動画サマリー: ARK Investment "episode 13 In the Know with Cathie Wood" 2021年2月26日
2021年2月26日にARK InvestmentのCathie Woodがepisode 13 In the Knowを投稿しました。直近では米国10年債利回りが急上昇し、株式市場も大荒れとなりました。episode13ではこの辺りに関する Cathie Woodの考え等について触れられています。
下記は重要と考える部分のみ抜粋しており、かつ主に自身のメモ用に記載している側面もあるため、精緻に内容を把握したい場合は動画視聴をおすすめします。
【ARK Investment Youtubeへのリンク】
https://youtu.be/dynmtlO2_3cMonetary Policyについて
FED is nothing but supportiveとのコメント。この週にFRBのパウエル議長が発信コメントは既存の金融政策を継続する内容になっており、引き続きサポートティブである旨の見解を示した。
下のグラフの通り、M2も引き続き上昇傾向。
パウエル議長が特に強調していたのは次の2点。
1. Full employment。しかし、まだそこには程遠い。
2.インフレ率2%超かつそれがyear over yearでconsistentに達成されることを目指しているが、現状ではそこに到達していない。
つまり、FED自身がMonetary Policyをタイトにする状況にはなっていないと考えていると捉えられる。
コモディティ、特に銅の価格が急上昇している。特に金との対比で上昇が顕著である。
銅はしばしばPhDとも例えられる(※)が金対比で急上昇しており、経済が徐々に復活してきていることを示唆している。
※Copper has acquired the nicknames “Dr Copper” and “the metal with a PhD in economics” due to its uncanny ability to diagnose the health of the broader economy. This is largely because copper has a host of industrial uses—including for electrical wiring, roofing, plumbing and industrial machinery—and because its supply is relatively stable, which means that prices are closely correlated with demand.
仮想通貨についても価格が急上昇しているが、少なくとも現時点においてはFEDはそれに対して特に反応していない。
Fiscal Policy
USD1.7-1.9trillionの極めて大きな追加経済支援策が考えられている。
※ARKが動画を投稿した翌日の27日に米議会下院は新型コロナウイルス危機に対処するための1兆9千億ドル(約200兆円)規模の経済対策法案を可決した。なお、上院での可決後、バイデン米大統領が署名して成立する。3月中旬までの成立を目指すとのこと。
Disposable Personal Income(DPI:税引き後の個人収入)は前月対比で11.4%増加している。これはあくまで前月対比であるため、単純に年間ベースに直す100%超の驚異的ペース。Spendingについては前月対比で2.4%。これも単純に年間ベースに直すと30%弱となる。
Income Growth>Consumption Growthのため、Saving Rateは20.5%まで上昇しており、”consumer has lot of fire power”であるとコメント。
Capital SpendingとHousingに特にhighest multipliers(大きな上昇余地)がある。
※上記はBureau of Economic Analysisのサイトから引用。
今週(2021年2月22日-)起きたこと
米国10年国債利回りが大幅上昇している(下のグラフ参照)。2021年当初の段階では債券市場において多くの人が利回りが1%を超えるのには時間がかかると考えられていたようであるが、現在(2月末)は1.5%程度まで急激に上昇している。
債券市場において記録的にショートの割合が増加している("There have been record shorts placed on the bond market")。トレーダーたちは債券市場において"shorting the bonds at record rates"の状態にある。従って、一旦ここで利回り上昇局面はpauseするのではないかと考えている。
いずれにしてもCovid-19の影響により一時は0.5%まで下がった利回りが1.6%へ急上昇したことは"monumental"な動きであったと言える。
2yr/5yrの利回りも上昇している。FEDはMonetary Policyを短期的には変更しないことを強調しているが、これはマーケットがFEDの施策に先行していくかもしれないことを示唆している。歴史的に見ても"market has led the FED"であった。これは経済が強くなってきており、マーケットは量的緩和はこれ以上必要ないと言っているとも捉えられる。
2016年当時のことを思い返すと、当時も利回りが上昇し、株式市場に懸念が広がった(2016年当時の米国10年債利回りのチャートは以下)。トランプが大統領就任後、税金を控除する政策が奏功したこともあり、当時はまずバリュー株が上昇した(今の状況と似ている)。年率ベースでFinancial Stocksは11%上昇、Energy Stocksは27%した。Technology Stocksは1%程度の上昇だったと記憶。Growth Strategy(グロース株へ投資する戦略を指していると思われる)は遅れを取ったが、当時はむしろそれは良いことだと考えていた。なぜならBull Marketの範囲が拡大していっていたため。
以下は2016年1月1日から2017年12月末までS&P500のチャート(2016年7月頃に大きな下落があり、その後も2016年中は大きくは上昇していないことがわかる)
Growth Strategyにとってネガティブなのは投資が抑制される状況であり、今はそういう状況ではない。
2016年の話についてはその後、2017年は株式市場にとって良い一年になった。
懸念について
【仮想通貨】
Janet Yellenは仮想通貨のこと投機的、environmentally unfriendly等と言っていたが、彼女は仮想通貨についてよくわかっていないのではないかと思うと発言(但し、直近発生した急激な値動きに対する個人投資家への注意喚起との観点であれば理解できるとの補足あり)。
電気使用量に関しては参考まで、下図はケンブリッジ大学オルタナティブ金融センターのサイトから引用。実際には再生可能エネルギーも多く使われている。
ARKとしても仮想通貨がより流通するようにサポートしていきたい。仮想通貨市場は拡大していくものと考えている。
【Interest RatesがPERに与える影響について】
interest ratesが下がるにつれ、PERは理論的には上がり続けるはずだが、常に20-25のレンジで頭打ちしている(下のグラフを見ると直近ではそのようには見えない)。
10年利回りは将来3%程度になると考えるが、一旦はそこ止まりになるのではないか。その要因の一つとして考えられるのはmajor deflationary forcesがある。
更にdeflationにはgood deflationとbad deflationがある。
Good deflation=技術向上に伴い、価格が下がる。
例えばEVの世界では製造力が2倍になる毎にコストが▲28%にあるとも言われている。ARKでは、EVの売上は次の5年でUSD2.2MからUSD40Mまで上昇すると考えている。
Bad deflation=traditional world orderに対するdisruption。
これらの会社は株主が短期目線で考えがちであることもあり、現在研究が進められている様々な(複数の)イノベーションのSカーブ(※)がやがてどのように収束し、大きな流れを生み出すのかまで考えられていないのではないか。例えばautonomous taxi networksについては、ロボット技術・AI・EVの3つのイノベーションが関与する。
Traditional companyについては、highly leveragedな状態にあり、"they are going to be forced to cut prices in order to service their debt"となる。例としてGEやIBMを挙げていた(この点は100%理解できなかったので英文のまま掲載)。
※Sカーブ
技術開発の初期のうちは比較的緩やかに進歩し、ある時期を境に急激に進歩し、やがて技術の限界に近づくと進歩の伸びが停滞気味になるという理論。
これらの2つのdeflation要素は短期目線では強い影響があり、市場におけるマネーサプライが増加したとしても、資金が回転していかない状況になるのではないかと考えている。