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ボーテックスジェネレイター

Vortex generator 飛行機に興味がある人は、かなりの人が知っている言葉でしょう。文字通り「渦を発生させる仕組み」を指します。
飛行機には、さまざま力が働いていますが、飛ぶことによって翼と空気の流れが綺麗に流れなくポイントが有ります。

境界層剥離という言葉が登場してきます。境界層とは異なった物質の接する面を表します。金属が空気の中を移動すると、表面に沿った空気の流れが形成されます。これを境界層と言いますが、この流れが境界面から剥がれるという現象が起きることが有ります。
これが、境界層剥離です。この現象が起きると、翼に余計な抵抗が増え、燃費が悪くなります。

この剥離する現象を食い止めようと考案されたのが、ボーテックスジェネレイターです。通常、翼の前縁に設置して、発生させた乱流を上手に使えるように設計すると、境界層剥離を抑えることができます。
空気の流れを上手に使った例と言えます。
タイトル写真の翼の上に見える黒っぽい点々が、ボーテックスジェネレイターです。簡単に言えば空気の流れに邪魔者を置いて、そこから渦を発生させるという至極簡単な原理です。

でも、これの効率を高めようとすると、これは大変高度な計算式を駆使しなければならなくなります。ま、数学好きで物理に通暁していて閃きも持っている人でないと、立ち向かうことができない難関です、と素人の私は断言します。

そして、この境界層をもっと積極的に使うことをNASAは考えました。どうせ、翼に張り付いているのだから、その境界層を翼の表面から吸い込んで、後方に流してしまえば、翼に対してかかる抗力をグンと低減できるだろうという発想です。

確かに面白い技術開発だったでしょう。事実、中型のジェット双発機であるスカイウォリアを改造して、実際に飛ばしています。
ただ、結果はあまり捗々しくなかったようで、その後の開発記事はしりすぼみになってしまい、情報は立ち消え状態です。

でも、そうしたものにお金をかけて、実証するために労力を投下する所がアメリカですね。だからこそ、失敗も多いのですが、素晴らしい成果もあげているのです。こうしたお金の使い方を、日本は良しとしない風潮が有りますが、ミミッチイと断じてしまいましよう。

あのバブル絶頂期の波に乗れなかった日本の科学技術開発、今そのヅケはとても大きなものだと、やっと政府は気付いたのでしょうね。


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