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劇場用作品「Workersワーカーズ!」を創った理由と、実現に至る奮闘いろいろ
瀬戸内サーカスファクトリーは、サイトスペシフィック(環境とつくる)作品から始まった
なぜサイトスペシフィックだったのか?2011年に瀬戸内・香川に移住した当初は無我夢中すぎて、そこまで詳細なビジョンを描けていなかったのは事実だ。
ただ、1990年代のフランス「ヌーヴォー・シルク(新しいサーカス)」では、工場や廃墟、倉庫などで、錆びて打ち棄てられた農機具や日用品などを再利用して、キッチュな舞台美術を作ったり、
古い家具が空中ブランコのように宙を舞ったり、
なんだか、”景色”と切っても切れないものだったのだ。それをものすごく格好良いと思ったし、私も鉄錆びたものに憧れた。
なので、2011年に初めてオリジナルの現代サーカス「100年サーカス」を実施する会場は「古い倉庫みたいなところ!」と周囲に言って回った。
そのなかで、なんと現役の鉄道会社の整備工場(ことでん仏生山工場)を2日間借り切って、泡沫のサーカス工場に変貌させたのは、今思い出しても破天荒で、最初だから許されたような事業だった。
その後は、文化財、山の上、森の中、ビルの上、駅、葡萄畑、オリーブ畑、お寺の中、砂浜…ありとあらゆる風景に入り込んでいったのが、私の創造するサーカスだった。
始めるために、できるところから始めた。
そうした風景が好きだったのは事実だが、現実的な事情も大きかった。サーカスをさせてもらえるところ…
劇場はなかなかハードルが高いのだ。
お金の問題もあるが、ハード面での不自由さもある。
日本の劇場では、舞台上部にたくさん吊りもの(たくさんのバトン、反響版などが、上空にびっしり並んで吊られている)があって、本来、上からロープをおろしてきて自由自在に振りたい空中芸は何一つできない。
反響版に当たってしまう、バトンや構造は人を吊るためのものではない…などなど、もっともな理由が山ほど。
それを押してまで、サーカスをする気力も湧かなかった。それよりは自由に、外で!歴史ある建物で!と飛び出していった。
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