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【連載小説】純文学を書いてみた

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初めて書いた小説です。僕と白杖ガールの心の交流を描きながら、「生きづらさ」について考えました。 しかしながら、純文学ではないような……
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2020年7月の記事一覧

【連載小説】純文学を書いてみた2-1

【連載小説】純文学を書いてみた2-1

前回……https://note.com/sev0504t/n/ncd1fbe135d2c
長男(7才)の将来の夢は「6cmになること」らしいです。
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 朝からの寝覚めはいつもの天井。
 角度ある朝陽が肌を突き刺すほどにまぶしく、空は午後の抜けるような青色を想像させた。天気だけはよさそうだ。

 父はまだ寝ているようだったので朝食の用意をし、一週間たまった洗濯を旧式の

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【連載小説】純文学を書いてみた1-4

【連載小説】純文学を書いてみた1-4

前回…https://note.com/sev0504t/n/nc839c66743c3
連休なのでステイホームで書いています。
コロナが落ちつきますように…

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「おきてるけど?」
「あさって、ちょっとつきあってほしいところがあるんだが、いいか?」

「いいよ」
「大丈夫だよ。行ける」
念のためもう一言僕は続けた。

「そうか、ありがとう」
 父はいつものように言葉

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【連載小説】純文学を書いてみた1-3

【連載小説】純文学を書いてみた1-3

前回……https://note.com/sev0504t/n/n4594cf565e0c
純文学を書きたかったけれど、これは純文学なのか……兎に角がんばります。
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 母の遺品を整理しているときの父は静かだった。それは整理ではなく、むしろごみ出しの用意のようなもので、本当に大事なものがあるかは僕に尋ねてきた。

「なあ、これ母さんのマフラーか?」
「うん。だいぶ前のだね。これ

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【連載小説】純文学を書いてみた1-2

【連載小説】純文学を書いてみた1-2

前回……https://note.com/sev0504t/n/n19bae988e901
読んでいただいた方も多く、本当にありがとうございます。毎週日曜日にあげることをがんばります。

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また別の日、僕は先生に呼ばれた。

「ミキちゃんの家から電話があって、今日はどうしてもお迎えこれないんだって。それでね、今日はお父さんが迎えにきてくれるみたいだから、いい子でま

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【連載小説】純文学を書いてみた1-1

【連載小説】純文学を書いてみた1-1

初めての作品。じっくり育てていきたいです。よろしくお願いいたします。

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 僕がまだ小さくて言葉も記憶も曖昧なときに、母はカール・ブッセの詩を書いてトイレの壁に貼った。

山のあなたの空遠く
 「幸い」住むと人のいう
 ああ、われ人と尋ねとめゆきて、
 涙さしぐみ、かへりきぬ。
 山のあなたになほ遠く
 「幸い」住むと人のいう

 喪失感はゼロではない。

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