DC-10 vs L1011

エアバス時代を支えた二大旅客機の名前です。
かたや、旅客機の名門ダグラス社(戦闘機メーカーのマグダネル社と合併して、マグダネル・ダグラスとなっています)、かたや、軍事部門の圧倒的な力を発揮するロッキード社の製品です。


この二つの航空機に共通しているのは、3発機だという点です。
大型旅客機で3発形式というのは、この二機種以外は登場していません。
まだ、エンジンの故障にナーバスだった時代、高地では双発機より安全性が担保でき、4発機よりは経済的に優れているという触れ込みで、華々しくデビューしましたが、両機は全く反対の運命をたどります。

もとはと言えば、混みあう空港として有名なニューヨークのラガーディア空港のスポットに入るサイズという注文に応じて応えた機体でもあります。
この両機の運命を変えたのは、搭載するエンジンの選定でした。

開発に無理のなかったGE製 CF6-50A ターボファンエンジンを選定したダグラスは、設計・開発でロッキードに大きく水を開けられていたために、先行してローンチを発表したL1011に追いつくために、先進機構の導入を極力抑えて、既存システムで手慣れた設計としました。

かたや、ロッキードはもともと先鋭的な設計思想を持つため、燃費的に優れると喧伝されていたロールロイス社の3軸式エンジンRB211を採用します。ところが、これが開発が遅れに遅れて、いったんはロールスロイスが倒産してしまいます。イギリスは威信をかけて同社をテコ入れし、何とか実用化に漕ぎ着けますが、時すでに遅しで、エンジンなしL1011がずらりと並び惨状を呈してしまいます。

これを打開するため、ロッキード社は例のロッキード事件を引き起こすことになるのです。加えて、大幅値引きで、猛烈なセールを展開します。これのあおりを食ったダグラスは、やはり値引きを迫られ、そのために同社の財政状態は、極端に落ち込んでしまいます。

多分に、政治的匂いが漂い続けたる両機ですが、性能上は素晴らしいものを持っていて、DC-10は機体規模に対して、やや過剰推力気味のエンジンを搭載していたため、じゃじゃ馬的な性格が出ていましたが、これをパイロットは歓迎したといいます。加速力が段違いなのですから、気持ちは理解できます。

一方のL1011の方は、空力的に洗練されたエレガントなデザインでした。また尾翼の2番エンジンの推力線を機体中心に合わせる工夫として、空気吸い込みダクトをS字状にしていました。
しかし、この開発・販売で痛手を被ったロッキードは、旅客機の開発をやめてしまいました。250機の販売数でした。

DC-10の販売機数は、446機まで伸び、空中タンカーとして軍に採用されました。また、長距離型の開発ののち、さらに、発展型としてMD-11も開発されました。しかし、これは、乗客数と航続距離の関係で、B-747に圧倒され、商業的には成功しませんでした。

結果的に、両機の最後はあまりぱっとしませんでしたが、一時代を築いた3発機であるという記憶は、しっかりと航空史に刻まれています。

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