息を合わせて手を取って、あなたと踊る夢を見る ミュージカル憂国のモリアーティOp.3 8/7マチネ配信感想

アテンション
SWのオタクがつらつら語っている。
Op.3、本誌最新話、最新刊のネタバレとかなにも配慮していないぞ、注意してね。
そのうちなんか追記するかもしれない。

まずはじめに


無事の開幕本当におめでとうございます。そしてこんな最高の舞台を見せてくれて本当にありがとう。
同じストーリーの舞台がつい一週間前までやっていたことに何か揺らいだりする事無く、モリミュらしいパワーアップの仕方をしていて本当に面白く素晴らしかったです。
そう、素晴らしかったんだけど、あまりにもモリミュの方向性が貫き通されすぎてて「こんなものを本当に作っても良かったの!?」と観劇中ずっとおののいてたよ。ようやるわ。
モリステはスタンダードな原作再現メディアミックスだけど原作通りかというと違って、モリステ特有のものがあるよね~またそこが面白さで、みたいなことをほざいてましたけどモリミュくんは己の道をアクセル全開で突き進んでいきましたね……特有どころの話じゃなかったよ。いや、Op.3ができる論拠は決して妄想や脚本のごり押しなどではなく原作とOp.2にあるなってことは分かるけどさ。「俺は俺の道を行く!」の勢いが強すぎて「そこまでされると冷める」「そっちに行かれると好みじゃない」という層も一定数出てくるような鋭角っぷりでしたね。まあ同時にOp.2どころじゃなく情緒を狂わされる層も厚い気がしますが。


諸々つれづれ


本命語る前にいろいろ

兄様のソロ本当にやばかったですね。聞いてるときずっと脳内を「ドミネ・クオ・ヴァディス(主よ、どちらに行かれるのですか)」の文言が回り続けてたよ……
兄様も大佐と同じくウィリアムが背負おうとしている重責(十字架)を分かち合い共にゴルゴダの丘を行こうと決めて傍にいようとしているんですよね。まごうことない強く温かな愛情。始まりの契約を持ちかけたものとして、ウィリアムを愛する兄として全てを捧げるに等しい想いを抱いている。
それを目の前で聞きながら兄様の言葉から微妙に論点ずらした答えを返すウィリアムが本当にしんどくてなりませんでした。その命を受け取ると答えられない、それはウィリアムの愛し方ではないから。思えば相手の望む形で愛を返そうとする人少ないね?自分の愛し方を貫く者の多いこと。だからウィリアムは望まれても誰も道連れにしようとしない(心はしっかり受け取っている辺りが本当に手に負えないんだけど……)、シャーロックは手紙で願われた通りの英雄にならず共に橋から落ちる、兄様は一人幽閉を選ぶ。そんな中で兄に願われた通りに新しい世界で前を向いて生きていくルイスは本当に強いし兄強火の真骨頂だよ。再会したらちゃんと褒めてあげてくださいねお兄ちゃん。

ジョンくんはいつも最高だけど、Op.3は輪をかけて素晴らしかったです。語り部としてイントロダクションで一番最初に話し始める(旋律に合わせず、という意味で)ところに早くもグッと来てました。そしてドワイト医師の無罪を信じる何てことないけれど何より強い正しさ、夫人を気遣う優しさ。春の日差しのように優しくまばゆい光属性の、しかし非凡ならざる一市民なジョンくんだからこそ主任警部に抗議する言葉が美しかった。本当に得がたい人だね、早くシャーロックと再会できたらいいね。

ボンドくん、夢女になるでしょかっこいい。本当にかっこいい。変装姿もかっこよかった。牢に入って中からやすやすと出てくるのはOp.1のシャーロックっぽくてニヤッとしましたね。軽妙で聡明で有能なスパイ、最高。

レストレード警部、Op.1の願い通り見せ場たっぷり大活躍。いつもは三枚目気味な人の活躍回はいいものだ。主任追求のところは初演の研究思い出す感じでまた良かった。でも人形劇アンサンブルの語彙力がなさ過ぎて「すごい!モリミュアンサンブルでこんなに語彙力のない歌を聞くことになるなんて思わなかった!」と変な感動を覚えました。歌がめちゃくちゃ上手いから余計面白くなってたね。キャラメルマキアート飲みたくなりました。

パターソンさんめっちゃ足長いしできる男の色気がすごかった。ウィリアムに忠誠を誓った思いの熱さが歌からビシバシ伝わってきて良かった。あとジジイ呼びしてわいわいしたところニコニコしました。

アータートン主任、まっすぐに悪いやつなのですが「体制の平穏を守ること」が正義だと信じていた男なんだな、と彼なりの正義を歌声から感じました。それは貧民街の住人を数に数えず真実を捻じ曲げてまで作る歪んだ平穏だから間違いでしかなかったけれど。
冤罪をふっかけてでも事態を落ち着かせ平穏を塗り込める、そのやり方の初めの頃にミルヴァートンに付け込まれて脅迫され過激な方法にどんどん転落してしまったりしたのかな。

すっごい魔王じみたミルヴァートンが出てきて本当に原作の出オチフラグ建て職人犯人の犯沢さんは何だったんだ……となったよ。歌詞覚えてないけれど堕落へと誘惑する「蛇」の連想でメデューサを思い出すような歌詞を歌っていたあたりに強者感がありました。甘く柔らかいウィリアムの風の歌を踏み散らかすような現れ方が最高に悪辣でゾクゾクしたよ。ウィリアムとシャーロックと対決するOp.4が楽しみ。
カテコでウィリアムとシャーロックの間男ポジションになってたのは笑った。

今回のアンサンブルやヴァイオリンはだいぶ前に前に来るような音楽で(そりゃ内戦一歩手前とか怒りの声とかだから前面に出るのは当たり前なんだけど)、緊張感があって攻撃的だなって思いました。息つく暇がない。ピアノも今までよりちょっとテンポが速めだった気がします。このままではいけないという焦燥感が常に漂っている感じだった。だからその分学生の時の明るい爽やかさがキラキラしていたように思いますね。

他のみんなは追記したくなったらします。


さて本命


今回のウィリアムとシャーロック、「特別な思いを抱いている」とか「入れ込んだらつらい思いをするのはお前だ」とか油断する隙もなくどこのラブロマンス語録だという言葉で彩られまくっていて目が回るかと思いました。強火がすぎる。

氷の塔に自分を閉じ込めて何にも誘惑される事無く己の定めを受け入れようとしている姫が感じた温かな風とかいう特大メルヘンぶち込まれてもうどうすればいいの?初恋の少女の可憐さがこれ以上ないほどウィリアムに備わっていてもう訳が分かんないです。俺たちのディーヴァがこんなにも清純派ソプラノヒロイン……。
まあ少し正気になるなら、計画を決めた時から氷の部屋の時は止まっているのでウィリアムの心の中は大人になるしかなかった子供のまま時を止めているんだよな。そりゃ印象の感触が幼げにもなるというか……。
ともかく、己の宿命からも終焉からも逃げ出したりなんてしない、それでも心の中で想うことだけなら、この頬を撫でる温もりを恋い慕うだけなら神様も許して下さるはず、なんてもう思い慕う心を抱え込む少女の初恋じゃん!!!と天を仰ぐしかできません。思索の中では自由なんだをこんな形で変奏しないでください心臓が飛び出ます。

疑似ダンス、二人のダンスパートナー概念(正確には最後の事件タワーブリッジ上の出来事を橋の上の踊り子再演と読んだところから始まるダンス比喩)をちょくちょく考えてる私にクリティカルヒットすぎて叫びかけたよ。なぁにあれ。まだシャーロックは犯罪卿の手の平の上を出られず、また出てしまってはならないと推理して踊らされるしかない無念さが強烈だった。無念さは都合のいい嘘を口にする声音にも出ていて、シャーロックが何を思っているのか分かるから一緒にもどかしさを募らせちゃうね。そういうお前を追いかけたい、追いかけてしまえば(真実を暴こうと手のひらの上から出てしまえば)人々を守れないという葛藤の苦しさが積み重なっていったからこそ「Did I pass your test?」の意味合いがめちゃくちゃ深くなるんだな。数学のテストはゼロ点だったけど亡霊と狂騒曲で取った行動は満点だったよ……

「よおーリアム!」の声の喜色満面っぷり本当にすごかった。列車の時よりさらに強くなってたね。それに対する「ホームズさん?」の驚き方がまーーた可愛らしくて心臓の負担がやばい。ミュのウィリアムはびっくりした時の仕草が本当に愛らしい。
冤罪事件の説明を同時並行したり、ビルを説得しようとする時に同じ言葉を言おうとして相手に譲るような感じになっていたりしたことが「同じ思考速度で同じことを考えられる人」の示唆っぽくてときめきました。ウィリアムに遠慮して遠ざかるビルの背中を叩くシャーロックと最後にちゃんとビルを抱き留められたウィリアムのところ本当に良かった……。歌もかつてないほど爽やかで、広がる地平線の明るさと自由さがまんま音になっているのが素晴らしかった。
でさあ、義賊問答のウィリアムの答え方がさあ、あんな泣き笑うような声音でもう情緒ひとたまりもなかったです。それだけ思ってもらえることが嬉しくて、死んでほしくなくて、罪深い身には分不相応で、愛おしさに揺れる万感の思いがこもった声だったよ。

ラストナンバー……あの、うん。手を伸ばすけれど掴めずにすれ違うのなんてほとんど悲恋もののカップルの演出なんですよ。本腰入れてロミジュリぶん投げてこられてもう満身創痍です。操り踊らされる関係から互いに手を伸ばすけれど掴めない関係に進んだ(終わりが始まったんだけどさ)二人が、最終的に「握った手を、俺は絶対に放しはしない」「つかまえて、はなさないで」に行きつくんだろうなー!という道筋が見えてもう情緒がめちゃくちゃ。すっごいいい感じにラスボス感たっぷりで登場したミルヴァートンとの対決が楽しみだねしんどい!

ウィリアムにとってのシャーロックが氷の部屋に柔らかく吹いた風、氷を解かしてしまうただ一人だとしたら、シャーロックにとってのウィリアムは退屈の空虚で荒れた大地を潤す水なんだろうなってラストナンバー聞いて思いました。氷(雪)が解けたら春になる。雪解け水は大地を潤す。お互いに向ける思い、お互いから得たものでゆっくりと変わる二人の内面をこんな美しい表現でまとめるの本当にやばい。氷が解けてしまえば誘惑される心を閉ざすことはもう出来ないし、水を得た大地は緑を育む揺るがなさを見せるんだ……あぁ、二人の地平……。

重ねた手と息を離さず最後まで踊る、いや踊り終えてなお手を放さない、そんな二人のラストダンス(最後の事件)が見られる日を心待ちにしております。

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