第21回:お絵描きノート(8):スポイト~色の探偵~物語
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第21回:お絵描きノート(8):スポイト~色の探偵~物語
お題: スポイトツール
口上
色の探偵スポイト氏がいつもの様に、♪この色、なんの色、気になる色~と昔流行った日立の樹のCMのメロディーで替え歌を口ずさみながら呑気に登場します。
スポイト氏には中々仕事がやってきません。実際、描画ソフトは絵を描くためにあるので、色を調べる機会は少なく。絵の描画する職人のブラシたちは、いつもキャンバスを出たり入ったりしながら、休む暇もなく忙しく働いてますし、色を選ぶ仕事には、有能な秘書のパレット女史がいて、いつもテキパキとこなしています。だけどスポイト氏にはなかなか仕事が廻って来ません。仕事が来たとしても、この塗りは何かと聞かれてそれに答えるだけの簡単な仕事です。つまり、スポイト氏はとても暇なのです。
そんなスポイト氏にもとうとう出番がやってきました。それは一枚の絵から使われている色の名前を調査する仕事です。久しぶりの大仕事にスポイト氏は内心ワクワクしながらその絵を眺めます。
1.一枚の絵から
その絵にはタイトルはなく、着物を着た母と幼子が座って一緒に赤い輪で遊んでいる姿を描画したものです。したがって、その絵は何処から来たものか出所さえわからない訳です。スポイト氏は早速この謎の絵から色を抽出しては、パレット女史に色のを照合を依頼して行きます。
2.色の照合:
① スポイトツールを選択してキャンバス上の抽出ポイントを移動して必要な色のところで[左クリック]すると、その色は描画色として「色のセレクター」に表示されます。(詳細については#色に関するツール2を参照ください。)
② 描画色の「色の選択ポップアップ画面」を開くと、抽出した色はポップアップ画面では色の見本①となります。パレットの中に同じ色や近い色が存在すれば、自動的にその色は選択されて、色見本②に表示されます。
③ 色見本の①と②を見較べて違いが見るのが色の照合です。
・ 2つの色に違いがあれば、その色の境ははっきり分かります。
・ 2つの色が近似する色になればなるほど、その境界線がはっきりしなくなります。
・ そして、同じ色であれば二つの色は一体化してひとつの色のように見えます。
➃ 色見本①と②が同じ色の場合に、色のパレットの下の方に色の名前の表示を見ればその色の名前が分かります。
3.パレット女史からの報告書
さすが有能なパレット女史ですね。仕事が早いです。すくさま謎の絵に使われている色の照合結果をスポイト氏に持って来ました。それをまとめると以下の通りになります。
Default palleteでの色の照合結果:
色①:抽出した色、色②:パレットの色
1.黒①=黒②:Black0% [RGB 赤:0 緑:0 青:0 ] 色名:#000000
2.赤①=赤②:Red100% [RGB 赤:255 緑:0 青:0 ] 色名:#ff0000
3.白①=白②:White100% [RGB 赤:255 緑:255 青:255 ] 色名:#ffffff
4-1.桃色①>桃色②:Pink [RGB 赤:254 緑:202 青:218 ] 色名:#fecada
4-2.桃色①<桃色②:Rose Pink [RGB 赤:254 緑:101 青:203 ] 色名:#fe65cb
5.黄色①=黄色②:Straw [RGB 赤:241 緑:226 青:197 ] 色名:#f1e2c5
6.灰色①=灰色②:Mid Grey50% [RGB 赤:128 緑:128 青:128 ] 色名:#808080
7.青色①<青色②:Cerulean frost [RGB 赤:108 緑:173 青:198 ] 色名:#6cadc6
8.紫色①<紫色②:Dark grey blue [RGB 赤:47 緑:68 青:118 ] 色名:#2f4476
9.肌色①<肌色②:Pink [RGB 赤:254 緑:202 青:218 ] 色名:#fecada
示す色の表記方法。
*色名は16進法を示す「#」で始まる6桁の色コード。0~9の数字とa,b,c,d,e,fで構成される。RGBの数値を順に2桁ずつで表している。例:白は#ffffffですが、RGBでは[赤:255 緑:255 青:255]。
4.名前のわからない色たち
9つの抽出した色の内で白、黒、灰色、赤の4つはぴったりパレットの色と合致したので色の名前が分ったが、残りの5つの色ははっきりしなかった。
4.鍵は日本の伝統的な色
照合結果にはまだ名前が不明な色がいくつもあります。
色の探偵は色々思案した末に、この絵の特徴が鍵ではないかと、はっと気付きます。そうです、日本です。日本には独特の色のパレットが存在すると、随分前に聞いたことがありました。
5.カスタム・パレットの作成
パレット氏は書斎の奥の方に眠っていた日本の伝統的な色の本を取り出して、机の上に広げてみました。予想通りに捜している色に似た色をひとつ見つけました。この発見で確信を得た色の探偵は、その本に記述されている色の一覧リストを元にカスタム・パレットを作成します。
6.カスタム・パレットの作成
パレット氏は書斎の奥の方に眠っていた日本の伝統的な色の本を取り出して、机の上に広げてみました。予想通りに捜している色に似た色をひとつ見つけました。この発見で確信を得た色の探偵は、その本に記述されている色の一覧リストを元にカスタム・パレットを作成します。(詳細については#パレットを参照ください。)
(1)新しいパレットを名前を付けて追加する。
(2)新しいパレットをパレット画面で選択してから、色見本を追加する。
(3)色の名前と色のコード(#で始まる6桁の英数字)を入力して登録する。
7.その色の名は
その様にしてやっと出来たカスタム・パレットをパレット女史に手渡して、再度、色の照合を依頼します。
そして、その照合の結果は分からなかった色の名前以下の通りです。
・母親の着物のピンク色:桃花色(桃花色)#e198b4
・母と子の顔や手の色:桜色(さくらいろ)#fbdade
・子供の着物の地の青色:縹色(はなだいろ)#2980af
・子供の着物の柄の紫色:菖蒲色(しょうぶいろ)#694d9f
名探偵パレット氏はそれらの色たち全部の名前を探し当てられて、安楽椅子で満足気にパイプ煙草を薫らせるのでした。おしまい。