やさしい眼差しの日常風景と緻密な構図・・・「手紙を書く女」(ヨハネス・フェルメール作 1665年頃)
<「美の巨人たち」テレビ東京放映番組<2017.2.25>から主な解説より引用>
故郷であるオランダ・デルフトで、43年間の生涯のほとんどを過ごしたフェルメール(Johannes Vermeer 1632〜1675) 生涯に描いた作品は、わずかに30数点のみである。
「手紙を書く女」(ワシントン・ナショナルギャラリー所蔵)は、構図や、色の使い方などが綿密かつ周到に計算し尽くされた上で、描かれている。
17世紀のオランダでは、郵便制度が発達。識字率が高いこともあり、当時手紙を書くことが大流行したことも、手紙をモチーフにした作品が多い背景にある。
フェルメール独特のやわらかな色彩感覚。サテン地のガウン、白い毛皮の温もり、穏やかな微笑みと無垢な眼差し、左手から差し込む光・・・ポワンティエという点描技法、絵の具が乾かないうちに、絵の具を塗り重ねるウェット・イン・ウェットの技法などが、ふんだんに駆使されている。こんなに釘付けにされてしまう絵画の秘密には、フェルメールによる、「構図の魔術」ともいうべき計算が読み取れる。
画面全体から見て、机の幅は1/2、高さは1/3、背景にかかっている絵画の幅は2/3、高さは1/3、女性の腰掛けている椅子の高さは1/2というように、比率に準じて描くことで、安定感と心地良さが生まれている。
さりげない日常の一瞬を、見事に切り取り、輝かしい、かけがいのない一瞬を、絵画に留めている。
ところで、描かれている女性は一体誰なのか・・・手紙を書く手を止め、ふとこちらに目線を向け、見つめている瞬間は、フェルメールの妻カタリーナとされている。
<番組を視聴しての私の感想コメント>
私が惹かれたのは、構図の巧みさもさることながら、「色彩」の美しさ、「色合い」の暖かさだろうか。「色彩」について考えてみると、好みにもよるが「原色」と、淡い色である「パステルカラー」が思い浮かぶ。
春の今の季節が、「桜色」に象徴されるように、季節感としてのパステルカラーは、この春にしっくりと馴染んでいるように映る。
「原色」である「真紅の赤」や「海や空の青さ」は、サルバトール・ダリや、なぜか夏の季節に似合うといったように。そんな色彩を意識してフェルメール作品を観てみると、やはり季節で言えば、「夏・冬」よりも、「春・秋」を彷彿とさせる色合いの作品が、主流にように映るのである。
さりげない、かけがいのない日常生活の一瞬を、どうしてこうもアートなまでに、心地よく、まさにさりげなく描けるのであろうか。謎めいた「ストーリー・物語」を埋め込んでいるようにも映り、二重、三重に、鑑賞者の心の片隅に、残影、残響として残るのであろうか。
写真: 「手紙を書く女」(ヨハネス・フェルメール作 1665年頃)「美の巨人たち」テレビ東京放映番組(2017.2.25)より引用転載