楽描き「空から見下ろせば」
空を見上げると
ああ、遠い、と思った
16歳、煮えたぎる夏のまんなかで
恋人との諍いも
傘を盗んだことも
親にはいえないような
女の子たちの語らいも
空から見下ろせば
ああ、遠い、と思うのだろうか
いま、東京の空を見上げると
ああ、狭い、と思う
ビルに押し潰された空も世の中も
友達の友達が実は同僚で
お隣さんと同じ病院に通う
ニュースはいつも同じ話題で
みんな何かに怒っていた
空から見下ろせば
ああ、狭い、と思うのだろうか
空から見下ろして
ああ、人間ってやつは、と
他人事みたいに思うのだろうか