいる光景がまた始まります。
奥さんは、「あなた、ラッキーだったわね、また、強くなってきたわよ。」ここで、あなたは相槌を打ちましょう。
「ほんと、ラッキー、良かったぁ。」
この時、間違っても、「日頃の行いが良いからさ。」なんて言わないことです。「君のパワーのおかげかもね。」くらいは言ってみたいもんです。
すみません、また、脇道にそれました。

さて、この図式は当てはまりにくいのが、台風の外縁部の雲です。台風はエネルギーの塊ですから、上昇気流の申し子です。
雨の息は当然ありますが、それが予測できないのです。何しろ、単純なように見える空気の大きな輪ではありますが、実際は、渦同士が絡み合って、急に成長したり、逆に打消しあったりしているからです。

台風のエネルギーは、全盛期には、原爆何個分という量に達するそうですから、とんでもない力を持っているのですね。
それが、風に化けるか雨に化けるかで、風台風と呼ばれるか、雨台風と呼ばれるか。

いずれにしても、雨の強弱に興味を持っていただくだけで、実に様々なことが分かってきます。自然と・気候と・あなたと

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