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白い目、緑の目

あるいは、「贅沢な悩みだ」という呪い。自分は客観的に見て「持つ者」なのに、どうして幸せだと思えないんだ、というこじらせの話。


「女子校こじらせ限界ツイ廃オタク」として生きてきた。でも恋愛のPDCAがどこか詰まってる、と言われればそういうことではないし、自分でも自分のこじらせが何なのかずっと悩んできた。そして就活で病み、一旦おやすみすることが本心だと分かりつつも、それを阻む心理的障害があった。でもそれが何か分からなかった。

【自意識過剰】。

ここで使われている言葉が、果たして「自意識」が「過剰」というべきかは分からない。むしろ「俺はこういう人間!」と言い張れないだけ、他人の目を過剰に取り入れてるだけ、自意識過小ではないかと思う。でも間違いなく、私の根本問題はこれだ。

自意識過剰。

この言葉の聞き覚えは中学1年生。私が初めて「死にたい」と口にした、灰色の中高時代、その後も呪いをかけた、あの時である。

要するに。「自分は幸せです」「私が着たいので可愛い格好をします」と胸を張って言えないのだ。自分で勝手に自分に枷を掛けているのだ。ガラスの箱に入れられて跳ぶのをやめたノミのごとく、電流流れるケースに入れられて逃げるのをやめたネズミがごとく。

その呪いがいつのものなのか、それは定かでない。小学生の時の嫉妬からか、やはり中1案件か。多感な中高時代に2chやニコ動に入り浸り、今でもTwitterに浸る人間が、匿名性に隠れた荒らしや叩きを、「これが世間の本心だ」と思い込んだか。

でもそれを考えても仕方ない。過去の原因は定かでないし、過去も他者も変えられない。ならば過去や他者を適度に責めつつ、でも「今の自分」が解決に動かなければ終わらない。それは厳しい言葉かもしれないし、「可能性が未来にある」という希望の言葉なのかもしれない。……そうとなかなか思えないことこそが、メンヘラであり、SOC得点の低さであり、自意識過剰な呪いそのものだというのはそうなのだが。


失敗するのを格好悪いと指して笑うやつは放っておけ。失敗なき成功は「成功」じゃない、それはただの「従来通り」、それすら届かない老衰に他ならない。

他人の人生に「贅沢な悩みだねえ、俺なんてこんな救われてねえんだぞ」と、クソリプするやつはブロックしとけ。それが無理ならせめてミュート。おれの悩みが贅沢だろうと貧相だろうとお前の人生に何の迷惑をかける?

そんな手垢がつくくらい言われたことをできないのは、自分に自信がないからで。「自分の生き方はこれでいいのか」と自分で自分を疑うからで。こういうところに耳を貸すからますます自信がなくなる訳で。

でも自分が、正しくて、順調で、普通で、大人で、やっぱり正しいのか不安だから、人目を気にしてしまうのだ。

大人の言うことを聞くのが、正しい受験の勝ち方だと学んできたから、正しい学校の生き抜き方だと学んできたから、正しいレールの乗り方だと学んできたから、諌言を聞き入れるのが正しいと思うのだ。

人と人とが支え合って人間だ、1人で無人島で生きてる訳じゃないと、そう分かっているから周りをうかがって、出る杭は間違っていて、甘えていて、贅沢で、悪いことなのかと自分を引っ込めるのだ。


白い目、緑の目。

犯罪を犯して懲役にかかることを、それを「ちょっと人生遠回りしたね」と言えるだけの突き放しを。私はまだ出来ていない。

嫉妬とは「自分の居場所が脅かされる、奪われることへの恐怖」だという。嫉妬自体、感情自体に、良い悪いもない、当然な反応だと受け入れることを、私はまだ自分に対して出来ていない。自分にあれこれ言ってくる人に、「私はお前の生き写しとかじゃない」「私の人生とお前の人生の接点はここで終わりなんだから、他人の人生に『正してあげなきゃ』『導いてあげなきゃ』なんて口出しするな」なんて怒れない。

というか私に対して第三者が直接とやかく言ってる訳ではなく、ただ、私は、匿名の第三者がどこかの誰かに言ったことを、自分に反芻させているに過ぎない。これが「社会だ」「世間だ」として。


世間とは、いったい、何の事でしょう。人間の複数でしょうか。どこに、その世間というものの実態があるのでしょう。けれど、何しろ、強く、きびしく、こわいもの、とばかり思ってこれまで生きて来たのですが、しかし、堀木にそう言われて、ふと、これに対して葉三は「世間というのは、君じゃないか」という言葉が、舌の先まで出かかって、堀木を怒らせるのがイヤで、ひっこめました。


自殺は、自分を殺す、というより、自分が自分を殺す。もっといえば「自分に殺される」なのだと、気がついた時に思いました。

自分なんかに殺されたくねえな、と。

じゃあ自分に殺されないために。自意識過剰、「世間」の皮を被った「自分」に押し潰されないように。どうしたらいいのかの鍵は、まだ私は体得できていない。



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