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選択的夫婦別姓について考えてみた
最初に民法の一部改正の法案要綱が答申されたのが1996年。
30年近くも経つのにまだ揉めてるってどういうこと? というのが率直な感想だ。
国民の賛否は時期や世代などによって異なるようだし、質問の仕方によっても変わるようなので、賛成が多数だから法案を可決すべきなどと一概に言えないのかもしれないけれど、「選択的」なのだから、そもそも賛否を問う必要があるのだろうか?とも思う。
夫婦、家族は同じ姓を名乗らなければならない!と思う人は同姓を選択し、そう思わない人や諸般の事情により同姓にする(姓を変える)と不都合が生じる人は別姓を選択すればいいだけの話ではないの?
あと、妙だと思うのが、小中高生などにアンケートを取ったら同姓を支持する割合が高かった、と言って別姓に異を唱える人たち。まだ世の中のことがよく分かっていない人たちに意見を聞いてもあまり意味がないと思うのだ。
小学生の頃、夏休みにはいつも母の実家に長期滞在した。実家の苗字が自分たちと違うことにまず驚き、母の妹はまたさらに別の苗字だということを知って頭がぐるぐるした。家族はみんな同じ苗字だと思っていたから、どうしておばあちゃんの苗字が違うのか、どうしておばちゃんまで苗字が違うのか、理解不能に陥ったのだ。
別姓にしたら家族の一体感が損なわれる、というような反対意見を述べる人たちはこのあたりをどう説明するのだろうか?(それに、姓を同じにしたって離婚はあるよね。)
この謎をどう説明してもらったかは覚えていないが、結婚したら<女>は姓が<変わる>ものなのだ、と理解した。やがて高校生になると、ちょっといいなと思う男の子がいたりするとその子の苗字の下に自分の名前をつなげて、どんなもんかと音の響きを確かめたりして楽しんだ(けど、どれもしっくり来なかった)。
そのうちに、何がきっかけだったか、いつ頃のことだったか思い出せないけれど、結婚したら<女>が姓を<変えなければならない>わけではないことを知った。「夫婦は、……夫または妻の氏を称する」と定められているので、別に<男>が苗字を変えたっていいのだ、と。
しばらくの後、ずっと独身かと思っていた矢先、結婚することになった。その頃には、会社でそれなりに責任のある立場になっていたし、男尊女卑や家父長制的な社会の不条理を実体験をとおして知るようになっていたから、結婚しても姓は変えない!と決めていた。2000年の話なので、すでに民法改正案ができた後であり、会社では通称使用が認められていたけれど、「なんで女が変えなきゃなんないのさ!」と突っ張っていた。
男が姓を変えるなんて認めないだろうから事実婚でいいかと思っていたら、不利益を被らないためにも法的に夫婦になっておいたほうがいいと夫は言い、むしろ「姓を変えたい」と言った。なにやら、親が多額の借金を抱えて家財一式を差し押さえられたことがあるとかで、金融業界のブラックリストに名前が載っているはずだから、この姓を名乗っていたらローンを組んだりするときに支障が出るかも、と心配したらしい。割合と珍しい姓だったのだ。
でも、姓を変えるとどうなるか、夫は深く考えていなかったんだろうな。銀行口座やら免許証やらの名義変更に追われて大変だったみたい。20何年も経ったつい先日には、名義変更していなかった口座があって、本人証明するのに苦労していた。
「結婚しました」と言うと、たいていの人は「新しい苗字は?」と訊いてくる。「変わらないよ」と答えると驚いた顔をする人が多く、なかには「婿養子もらったんだ」とか、わけ分からないことを言う人もいる。いったい何時代の話をしているのか? だいたい、結婚したら夫婦で新しい戸籍を作るのであって、どちらかの家に入るわけではない(と私は理解している)。だから、有名人が結婚したときなどによく使われる「入籍」という表現はおかしいと言う専門家もいた(最近はもう言わないのかな?メディアでは「○○さんと△△が婚姻届を提出しました」などと伝えていたかも)。
ついでながら言っておくと、世の中には姓を変えることで「結婚しました」アピールをしたい女性もいるのは確か。「旧姓なになに」と書けるのを誇らしく思っている人もいるよう。「今の苗字は嫌いだから、早く結婚して苗字を変えたい」と言っていた子も知っている。
だから、変えたい人は変えられるし、変えたくない人は変えない選択ができる制度って、いいではないか。 考え方は人それぞれ。それぞれの選択ができる制度になるのに、何が問題なのだろう? 反対派の人たちは反対するための材料をこれでもかと集めてくるけれど、多くの国は別姓でも問題なくやっているのだから、いろいろと学ばせてもらえばいいのに。