【雄手舟瑞物語#1】今日、鬱屈したした部屋の中で(2019/06/23)

日曜日の夜8時。閉め切ったきれいなフローリングの8畳の自分の部屋で僕はギターを弾いている。u-fretという歌詞やコードが掲載されているウェブページを見ながら、自分の声を録音して聴くを繰り返す。福山雅治っぽく、自分の低音ボイスを響かせる。

部屋には、現象学やカント、ギリシア神話、キリスト教、イスラム教、ルソー、メソポタミア文明、サルトル、ポジティブ心理学、書の歴史、シナリオの書き方、新規事業関係のビジネス書、数学的思考法、童話、デイヴィッド・コパフィールド、記号論などが棚に並んでいるのもあれば、ソファーに平積みになっている。入門書が多い。そして、何も書かれていないノート、コピー用紙が机の上には乱雑に積上げられ、筆ペンや万年筆、フリクションボールペンなどの色んな種類の筆記用具が転がっている。壁には、筆ペンで「放下著」と書いたコピー用紙やExcelで作って印刷したオリジナルの三幕構成の表が貼ってある。机の下には、住宅ローンの15年間の支払い計画書の案内が落ちている。

「自分の歌が少しうまくなったぞ」と満足した僕は、ノートパソコンを開く。「ここに何かを打ち込むんだ」と、タッチペンで書いた文字は、

「疲れたなぁ。あのときは次の未来があった。どうやって生きていくか自分で決められた。今はどうすれば良いか全く分からない。」

どんな望まない環境にいたって、これは一時的な状況で、洞察力と創造力に優れた自分には輝かしい完璧な未来が向こうからやって来ると思ってた。だけど、僕がいるこの部屋は本物の鳥カゴかもしれない。


(次のエピソード)

合わせて、僕のいまを綴る「偶然日記」もよかったら。「雄手舟瑞物語」と交互に掲載しています。



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