見出し画像

「実践的イラストレーター養成講座」レポート①募集から選考まで

今年の1月より、「実践的イラストレーター養成講座」をスタートしておりました。

当講座は、イラストレーター1年目に身に付けておくと心強いスキルと経験を、ダイジェストでお伝えするものとして、昨年末にモニターになってくださる方を募集していたものです。イラストレーターとして駆け出しの方に、出来るだけ早くお仕事を受けられる力を身につけてもらうことを目的として始めました。
(詳しくは募集時の記事をご覧ください。)

結果、3名の枠を上回る8名のイラストレーターの方からご応募いただきました。そのなかから、お送りいただいたポートフォリオとプロフィール、簡単な応募理由を拝見した上で、予定通り3名の方を選考させていただき、現在それぞれの課題を進めております。

こちらの記事では、その講座の内容を全7回にわたってご報告させていただきます。なお、受講者の方の作品や、個人的なコメントも含まれるため一部を有料記事とさせていただく予定です。
無料記事部分だけでも、読んでいただいた方の制作に活かせる内容にしていきますので、お読みいただけると幸いです。
(当記事は最後まで無料でお読みいただけます。)

モニター応募者について

ご応募くださったみなさま、それぞれに魅力的な個性がありました。しかしながらポートフォリオ上での問題点が見え、正直なところかなり迷いました。

その中でも、「描きたいものやタッチの方向性が見えている」にも関わらず、「実際にお仕事を受けていくにはまだ準備が不十分そう」と感じた方をお選びさせていただきました。
ご自身でポートフォリオを整理して充実させていけば売り込みに不足がないだろう、と感じた方はお選びしませんでした。その旨は後述のポートフォリオレビューの形でご本人にお伝えしております。

さて、実際にモニターをお願いした3名の方とは、まず1時間程度のオンラインミーティングを行いました。

そこでは、以下のことをお話しさせていただいました。

・お送りいただいたポートフォリオのレビュー
・なりたいイラストレーター像やお仕事を獲得したい分野などの方向性確認
・おすすめしたいイラストレーターさんの紹介(おすすめしたイラストレーターさんについて個人名を出すことは控えます)
・課題1のご説明
・基本的なお仕事の流れのご説明

それでは、より具体的にそれぞれの方にお伝えしたことを、ポートフォリオの作品とともにご紹介させていただきます。

受講者さま①「伝える力のあるイラストレーターになりたい」Aさん

画像1

画像2

画像3

お一人目の方、仮にAさんとさせていただきます。Aさんは「メッセージの橋渡しができるイラストレーターを目指している。自分の描きたいものを描くというよりも、絵を見たひとに伝わる絵を描くことで、社会に貢献したい。」と、なりたいイラストレーター像を教えてくださいました。
描くことが好きなのはもちろんですが、イラストレーターの役割をきちんとわかっておられます。

ご本人の実体験として、物語や絵本がお好きで、教科書の中にある挿絵で勉強に親しむことができたそうです。また、雑貨にキャラクターイラストが施されているおかげで生まれたコミュニケーションにも助けられたそうです。イラストレーションの力をイチ消費者として感じておられるからこそ、伝えるということに気持ちがいくのだと思います。

作品を拝見して、絵柄やデフォルメの狙いはなんとなくわかるのですが、1枚絵としての強さがまだ足りないことや、単純に作品数が少なかったことをご指摘させていただきました。

この講座では、自身の作風を生かしながら汎用性の高いイラストを作り上げて、お仕事獲得につなげることを目的としています。なので、1枚目の絵本調の雰囲気は生かしつつ、仕上げとしては2枚目のイラレで描くようなタッチを想定しながら、課題1のお話をさせていただきました(課題1の詳細については次号に掲載します)。

受講者さま②「情報を的確に整理し伝えられるイラストレーターになりたい」Bさん

画像4

画像5

画像6

お二人目、Bさんです。「さまざまな媒体で自分のイラストが使われ、人々の生活に彩りを添えられるようなものを作りたい。また、情報をイラストでわかりやすく伝えられるようになりたい。」と、ご自身のなりたいイラストレーター像を教えてくださいました。Bさんは日頃から研究熱心で、街中や店内の広告でイラストがどのように使われているかを観察されたり、書籍やニュースから新しい情報を取り入れるようにしているそうです。

ポートフォリオについては、作品数はかなり多く、また好きなものや長く描き続けたいモチーフもはっきりとあるのだろうな、ということが見てとれました。インフォグラフィック的な表現や、動物を描かれるのがお好きでお得意なようです。

もちろんその得意分野は伸ばしていただきたいのですが、なりたいイラストレーター像を考慮しつつ、目標としているイラストレーターさんの作品と見比べてBさんに足りていないと感じたのは、単純に「人物を描かれていない」ことでした。

動植物専門のイラストレーターという道を結果歩むことになったとしても、人物を全く描いておられないということになれば機会損失になりかねません。ご本人も人物を多く描いておらず多少苦手意識はあったようでした。この講座においてはベーシックな課題として人物を描いていくことになり、良い機会かと思うということもお伝えさせていただきました。

受講者さま③「女性向けイラストを中心にお仕事を獲得していきたい」Cさん

画像7

画像8

画像9

三人目のCさんです。「広告漫画と女性向けのイラストを中心に、お仕事を継続的に頼まれるイラストレーターになりたい。また"あのイラストレーターの作品だ"とひと目でわかるような個性が出るように技術も磨きたい」とご自身のなりたいイラストレーター像を教えてくださりました。お仕事自体は紹介や公募で受けられた経験はあるものの、見よう見まねでやっておられたそうです。今後、商談会での売り込みを含めたお仕事獲得に向けてもかなり意欲的でいらっしゃいました。

ポートフォリオを拝見して、それなりに数を描かれている方のようにお見受けできたので、この方をモニターとして選ばせていただくか初めとても迷いました。ただ、広告漫画や女性向けのイラストを獲得しようとしたときに、狙いたい顧客に対する絵の整理や、タッチのブラッシュアップは必要と感じました。

具体的にご指摘した内容は、おしゃれ感・ヌケ感が足りない、ということです。おしゃれ感については、おすすめしたいイラストレーターさんの作品を見ながら、頭身の高さや色の選び方など、もうひと頑張り必要かということをお伝えしました。また、全てのイラストにおいて細部まで手が入っていて見応えはあるのですが、ひとつの画面の中で強弱があまりついていなくて、メインの見せたいところがわかりにくい、ということもお伝えしました。

なのでこの講座では、Cさんのすでにお持ちの柔らかな表情や優しい雰囲気は生かしながらも、人体のバランスを整えたり、散漫にならないような配色を考えつつ絵作りをしていく、という方針で進めていきましょうとお伝えしました。

養成講座も前進していきます

以上、今回モニターをご依頼した3名の方のご紹介でした。今はまだ全ての課題が終わっていないのですが、1つ2つと課題をこなしていくなかで、みなさんコツをしっかりつかんで伸びていらっしゃいます

今後それぞれの方が売り込みを行い、実際にひとつでもお仕事を獲得していただかなくては、この講座の効果があったとは言えませんが、着実に力をつけておられる姿を目の当たりにできることはとても喜ばしいです。

次の記事からは実際にわたしがお出しした課題の紹介と、それに対する作品の講評を行っていきます。お出ししている課題は、今後作品を増やしたいとお考えのイラストレーターさんにも役立てていただけると思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました!次回も楽しんでいただけるように鋭意執筆中です。

【最後に】お選びできなかった方へのポートフォリオレビュー

最後になりましたが、お選びできなかった5名の方には、それぞれメールにてポートフォリオレビューをさせていただきました。この記事を読んでいただいている方にも、ポートフォリオを見直すきっかけになれば良いと思い、ご紹介いたします。なお、以下はお送りした内容の抜粋なので、原文そのままではありません。

【Dさん】
この講座で行う課題に則したイラストや、番人受けしそうなタッチを、自身で作り出すことが既にできているためお選びしませんでした。

ですが、ポートフォリオでを売り込み用としてみると、無難で番人受けしそうなのが、反対に弱点として見えてしまいました。お上手なのですが、どこかで見たことがあるような印象があります。
「無難にいろんなタッチに対応できます」というのはすごく武器になるのですが、反対に作家性が弱く見えてしまいます。
これから新たに営業をかけられるのであれば、もう少しご自身のクセ(いい意味の)やこだわりを入れてみてはいかがでしょうか。人物の顔や、配色、服装や小物にこだわる、など。

また、それぞれのタッチが同じボリュームではなく、一番推したいタッチのボリュームを増やし、意図的に「自分はこういう絵を描く人なんです」と伝わるように作り替えてみてください。
【Eさん】
作品のテイストがある程度定まりつつあるので、ポートフォリオをご自身で充実させていけば活路があるのではと思い、今回はお選びしませんでした。

そのポートフォリオについてですが、冒頭にあるシュールなテイストが持ち味だということはすごくシンプルに伝わってきました。
ただ、1ページに対して1〜2点のイラストが大きく配置されていると、思った以上に充実感がなく、こういうテイストはとにかく数を見せた方が良いかと思います。例えば左ページは1ページに3〜4点、右ページは8〜10点ぐらいぎっしり見せる、くらいの充実度が欲しいです。

あるいは、大きく見せるのであれば1点のなかのイラストの書き込み具合をもっと充実させてください。イラスト自体の密と疎、レイアウトの密と疎で緩急をつけると見応えがUPするはずです。
【Fさん】
すごく率直な意見をお伝えするので気を悪くされたら申し訳ないのですが、絵柄がどうしても古く感じてしまいました。また、デッサン力に乏しいのか、オリジナルのデフォルメが板についていない印象です。
わたしとしましては、デッサン力を鍛えるようなことや、1からタッチを作り上げるような指導は難しいため、お選びすることができませんでした。

他のイラストレーターさんの研究などはされていますか?ご希望されているジャンルのイラストの、今の流行りがどういったものか、実際に書店やWEBで見ておられたりしますでしょうか?
作品集からはどうしてもそういった試行錯誤が見られず、ご自身が描きたい絵を描いているように見えました。他のお仕事の傍らでお忙しいとは存じますが、イラストの仕事を得たい業界とそこで使われているイラストレーターの研究をしてみてください。
【Gさん】
イラストのテイストがある程度ある程度固まっておられて、ポートフォリオを整理して充実させれば活路が見出せるのではと感じたのでお選びしませんでした。

そのポートフォリオについてですが、イラストのタッチが混在しているように感じました。まず、一番推したい・お仕事を獲得したいタッチを、最初からまとめて見せてほしいです。ボリュームとしては全体の50%はあって良いと思います。そうでないと見る側としてはどんなイラストが得意な方なのかが、直感的に入ってこないのです。
まずは順番を整えてあげて、あとはそれぞれにボリュームを追加すると充実してくると思います。

またボリュームを充実させるにあたっては、獲得されたいお仕事を想定して描かれると良いです。実際に使われているイラストを、自分のタッチで書き起こしてみるなど試してみてください。
【Hさん】
すでに描く力と絵の魅力があるので、当講座の基本的な課題をこなしていくというよりも、ご自身でポートフォリオを充実させていけば活路があるのでは、と感じたためお選びしませんでした。

ただ、現状のポートフォリオですと、描ける方というのは伝わってくるのですが「なにを一番得意とされているのか」「この方の魅力ってなんなんだろうか」ということが明確には伝わってきませんでした。
拝見していてまず最初に良いと思ったテイストがあったので、そのまま続くのかと思いきや、これきりだったのが残念でした。
他のイラストもそれなりに完成度があるのですが、タッチに一貫性が見出しにくく、魅力が伝わりにくい結果になっているのかと思います。

イラストレーターとして売り込みをするために、まずはポートフォリオを充実させましょう。
ポイントとしては、ポートフォリオ全体の半分を一番推したいテイストで一貫してみてください。できれば、線画が同じで、着色の仕方も同じものが数ページと、バリエーションで、線の色や途切れさせ方をかえてみたり、色が入っていない線画のみの仕上がりのものや、カラーのトーンが違っていたりなど。
そして残りのページで、少し違うテイストのイラストを載せて、こういうのもできる方なのだな、ということが伝わるとより良いです。

また、ご希望の方にはポートフォリオレビューを行っていきたいと考えております。詳細は後日Twitterかnoteにてお伝えさせていただきます。

いいなと思ったら応援しよう!

瀬戸枝里子
もしもサポートいただけたなら、そのお力をいただいてわたしからも次のどなたかへのサポートへつなげていきます。