MADテープと素材集め
MADテープを作る時に一番大変なことは何か。
それは、切り貼りの作業そのものではなく、「素材を集める」ことである。
NEW MAD TAPE を聴いていて、「よくもまあこんなマイナーな歌を探してきたものだ」とか、他の何らかの機会に「あっ、この歌、NEW MAD TAPE で知ってたあれだ!」とか思ったことが皆さんにもおありだろう。
NEW MAD TAPE 作者のすごかったところ、特に作成当時(1980年代)としてすごかったのは、その元歌ストックの膨大さである。
今でこそ、マイナーアニメ、クラシックアニメの主題歌でも、YouTube でいくらでも聞くことができるが、当時はレコードを持っていなければどうしようもなかった。90年代くらいから、古いアニメや特撮の主題歌集CDやビデオテープが出回るようになったが、80年代ではまだだろう。
その時代に、「風のフジ丸」の主題歌とか「すきだっダンガードA」の英語版とかのレコードを持っているというのは絶対的なアドバンテージだったと思う。
素材で入手が難しいのは、歌だけではない。セリフもまた入手が難しかった。
ヒットしたアニメ映画であれば、セリフが全部入ったLPレコードが発売されることもあったが、そんなのはごくごく一部である。
基本的には、テレビで再放送されていたものを録画して、そこから使えそうなセリフをカセットテープに落として、それを素材として切り貼りする、という手順になる。
あるいは放送から音声だけを録音することもあったろう。いずれにせよ、すさまじく労力と時間がかかる。
NEW MAD TAPEの「ヤマト劇場」には、「宇宙戦艦ヤマト」「宇宙戦艦ヤマト2」などのテレビ番組からの音声が使われているから、彼らもそういう苦労をしたのだろう。
私が90年代に「接続の妙」を作るために作った「素材テープ」は、A(Aachen)からV (Villach) まで60分テープで23巻(頭文字に該当するドイツ圏の都市の名前をつけている)。
それに加えて、テレビ埼玉の再放送から録ったガンダムの全話分の録音テープ。ガンダム映画三部作のテープ。イデオン発動篇のテープ。「さらば宇宙戦艦ヤマト愛の戦士たち」の音声ドラマのテープ(市販品)。主題歌を集めたテープ17巻、うち相当数がテレビ番組から落としたもの。などなど、かなりの数の資料カセットが「接続の妙」の母体となっている。
現代では、ネットのどこかしらに落ちている動画を拾って音声を抽出すれば済むので、素材集めにかかる労力は大いに低減されている。
新しくMADテープを作ろうとする皆さんのハードルはかなり下がっていると思うので、どんどん新作を作ってもらいたいと思う。