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【レシピ付き】キューバンサンドイッチ用のパン【映画シェフに憧れて】

それは、世田谷で店舗をしていたある日のことです。卸先のレストランのシェフから、『キューバンサンドイッチを作りたいんだけど、パンって作れる?』と相談されたのが、すべての始まりでした。

キューバンサンドイッチとは?

キューバサンドは、キューバ発祥のサンドイッチで、キューバ移民がフロリダに持ち込み、広まったと言われています。『キューバンブレッド』という特製のパンにさまざまな具材をたっぷり挟み、バターをたっぷり塗ってプレスして焼き上げるのが特徴です。焼く際に表面に塗ったバターが、外側をカリッと香ばしく仕上げ、サンドイッチ全体に独特の風味を加えます。

キューバンサンドイッチ用のパンの開発スタート

『キューバンサンドイッチって何?』と、何も知らないところから試作が始まりました。どうやら、『キューバンブレッド』というパンが使われるようです。最初に参考にしたのは、2014年公開の映画『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』。

いやー、本当にハマりました。Amazonで買って何度も見直しながら、こんなフードトラック、いいなあと憧れたものです。

さらにYouTubeで海外のキューバンサンドイッチ用のパン作りの映像を見ながらイメージを膨らませて、いざ試作開始。

サンドして焼いた最終製品を作れない状況だったので、聞いた食感のイメージを元にいくつかパターンを試作してみました。最終的に、イメージに近いものが出来上がったんです。

ただ、うちの窯が小さくて、1段に3本しか焼けず、量産はできなかったため、イベント限定商品になってしまいました。すごく気に入っていたんですけどね。

リクエストがあれば、オンラインショップで販売しようかな?


キューバンブレッドの作り方

卸のお問い合わせをよくいただくのですが、窯が小さくて大量に焼けないので、ここでオリジナルの配合と工程を共有します。これが、どこかのパン屋さんの参考になれば嬉しいです。

配合

【原材料】
ポーリッシュ種
強力粉 20%
サフ・インスタントイースト 0.2%
水 20%

本捏
強力粉 80%
サフ・インスタントイースト 1%
砂糖 8%
塩 2%
水 ※使う小麦粉によって本捏の量を調整してください45%
ハイポークラード(ラードがない場合は、ショートニングでもOK) 5%

製法には『ポーリッシュ種』を使用します。この方法は、ボリュームを出しながらクラストを薄く仕上げるのに適しており、軽い食感を引き出せます。小麦粉は食パンに使う強力粉を使用し、食材の味を引き立てるために砂糖を多めに加えています。砂糖が少ないと塩味が強くなり、全体的にしょっぱく感じることがあります。イーストは、普段お店で使っているもので問題ありませんが、ポーリッシュ種にはインスタントイーストの方が安定感があります。

水分は少なめで、生地がしっかり形を保つように少し硬めに捏ねます。油脂はラードを使うとさっくりした食感に、お店で使っているショートニングでもOKです。ショートニングを使うと、ボリュームが出てふんわりと仕上がります。

試作をする際は、問屋さんより少し高いですが、少量から購入できるネット販売が便利です。大量に使うようになったら、問屋さんで大容量を購入するという流れです。うちのお店でも、試作用にいきなり1kgや2kgは買えないので、ネットで100gや200gなど少量を購入して試作しています。イメージが固まったら、問屋さんにサンプルをお願いして、使う食材と原価計算を経て商品化します。

作りたいパンが決まっている場合は、すぐに問屋さんで購入するのも良いですが、ネットの食材一覧を眺めていると、思わぬものに目が留まり、新しいパンのアイデアが浮かんでくることもあります。たまには、そんな遠回りも大事です。


配合 (ちょっと贅沢バージョン)

【原材料】
ポーリッシュ種
強力粉(ゆめちからブレンド) 20%
サフ・インスタントイースト 0.2%
水 20%

本捏
強力粉(ゆめちからブレンド) 60%
米粉 20%
サフ・インスタントイースト 0.8%
砂糖(素焚糖)8%
塩(あら塩)2%
水 55%
ハイポークラード 5%

※ ベーカーズパーセントで記載しています。

少し贅沢に作るなら、北海道産小麦や国産食材を使ったバージョンがおすすめです。フランスパン用の小麦よりも、食パンに向く小麦の方がパサつきにくく、少しもっちりとした食感が出やすいです。また、お米の甘さを感じる米粉をブレンドすることで、優しい甘みをプラス。砂糖は、さとうきびから作られた素焚糖を使い、ラードを加えることでさっくりした食感に仕上がります。イメージは、少し甘めのバインミー用フランスパンです。

工程は基本的に一緒ですが、米粉の種類によって吸水量が大きく変わるため、本捏ねの段階で水分量を調整する必要があります。水の調整が少し難しいかもしれませんが、サンドイッチの種類に合わせていろいろと変えてみてくださいね。

工程

ポーリッシュ種

1. ボウルやタッパに小麦粉とイーストを入れ、ゴムベラで混ぜ合わせます。
2. 水を加え、粉っ気がなくなるまでゴムベラでしっかりと混ぜます。
3. 捏ね上げ温度は22℃前後にします。27℃で2時間発酵させた後、乾燥しないように密封して冷蔵庫で一晩熟成させます。

本捏

一晩冷蔵庫で熟成させたポーリッシュ種に、仕込み水の一部を加えます。ゴムベラで周りから削ぎ落とし、ミキサーボウルに移します。残りの仕込み水でポーリッシュ種をすべて洗い流し、再度ミキサーボウルに加えます。その後、油脂以外の材料をミキサーボウルに入れ、ミキシングを開始します。縦型ミキサーを使用する場合、低速で5分、中速で4分、高速で2分間混ぜます。

使用する小麦粉やミキサーによって時間を調整してください。手捏ねの場合は、生地を引っ張って断面が滑らかになるまで捏ねるのが目安です。

室温に戻しておいた油脂を加えます。さらに、低速で5分、中速で4分、高速で1分間混ぜます。ラードがしっかりと混ざり、生地が滑らかになればミキシングは終了です。

フロアタイム(乾燥しないようにして、室温発酵)

発酵時間は約50分です。一回り大きくなったらOKです。その後、350gに分割し、30分のベンチタイムを取ります。オーブンのサイズに合わせて、分割重量は調整してください。

成形

バゲットの要領で生地を60cm程度まで伸ばします。次に、キャンバス布で布取りをし、27℃、湿度75%で50分間発酵させます。ホイロの終了は、生地を軽く指で押して爪の跡が残ればOKです。

焼成

キャンバス布からスリップピールまたは板の上に生地を取り出し、縦に一本カミソリでクープを入れます。薄く刃を入れるイメージで行ってください。大きなクープができると、後で加工しづらくなるため、火通りをよくすることを意識しましょう。上火180℃、下火190℃で30分焼きます。オーブンに入れた後、スチームを1回追加します。※先出しの蒸気が良い窯の場合は、いつものフランスパンの焼き方に従ってください。サンドイッチとして再加工するため、焼き色は薄め、クラストも薄めに仕上げます。

保管

使いたいサイズにカットし、冷凍保管することをおすすめします。

まとめ

キューバンサンドイッチは、パン屋やカフェの差別化におすすめです。まだまだメジャーにはなっていないため、目新しさがあります。また、キッチンカーで提供しているお店もマルシェでたまに見かけます。パン作りもそれほど難しくないため、ホットサンドの新メニューとして候補に上げるのも良いかもしれません。映画のようなキッチンカーを運営できたら、楽しさ倍増ですね。

日本でもこんなキッチンカーで旅してみたいですね。地域ごとの食材を使ったキューバンサンドイッチを提供し、さまざまなイベントに参加することで、新しい味の発見と出会いを楽しむことができるでしょう。

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