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「初めまして」を迎えたヲタクは。
運命の2021年11月20日(土)
まずはWithLIVEから
個別イベントが苦手なくせに、しかも生でパフォーマンスを観ていないくせに、八木ちゃんの個別イベントに申し込み、気付けばあっという間に当日になっていた。
まずはWithLIVE、オンラインお話し会で、12時57分から開始の枠だ。
この日は土曜日。普段ならゆっくり10時過ぎに起きるのだが、緊張しているからか6時ごろから何度も目が覚め、結局8時には起きて洗濯や掃除を始めていた。家事でもしておかないと落ち着かないのだ。台本は昨晩のうちに仕上げたが、何度声に出して読んでも納得感がない。伝わるのかこれで、と不安になる。
就活や転職の面接では、台本は作っても、ちゃんと自分の言葉で話すようにしていた。話の大きな流れだけ入れて、あとは場の空気に合わせて話すことが大事だとは理解している。が、今回は面接なんかの比ではない緊張感だ。相手は年下の女性。しかも初めまして。お前誰やねん状態なのだ。向こうも緊張しているだろうし、気を遣わせるわけにもいかない。いや、たぶんめちゃめちゃ気を遣わせてしまうのだけれど。
とにかく1回目なのだし、まずは好きな所を伝えて、応援しているファンがいるよということが伝わればそれで十分だと腹を括る。
とりあえずオレンジ着とく?
家事をしていると佐川やらヤマトやらがCDを届けてくれる。ありがとうございますと受け取り、トレカの開封や到着した個別券の交換を募集していると、あっという間に12時になった。早い。もうイベント開始まで1時間を切っている。というか八木ちゃんたちはすでに他のファンとお話始まっているのか?といらんことを考える。
スマホの位置は確認した。画角や明るさや一旦ヨシとする。あとは服装なのだが…初回だし、メンバーカラーのオレンジを着た方が良いだろうかと考える。私はもともと黒や紺といった寒色系を好み、暖色系はあまり持ち合わせていなかった。よく母や姉に「雰囲気が暗くなるから、たまには明るめの服を選べ」と言われ、気分転換に買ってみるのだが、絶望的に似合わないのである。原色はあり得ないので、パステルカラーの薄めの色味を入れる程度だった。なけなしの薄めのオレンジのポロシャツを着たのだが、やはり似合わない…!いつもの無難な紺色にしようと思っていると「でも、自分のメンバーカラーだと喜んでくれるんじゃないですか?」と友人からLINEが飛んできた。そうだろうか?本当に??いやもう良い!似合わなくて良い!!今日はもうオレンジじゃい!!!と再び腹を括った。
45秒にすべてを懸ける
カウントダウンを間違える
12時52分、いよいよ5分前となり、入室。画面の右上に時間が表示され、カウントダウンが始まった。「これが0になったら、スタッフさんから、見せたいものありますか?って聞かれて、ないですって答えたら八木ちゃんに切り替わって……なるほどね!」と、敢えて声に出しながら状況を確認した。緊張に緊張が重なり、何か口にしていないと間が持たない。ヲタクの諸先輩方はオンラインお話し会の前はどうやって過ごしているんだ?みんな緊張しないのか?
台本を読み、「八木ちゃんこんにちは」と声に出していると、右上の時間が「0:59」になる。うおおお、あと1分切った。咳払いし、とにかく大きな声で挨拶をしようと、もう一度「こんにちは!」と練習の声出しをした直後だった。
「はい、見せたいものございますか?」
突然画面がつながった。え!あと1分あるんじゃなかったっけ!?と脳が揺れる。鼓動が高鳴り、どうしようもなくなっている中、なぜか先に言葉が走った。
「いや!ないです!」
え?自分、今、しゃべった?とどこか俯瞰から見ている自分が叫ぶ。え?何が起きた?ちょっと待って。大丈夫か?大丈夫じゃないよなこれ??バグ??なにが???
スタッフの声から1秒もなかったと思うが、画面が切り替わり、スマホ画面に、その人が映った。
「こんにちは~」
そこには、「約束・連絡・記念日」の衣装をまとい、両手をひらひらと振る八木ちゃんの姿があった。ひぃぃぃ本物ダァァァァと一気に脳が沸騰する。待って可愛いな?え、可愛いな??え?どうしよう??
いやそんなことよりも伝えたいこと伝えなきゃと、「はじめまして!」とバカデカボイスで挨拶をする。
「しぇ、せ、雪月花と申します!」
噛んだ。終わり。しかも「申します」ってなに???
いや、終わるわけにはいかない。
「八木栞さんの歌唱動画を観て、凄く気になって」と言葉を紡ぐと、画面の向こうで「え、嬉しいです~」と声がした。まずい、八木ちゃんの声が聞こえにくい。急いでスマホのボリュームを最大まで上げつつ、必死に言葉を発していく。
歌唱動画からファンになって、つばきで一推しになった。パフォーマンスを観れてないから新メンバーイベントに申し込んだ。と一気にまくし立てた。なんて余裕がないのだろう。しかし、そのたびに八木ちゃんはパァッと明るい顔をし、「嬉しいです」とまた音の鳴らない拍手をしてくれる。可愛すぎる。
「あ、あと!今日、リミスタも当たったので」と伝えると、またパァッとなり、「ありがとうございます」と返ってきた。そこで画面が閉じた。気付けば45秒を使い切っていた。すなわち、「お時間です」。
なんだこれは!?
圧倒的な情報を一気に叩き込まれてしまい、何も追い付かない。そのまま床に倒れ込んだ。え?諸先輩方はこんなの何回もやってるのか?すごすぎんかヲタク…いやアイドルが凄いのか??え?現実???
とりあえずメモしましょうね!
ごろんと転がり、真っ白い天井を眺めた。何が起こったのかを、脳がようやく処理し始める。喋ったよなぁ…八木ちゃんと……。深く息を吐きながら、「あーーー」と声を出す。喋ったらしい、どうやら。本当に?処理がうまくいかないのか、現実と夢とのはざまに居る感覚だった。
ふと、友人からの「お話が終わったら、忘れないようにメモするんですよ」という言葉を思い出し、スマホのメモ帳を開いた。誰に見せるでもないが、できるだけ会話を再現したく、記憶があるうちに、無駄に「えー…あの」といった言葉も書き起こす。すると、脳内で八木ちゃんの声が再生される。心臓が跳ね上がる。なんだこの破壊力。イチイチ人の話すことに「うんうん」と頷いてくれた八木ちゃんが思い起こされる。可愛すぎんか?
「はぁぁぁぁぁ」と、何の感情かもよく分からないままに声を出し、とりあえず友人に終わったよと報告LINEを送った。すると、入れ違いのように母から電話が来た。これは今回の件に全く関係ない世間話の架電だったのだが、思い返すと、オンラインお話し会の最中にかかってこなくて良かったなと心から思う。もしそんなことになっていたら、母を恨むところだった(筋違いである)。
ヲタクはすぐに反省会をする
WithLIVEが終わり、今回の敗因(?)を分析することにした。
まずは時間の読み違えだ。これは完全に私が悪い。前日にも「0:45」になったらスタッフの声掛けが来ると確認したはずだ。だが、直前になり、「0:00」になったら始まると勝手に勘違いをしたのだ。確かに、カウントダウン方式にも見えるから勘違いするのも無理はないかもしれないが、結果的に準備が整わないままに繋がってしまった。実に無様である。醜態をさらしている。
次にボリュームだ。最大音量にしないと八木ちゃんの声が聞き取りづらかった。これは後で友人も言っていたが、音量を大きめにすることが推奨らしい。これは初めての参加の学びでもあるからまあヨシとする。
人によって分かれると思うが、私としては、台本は絶対に必要派だ。一言一句文章に起こすことをせずとも、話したいことを箇条書きでまとめておかないと、本番一発勝負では太刀打ちできない。そういう意味では今回台本を作っておいて良かった。想像以上に、メンバーが登場した時の破壊力は凄い。いきなり画面に現れたかと思えば可愛い声と笑顔で手を振ってくれるのだ。そんなのありか?ありなんだろうな、WithLIVEなら(?)
あと、「見せたいものありますか?」というスタッフの声掛けと同時に、注意書きが書かれたスケッチブックも画面に映る。馬鹿正直にそれを読もうと思っていたらすぐに画面が切り替わるので、あれは「出してますよ」という意味合いもあるんだろうなと勝手に納得した。これもひとつの学びだ。
結論、WithLIVEは1枚で良い。こんなの何回もやっていると身が持たない…ヲタクの諸先輩方を尊敬するよ、本当に……。
待機時間、相手からは見えているらしい
WithLIVEは1枠45秒程度と決まっているため、次のヲタクに繋がるまで15秒程度ある。その15秒、あるいはもっと短い間隔かは不明だが、アイドル側からヲタクのことは見えているらしい。
これを知ったのは、2022年1月24日(月)の清野桃々姫ちゃんのブログだったのだが、読んでいて発狂したのを覚えている。
少し考えればそりゃそうだろうと気付くのだが、「こんにちは!……やぎ、八木ちゃん!八木さん!…違うな…八木栞さん……いや呼びづらい」とか一人でぶつくさと練習していたのが八木ちゃんにも見えていたのかと気付いて悶えたのはまた別のお話。。
名前を呼ばれる嬉しさ
リミスタは16:30から
WithLIVEを終えてから、軽く昼を食べ、洗濯物を畳み、夕飯の買い出しに行きと、家事をこなしているとあっという間に夕方になった。よくよく考えれば、リミスタに当選するのも今回が初めてだった。メンバーが色紙にサインとファンの名前(ニックネーム)を書き、それ読み上げて、ファンから質問やコメントがある場合にはそれに応えてくれるというものだが、これ、凄いことだなと改めて思う。先ほどのWithLIVEと違い、1人1人にかける時間はバラバラで先輩メンバーは慣れているのか比較的早いペースで行うが、新メンバーはまだ時間がかかる。特に八木ちゃんはかなり遅い方で、以前行った時には、予定していた1時間(2人で1時間)を1人で使い切るという大物感を出していた。キャップをイチイチ開け閉めするから時間がかかるとか、一言コメントに時間をかけてしまうとか、そういった場面をアーカイブで見ていたが、根本的にマイペースだと思う(笑)あとから怒られたりしないだろうかとちょっとハラハラしたが、まあ、これも八木ちゃんっぽくて良いのでは?と甘やかしてしまうあたり、モンペだなと自覚した。
推しの口から聞く名前
この日は浅倉樹々ちゃんとペアの八木ちゃん。先に書くのは八木ちゃんである(恐らくスタッフの配慮)。開始早々「キャップは遠くへ置いておく!」と宣言したものの、いつものくせでサインを書いた後にキャップを閉じようと探してしまったり、手が止まってしまったりと、後半に樹々ちゃんが頑張る展開を演じる八木ちゃんであった(笑)
リミスタは、自分以外の当選した他のファンの質問に答える場面もすべて配信されるので、そこで色々な話を知れるのも良い。八木メシの話やら、好きなソロパートの話やら、それこそ演技でやってみたい役など、ブログでは書ききれないような話が聞けて面白い。先輩メンバーとの絡みも楽しいし、ガッツリではなくとも流し見だけで十分楽しいコンテンツだ。当選しなくてもこれ楽しめるなと思っていると、樹々ちゃんの口から「続いて、雪月花さん」と呼ばれた。ウヒィッと部屋で変な声が出る。私の書いたコメントを読み上げる樹々ちゃんの横で、一生懸命にサインを書く八木ちゃん。そしてカメラに向かって色紙を見せて
「雪月花さん!」
と笑顔を見せてくれた。
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腰が砕けて終わり。
あれか、スパチャとかして配信者を推す人ってこういう気持ちなの?とかまた訳の分からないことを思いながら悶える。可愛い。嬉しい。ニヤニヤが止まらない。助けてほしい。
緩みっぱなしの口元を抑えつつ、また天井を仰いだ。凄い1日だな今日はと振り返る。
今度、本人に会うんだよな…大丈夫か……と考えたが、時間は待ってくれない。
初めての個別イベント、そして初めて八木ちゃんのパフォーマンスを観る新メンバーのお披露目イベントまで、残り3週間を切っていた。