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長女は生贄

私は長女との関係が良くない。良くないが、嫌いではない。そして嫌いではないが関わりたくない。血縁とはそんなややこしさがあります。

さて、私の父は相当な酒乱でした。休みの日には朝から酒を飲み、ぐちぐちと文句を垂れ始め、最終的には暴れて終わります。
休みの日は1日が長いかった。
もちろん平日も帰って来ると風呂に行き、飲み始め、ぐちぐち始まり暴れて寝ます。
なので、父が仕事から帰ると、家の中の空気がピーンと冷たく張り詰めました。
酔いが回ると、母親にダメ出しを始めます。母親は頭の悪い人なので、聞き流せばいいのに口応えを欠かしません。そうなると、当然父が母を殴り始めます。
一通り殴るとまた飲み始め、子供達に話を振ります。
母親は飲み始める前の親父にあらかたの子供達の話を吹き込んでおくのです。吹き込まれたネタの中から、わざわざ気に食わない項目を見つけては、子供達を殴ったり、クドクドと、このままでは未来はないと脅したりする訳です。

母親は、事あるごとに特に長女の風呂が遅い、学校の帰りが遅いなどの文句を父に告げ口をしていました。それは自分が殴られる予防だったんだと思っています。

長女は先に生まれてしまったせいで、八つ当たりには格好の餌食でした。しかも、親が期待しがちな才能に恵まれていた。

成績優秀、運動神経もなかなか、絵画や作文などの才にも長けていた。何より真面目だったのだが、ADHDやASDのまあまあ重篤な感じがあった。
だから、つっ込まれネタは満載だったと思う。

絵が上手い長女は、しょっちゅう絵画で賞を取り、県内の1番立派な美術館に受賞作画を展示されたりしたのだが、貧乏なので、美大への進学を諦めさせる為に、父は長女の作品にいちゃもんを付け、怯えて小さく丸まった長女の身体を竹刀で何度も痛めつけ、足で蹴り、背中を踏みつける姿は今でも目に焼き付いていて、同じ事を親父にもしてやりたいくらいです。(もう死んだけど)


母親はかばうでもなく、部屋の片隅に正座をして事が終わるのを待っているか、淡々と洗い物をしたりしていた。

余談だが、家のテレビの裏には常に2本の竹刀が立て掛けてあり、父はいつでもその竹刀で家族を痛めつける事ができるようにしていた。父は時代劇の殺陣が大好きだったので、子供達に剣道させたくて道具を揃えたけど、習わせる経済力がなく、家族を打つだけの道具になったと思ってる。

おそらく私だけではなく、私達姉妹はみんな毎日この立ち回りを眺めながら、親父をどうやって確実に殺してしてやろうかと考えていたと思う。
完全犯罪の想像でもしてないと生きてられなかったと同時に、こんな奴殺して人生を棒に振るわけにはいかないとも思っていたから、私達とっても賢い。

今思うと、長女は毎日欠かさず殴られるか罵られて生きてきた訳だから、やっぱり性格に難がある。会うと腹が立ってくる。
でも、そんな理不尽な人生を歩まされたのも知ってるから、距離を保ちつつも長女の幸せを願って止まない。

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