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裏側世界/第一話


(※この物語はフィクションです。ライターのセトセイラが送る小説です。)


「正直、めちゃくちゃタイプなんだよね。俺と付き合わない?」


目の前にいるイケメンから、出会って6時間後に告白をされた。


年齢30歳・年収3000万・所有する車は3台・職業経営者・顔はイケメンでおまけに優しくてマメな性格であるという非の打ち所がないハイスペックな男。


そんな彼の欠点は、妻子持ちであるということだ。



私は今年で29歳なる。名前は桜。



私は、高校生の頃から既婚者から告白される事が多かった。

習い事先で、大学の教授から、仕事先で、飲み会で・・・

ある時は、学生時代にやっていたアルバイト先でオーナーに迫られ、断った結果、お店が潰れるという大ごとになったことがある。



私はごく一般的な家庭で育ち、両親はとても仲が良い。

そのため、大人になった時に出会う男たちの『裏の顔』とやらに絶望を隠せなかった。


どの人も、表向きでは夫婦円満。

奥さんが妊娠したばかりなんて家庭でも、男たちはおかまいなしだった。

facebookやInstagramで旦那との華々しい生活をアップしている奥さんを横目に、私は隣の男をじっと見つめた。



幸せって何だ?

恋愛って何だ?

付き合うとセフレの違いは?



私は、高校生の時から世の中の男は例外なく気持ちが悪いと思っていた。

それと同時に、私はどうしても男という生き物を蔑んでしまう自分が嫌いだった。

『そうじゃない人もいる』その言葉を希望に、ここ何年か恋愛に向き合おうとしてきたがなぜか私の周りにはまともな男はいないらしい。


そして、この日。

いつも仕事でお世話になっている人たちの親睦会に顔を出した時の出来事だった。


彼の名前は、原田さん。

彼と出会ったのは初めてだったが、奥さんとは交流があったので親近感が湧いてしまった自分を殴りたい。


そして、いつもの事ながら私は男という生き物に絶望を感じていた。

世の中には、やっぱり信用できる男なんていない。

そして、高校の時から12年経った今でも既婚者から迫られる自分自身に私は疲れ果てていた。


奥さんは毎日のように、Instagramで旦那さんとの夢のようなもの生活をアップしていた。

世の中の幸せは、本人が無知だからを前提に成り立っているのだろうか。


「奥さんがいながら、普通に誘うんですね」

お決まりの嫌味を言うと、原田さんはこんなことを言った。

「一度きりの人生、やりたいように生きる方が楽しくない?」

それっぽいことを言ってはいるが、だったら何で結婚したんだよって感じだ。

「じゃぁ、結婚しない方が良かったんじゃないですか?」

「まぁねぇ。結婚したかったってより子供が好きって感じなんだよね。」


原田さんは、くしゃっと笑った。


この人、本当にモテるんだろうなぁ。

もちろん、悪い男か良い男かで言ったら確実に悪い男だ。

しかし、この世の中のモテる男は決まって余裕があるし、自分から声をかけられる男だ。



私は、原田さんのような人間が大嫌いだった。

私はこういう男たちによって、恋愛不信に陥ったのだ。

こんな男たちの裏側を一生見ずに、普通に恋愛をすることができたら私の人生はもっと違っていたのだろうか。

私だって、本当は1人の人をちゃんと信頼して愛してみたい。

1人の女として、恋愛を楽しんでみたい。


人並みに恋人がいたことはあるけれども『どうせ信用なんかできない男と付き合う』のだから、と究極にモテない男ばかりを選ぶようになっていた。

いわゆる、人として少し問題があるシリーズだ。

普通の人は、どうしても裏側の世界があるように思ってしまって友達以上の関係を結べなかった。

『信用できないかもしれない人間』よりも、『断定的に信用できないと分かりきっている人間』の方が楽だった。



・・・

・・・・・・なんで、私こんなに男嫌いになってしまったんだろう。


再び自己嫌悪に包まれた。


・・・ふと、私の頭の中にアイディアが浮かんだ。


一度、この男と付き合ってみたらなぜ私には既婚者ばかりが言い寄ってくるのか分かるかもしれない。

敵を知らなければ、私は変われないのかもしれない。

そう、これは未来の幸せのためだ。

12年間軽蔑し続けていた世界の先へ、私はこの日一歩踏み出す決意をした。


「いいですよ。付き合いましょうか?」

人間の裏側の世界が知りたくて。

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