No.11【配布前に先読み】コーヒー豆専門店で、コーヒー豆を買う醍醐味を知る
こんにちは、陰山です。
3月に発行された世田谷十八番No.10「90歳の舞台裏」から、あっという間に6か月もの月日が流れてしまいました。
「世田谷十八番はキリ良く10号で終わってしまったのではないか…?」と思われた読者の方もいらっしゃるのではないでしょうか…。
大変お待たせいたしました。
世田谷十八番No.11の発行の準備が整いました…!
これまで発行してきた10号までを一区切りとして、11号からは新しい雰囲気の世田谷十八番をお届けする予定です。
私の手元にもまだ実物はありませんが、どんな仕上がりになるのか…
いち読者としてワクワクしています。
皆さまの元へ早くお届けできるよう進行しておりますので、配布までもう少々お待ちください!
この街で40年、コーヒー豆を焙煎している橋倉イサオさん
配布を心待ちにしてくださっている読者の方に、今回もまた先読みをお送りします。
11号のインタビューを引き受けてくださったのは、三軒茶屋と下北沢のちょうど真ん中、茶沢通り沿いにある、
「橋倉ビーンズ珈琲」店主の橋倉功さん。
今から約25年前、某有名コーヒーチェーン店でアルバイトをしていた私は知っています。
「コーヒーが好きな人は、十中八九変わり者だ」ということを。
どんなクセと対峙するのだろう…と、ほんの少しだけ体に緊張感が走ります。
お店に入る前から漂う、コーヒーの香ばしくも油分をまとった香り…。
ちょうど焙煎中で、カラカラカラカラ…とそれなりの音を響かせている中、インタビューが始まります。
簡単な経歴をお伺いしたあとに、編集長からの質問にお答えいただいて…という流れでインタビューを行っているのですが、
開始5分で私は悟ります。「橋倉さんはクセのない方だ」と。
静かに、ゆっくりと言葉を紡いでいく橋倉さんの質問の答えはどれも控えめで、聞かれた質問以上の話は積極的にしない。
もちろん、お店に出すコーヒー豆には丁寧に向き合っていて、
「常に安定した味を提供できるように」と、開業以来焙煎機を変えず、自分の目でコーヒー豆の具合を確かめてきた。
多分、自家焙煎のオーナーはみな、それぞれのこだわりを持って炒っているはず。
私の身勝手な方程式「コーヒーが好きな人は、十中八九変わり者」にはまだ当てはまらない気がする‥。
隣にひっそりと座る奥様もまた、橋倉さんと同じ雰囲気。
「うんうん」と橋倉さんの言葉にうなずき、時折これまた穏やかに、ゆっくりとした口調で付け加えてくれる。
とても暑い日だったけれど、あの空間、あの時間はゆったりとしていたなぁ~と、今でも鮮明に思い出せるのです。
一杯のコーヒーから世界の見え方が変わった私の話
私が出会ってきたクセのある焙煎士はみな、1を聞けば10以上が返ってくる、饒舌な方が多かった。
ここの産地の気候は◯◯で〜、とか、このコーヒー豆は深煎りでこんな特徴があって〜とか、
「ミルクを入れて飲みたいんですけど‥」って口が滑ろうもんなら、「そんなものは邪道だ!!」なんて言われたことすらある。
「濃いか薄いか、それだけ知りたかったんだけどな」と、大体いつも店主のお話にお腹いっぱいの気持ちになる。
コーヒーの味や、香りの表現の仕方は独特で、「ナッツのような香ばしさ」とか「シトラスを感じる香り」とか、
飲み物なのに別の食べ物で表現することが多い。
4年くらいコーヒーをかじってきた私でも、正直「?」と思う表現がいくつもあった。
飲んだところでわからない。私は味音痴なのかもしれない…。
そう思っていた21歳の私が、なんで今までもっとちゃんと向き合わなかったんだろう!と衝撃を受けたのが「エチオピア シダモ」というコーヒー豆。
このお豆の説明のマニュアルは「フローラルな香り」。
これまではお客様に、そのマニュアル通りの説明をしていたけれど、本当にフローラルを感じるのかしら?と、急に思い立って淹れてみた。
口に含んだ瞬間、今まで曇りがかっていた視界が一気に開けたような感覚が体中を走る…!
「お花の香りがする…!!」コーヒー屋さんで働き始めて4年が経つ頃、ようやく「?」だった説明の意味を体感できた瞬間でした。
なんの偶然か、インタビュー中に焙煎していたお豆はなんと「エチオピア モカシダモ」。
絶対買って帰るぞ…と、静かに強い想いを持っておりました。
お豆から感じる、橋倉さんの穏やかなお人柄
インタビュー中に奥様が振舞ってくださったコーヒーはどれも全部まろやかで、
橋倉さんのお人柄を口からも感じられる、不思議な体験でした。
(焙煎士のクセで同じお豆でも味が変わるそうだけど、私はまだその領域に達していません)
ここまでで、橋倉さんの穏やかで柔らかいお人柄はよくわかったけれど、ダークな私が頭の中で囁きます。
「橋倉さんのもっと強い想いが聞きたい」と。
「コーヒーが好きな人は、十中八九変わり者だ」という身勝手な方程式に当てはめたいわけではもちろんないし、コーヒー豆に真摯に向き合うお話も聞いて、こだわりも感じられた。
それでも無性に、橋倉さんの口から改めて聞きたかった。
「ここだけは誰にも譲れない、強いこだわりはありませんか?」。
この答えはぜひ誌面でご確認ください!
~ちょっと雑談〜
家に帰って早速「エチオピア モカシダモ」を淹れてみた。
お湯を注ぐとお豆がふかふかふか!と膨らんで、スーっと一直線にカップにコーヒーが落ちていった。
お豆が軽いのか?お湯を入れる速度が速かったのか?私のようなビギナーにはわからないけど、
ふかふか膨らんだお豆とスーッと落ちていくコーヒーを眺めていると、
さっき会ったばかりの橋倉さんの顔が浮かんできた。
焙煎士の顔が浮かぶだなんて贅沢!これがコーヒー豆専門店でコーヒー豆を買う醍醐味!!と思いながら口に含む。
はぁ。いい香り。美味しい。
せっかくなので、夫にも振舞った。
「美味しい。美味しいけど…薄くない?」
なんてことを言うんだこの人は、と思ったけど、よく思い出してみると、
カップ一杯に対してお豆の量が少なかった。それに加えてお湯の量が多かった。そりゃあ、スーっと一直線に落ちていくわ。
悲しい答え合わせ。
(次の日ちゃんと淹れたら最高の一杯になりました)
世田谷十八番No.11は近日発行予定です。
お楽しみに!
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