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東山魁夷と夏の思い出

9月も下旬となり八百屋にはイチジクやアケビが並び始める季節になりました。
この時期に今更夏を語るのもどうかと思いますが、夏が好きな自分にとってなかなか秋の気持ちになりきれないのであります。
とはいえだらだらと夏気分でいるのもnoteの本題に入らないのも芳しくないので
2024年夏を自分勝手に東山魁夷と振り返ってゆきます。

処暑の山種美術館

2024/08/20(金)夏の最後の舞台に選んだのは渋谷にある「山種美術館」
山種美術館では特別展【東山魁夷と日本の夏】を開催しており、このタイトルがまだ夏だと安心させてくれました。

伺った当日は36℃超えの猛暑日でありました。
それでも開館直後から多くの方が来館されていました。
山種美術館は日本画をメインに展示しており、季節に合わせた様々な作品を観ることができます。
今回は山種美術館が所有している東山魁夷の作品がメインで展示がされていました。

東山魁夷について

まずは東山魁夷とは誰なのかについてここで簡単に説明させていただきます。
東山魁夷は昭和の日本画家であり主に風景画を描かれてました。
「東山ブルー」という言葉がある位に特異的な青を使った風景画を多く残し、「青の巨匠」とも呼ばれております。

緑響く

自分が東山魁夷を知ったのは学生の時。
国語か現代文の教科書の表紙を東山魁夷の代表作「緑響く」飾ってました。
当時のことはよく覚えておりませんが、国語は苦手な自分でもその教科書が好きだったことは覚えてます。
東山魁夷は1999年に亡くなり絶筆は「夕星」
こちらの作品も東山ブルーな作品です。


白い壁


入館してすぐ目に入った作品。
魁夷が幼い頃夜泣きをした際、母がおぶって連れて行ってくれた蔵だそうです。
白の青の寒色の作品でありながら話を聞くと不思議と温かく感じられます。

今年の夏、福岡の故郷に帰る機会がありました。
自分が生まれて長く過ごしたその空間は肌に馴染む感覚はなく、どちらかといえば別の人が過ごした空間のようにも感じました。
自分が変わろうとしなくても時間によって無理やり変わってしまうんだと改めて感じた瞬間でした。

東山魁夷を含め多くの作家や画家は故郷を表現することが多いと感じます。
もちろん懐かしさや思い出を記す意味で表現しているかもしれませんが、個人的には「成長する怖さ」「戻れない寂しさ」も感じられる作品が多いと思います。
昔はそこまで成長や時間が流れる怖さは感じなかったのに今ではたまらなく怖く思うことがあります。

緑潤う

今回こちらの「緑潤う」のみ撮影可でした。
「緑潤う」は京都修学院離宮が舞台となり、川端康成から『京都は今描いといていただかないとなくなります、京都のあるうちに描いておいてください』と薦められ描いた作品の1つです。
また、東山魁夷は心を鏡にして自然を見るように師のに習ったそうです。
この作品に流れる川に木々や空が反射して鏡になっているところが魁夷の心の鏡と自然の鏡が共鳴している様でした。

自分は中学の頃砂絵で川を描いたことがあります。
描いた絵のほとんどは忘れてしまうのですが、その絵は脳裏に焼きついてます。
川に映る木々の反射を影の様に暗く濃ゆく、空の反射を真っ白な砂で川に落としたこと。
その絵を捨てるときにカッターで砂の川を削いだこと。ただ可燃ごみと不燃ごみを分けるだけの作業ではありますが何故か覚えております。
夏に故郷帰ったとき川に寄りました。
昔はただの土手だったのですが今ではカフェができたり道路が整備されて人通りも多くなっていました。
変わるものは自分だけではないと焦燥感に駆られた思い出です。

満ち来る潮

山種美術館HPより

館内で一番人目を惹いていた作品。
長さ9メートル、これまで見てきた作品とは違った勢いのある満ち来る潮はとても力強く感じました。
この作品を近くで見るの潮一つ一つ細かく描かれていて金箔も散りばめられていてとても綺麗な作品でした。

自分は川や海が好きでこの作品はすごく惹かれるものがありました。
水の流れや動きには血液に似た生き物の生命力を感じ川や海に入るたびに力をもらえた気になります。
今年の夏は太宰治の作品に触れ、小動岬を見たいと思い腰越の海を選びました。
初めて見る太平洋は日本海とは違った海で何より水平線の広さが印象に残る腰越の海でした。
満ち来る潮はまた来年の夏もいろいろな海を見たいそう感じれる作品でした。

年暮る

山種美術館HPより

夏の情景から冬へ
「年暮る」は年越しを迎える京都の街並みを描いた作品だそうです。
現在の「京都ホテルオークラ」から東山三条方向を望んだときに見える景色の様です。

自分は毎年夏に人に会うため京都を訪ねます。
高校時代に繋がった方々で今でもこうやって会ってくださります。
時が経ちそれぞれ学校や職場、住まいが変わり会えなくなる方も年を重ねるごとに増えてきました。
年暮るは年末の風景と共に時が経つ寂しさも感じれる作品だと感じました。

さいごに

ここまでご拝読いただき誠にありがとうございます。
今年は初めて関東で夏を過ごし、地元では経験できない体験や感情を知ることができる貴重な時間だったと思います。
たくさんの方々に会えたこと、いろいろな場所に出かけられたこと、東山魁夷の作品に触れられたこと、そして自分のことを振り返れたこと。本当に嬉しく感じられる夏でした。
来年の夏もまた心に残る時間を過ごせる様変わっていけたらと思います。

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