死と生の間に生きる 3
俺は反転世界の隙間から手を入れ、大丈夫そうなのを確認してから、全身入れて通り抜けを試みる。
まず、手だけ現世に出す。
手を開いて閉じて、異常ないか動かす。
特に異常が見られなかったので、今度は片足だけ出す。
これも問題なく、足は残っている。
せーので身体全身を出すと、塵のように崩れていく。
慌てて、隙間に戻る。
やはり、核を持っていない妖怪が現世に行くと身体を保つことができない。
核はある程度の能力と力がないと手にできない。能力も力も持ち合わせのない奴らは人間を騙して、身体を手に入れでもしないと現世に出れない。
隙間から現世の場所を把握する限り、人気のない、猫ばっかりの場所。
屋根に雨が当たる音がうるさかった。
「あーあー、うるせー」
人が住んでもないような所、叫んでも誰にも聞こえやしないだろう。
遠くからびちゃびちゃと音を立てて、何かが来る。
どうせ、また猫だろう。
隙間から頭を出し、周囲を見渡してから反転世界に戻った。
隙間はどこに繋がっているか分からず、入ったところと出るところがチグハグだ。
出た先は廃材置き場。
こんなことはしょっちゅうだ。
駅の方面へ歩いていると、職員が慌てていた。面白半分で様子を見ていると、百目鬼を連れて女が商店街へ向かっている。
気配を消して、後を付けていくと、案内所に入っていった。
気づかれないようにこっそり中を見ると、中学生くらいの男子学生が居た。
頭に輪っかがない限り、死んだわけでも死にかけただけでもなく、単純に生身で迷子になったらしい。
これはチャンスだ、生身の人間が通れるところは一箇所しかない。
そこに先回りすれば、身体を乗っ取れる。
先回りし、小道の竹藪の筍に変化して待っていた。
暫くしてから奴らは小道を通っていく。
女と目線があった気がしたが、気のせいだろう。第二の鳥居に行く前に襲うしかない。